【エンタメの旅】ドラマ『獣になれない私たち』の“ほのぼの”の中の狂気がマジ怖い

TABIZINE / 2018年10月12日 19時37分

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【エンタメの旅】ドラマ『獣になれない私たち』の“ほのぼの”の中の狂気がマジ怖い

エンタメ界隈の気になる情報を独自の視点で考察する【エンタメの旅】。第一回目は10月スタート!秋ドラマの中でも特に注目する日テレ「獣になれない私たち」の魅力に迫ります。

 
ラブコメを期待していたのに騙された! 不満の声続出
突然ですが、あなたはSですか、それともMですか?

新垣結衣と松田龍平がダブル主演を務める10月期の新ドラマ『獣になれない私たち』(日本テレビ系)。脚本はあの「逃げ恥」の野木亜紀子でガッキーとくれば、当然期待値も高く、待ち望んでいたドラマファンも多いのでは。

ところが、10日に放送された第一話の平均視聴率は11.5%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)と、意外に振るわずネットでも今のところ “酷評” が優勢だ。

原因は、「視聴者の油断にある」と推測する。このドラマ、ほのぼのラブコメディだと思い油断していると心が火傷します。まあ、ヒリヒリするヒリヒリ。

DVを受けた過去に、マルチ商法、パワハラやセクハラ、さらにストーカーじみたLINE爆撃と、およそラブコメには相応しくないドロドロとしたサスペンスがガッキーを追い詰めていく。

事実、放送スタートからSNSでは「辛い」、「不快」、そして「どこがラブコメやねん!」と疑問の声多数。そんなつぶやきを見て私は心の中でこうつぶやきました。

「世の中、意外に “S” な人って少ないのね」

根っからのドSである私は、正直、こういう、責めて責めて責められまくるガッキーこそ見たかった。というのが素直な感想である。あの耐え忍ぶ表情。声を震わせ、きょどる瞳。最高やんけー!
見方が分かれば面白い!「獣になれない私たち」は、実は全く新しいドラマだ
【エンタメの旅】ドラマ『獣になれない私たち』の“ほのぼの”の中の狂気がマジ怖い

とはいえ、ノンケな視聴者にとっても、このドラマの見方さえ分かれば、その魅力が充分伝わるハズ。

そもそもこのドラマ、皆さんが不満を抱いた、ラブコメと油断させておいての “ヒリヒリ” な展開こそ最大の魅力であります。ようはミスリードである。

ミスリードとは、視聴者をハラハラドキドキさせるための物語上の仕掛け。

たとえば、恋愛ドラマの王道ミスリードといえば、“あの人とくっつくと思わせといて実はこっちでした” パターン。

というように、本来ミスリードとは、“恋愛ドラマなら恋愛ドラマの中で” という同一カテゴリーの枠組でのみ仕掛けられる、視聴者をハラハラドキドキさせるための装置であるのだが、「獣になれない私たち」が仕掛けたミスリードはジャンルを超えてしまった。

つまり、ラブコメを装ってファンを集客しておいて、開店してみたら、社会問題を扱うシリアスなドラマでした、という前代未聞のミスリード商法。

「いやいや。聞いてた話と違うんだけど!?」

当然、ラブコメを期待していたファンは、裏切られたという思いがこみ上げ、結果ネット上で「詐欺だ!」と怒りの声が噴出。とまあ、こんな感じではないでしょうか。

「今までこんなドラマの見方は習ってないぞ!」

はい。その通りです。私も習ってません。かつてジャンルを超えたミスリードを仕掛けたドラマは存在しなかったのではないだろうか。

当然、見方の分からないストーリーに対し、視聴者は困惑し、中には不快感をあらわにする人も。ただ、私はむしろそこに新しさを感じたし、この禁じ手的なミスリードが、リアルを演出する上で非常に有効な装置として機能していたと思う。

そう、このドラマ。とってもリアルなんです。

え、何が?

その辺の考察に入る前に、まずは第一話のあらすじを紹介しておきます。
というわけで、第一回目の内容を軽くおさらい
ECサイト制作会社で営業アシスタントとして働く深海晶(新垣結衣)は、皆から愛される完璧な女性だった。しかし彼女を取り巻く環境は最悪だ。

絵にかいたようなパワハラっぷりで息を吐くように「はよせんかいコラー」と怒号を飛ばす、人使いのあらい社長の九十九(山内圭哉)をはじめ、超無責任な営業担当の松任谷(伊藤沙莉)、ゆとりすぎる新人の上野(犬飼貴丈)など、奔放なキャラ群が晶(新垣)一人に仕事を押し付ける。

そんな彼女の心の支えとなる、恋人の花井京谷(田中圭)。誠実で優しい丁度よいイケメンであるが、交際4年になっても結婚に向けた進展はない。

そんなある日、晶(新垣)は、花井(田中)の母親、千春(田中美佐子)と会うことに。と、会うや否や団地のおばちゃん口調で、そこは触れられたくなそうな晶(新垣)に対し、彼女の両親の素性をしつこく詮索。仕方なく晶は重い口を開いた。

父親がDVで幼い頃から暴力を受けていたこと。そんな父を交通事故で亡くすと、今度は母親がマルチ商法にハマり、自分の友人知人にまで声をかけ勧誘。困り果てた挙句、母親との縁を切ったことが明かされる。

自分のぶしつけな質問のせいで辛い過去を思い出させてしまったと、しきりに反省する千春(田中美佐子)。どうやら悪い人ではなさそうだ。

いやいや。と、思いきやLINEがハンパない。その日以来、ストーカー並みに千春(田中美佐子)から四六時中メッセージが送られてきて地獄のエンドレス状態。さすがの晶(新垣)も困惑する。

さらにネガティブな展開は続く。恋人の花井(田中)には、隠されていたある大きな秘密が。なんと彼、自分のマンションの一室に元カノの朱里(黒木華)を住まわせていたのだ。しかもネトゲ廃人っぽい。どうやら晶(新垣)もこの事実を知っているようで2人が結婚に踏み切れないのはこれが理由のようである。

そんな状況でも晶(新垣)は “良い人” を崩さない。この日も、ゆとりすぎる新人、上野(犬飼貴丈)の仕事上のミスをフォロー。どうにかトラブルを収めたと思ったら、今度は超無責任な営業、松任谷(伊藤沙莉)のミスをリカバリー。クライアント先に謝罪に出向き、スケベ顔の担当者を前に土下座までして許しを請う。

なんとかなったと一安心する晶(新垣)の元に、さっきのスケベ顔のクライアント担当者から電話が入り、セクハラまがいの薄気味悪い口調でしつこく食事に誘われる。

「晶ちゃんは、お肉とお魚だったらどっちが食べたい?」

・・・もうだめだ。

晶(新垣)の張りつめていた糸が遂に切れた。
ほのぼのとしたごく自然の日常の中に “狂気” は潜む
【エンタメの旅】ドラマ『獣になれない私たち』の“ほのぼの”の中の狂気がマジ怖い

さて。軽く一話のあらすじを紹介したところで話を戻します。さっきも述べたようにこのドラマ、妙にリアルである。一体何がそう感じさせるのだろうか。

その原因が、ミスリードにあると私は考える。

現段階では不評の多い、ほのぼのとしたラブコメと油断させておいての “ヒリヒリ” な展開だ。

日常を振り返ってほしい。我々が送る毎日は “シリアス” ではなく主に “ほのぼの” で構成される。社会派ドラマの中に流れる “シリアスな空気感” は役者の演技にカメラワーク、効果音やBGM等で構築された、つまり演出された世界で、実際の世界はあんな劇画タッチではない。どんな異常が迫っていたとしてもその直前までの我々の生活は、常にほのぼのとしている。

そして、「獣になれない私たち」というドラマもまた常にほのぼのとした空気が流れる。社内では、そこまで面白くもない、ちょうどいいギャグなども飛び交う。なのに、DVを受けた過去に、マルチ商法、パワハラやセクハラ、さらにストーカーじみたLINE爆弾に恋人が元カノと同居など、次から次へと狂気が入り混じる。

まさにこれこそが我々の現実の世界ではないだろうか。ほのぼのとした日常に容赦なく “異常” が飛び込んで来る感じ。

「獣になれない私たち」がリアルに感じるのは、この日常の図式がそのままドラマの構成に取り入れられているせいではないか。

そしてこのラブコメというカテゴリーを超えた “シリアス” なミスリードが衝撃過ぎて「期待していたのはこんなドラマじゃない」と思わぬ反発を食らった。

でも、その反発って、もしかしたらドラマのストーリー展開に対してではなく、このドラマからリアルを敏感に感じた人たちの、ほのぼのとした現実社会に潜む悲劇への嫌悪なのかも。と思ったり。

さて、そんな「獣になれない私たち」ですが、もちろん、晶(新垣)もやられっ放しではない。カタルシスもある。スカッとな見せ場も用意されています。

ある朝「もう、こんな会社やってられっか!」とばかりに、今までのコンサバファッションを脱ぎ捨てた晶(新垣)は、レザーのライダースジャケットにサングラスをかけ、夏休み明けの高校デビューのような分かりやすいワルを気取り出社。ひるむ社長に対しこう言い放つのだ。

「私の業務内容の改善要求です!?」

ちなみにこのドラマのもう一人の主役、根本恒星(松田龍平)と晶(新垣)との仲も気になる所。とにかく今後の展開が気になるが、先が全く読めない印象。

あと、タイトルが長いのでやはり「逃げ恥」のように略すべきなのか。

「獣になれない私たち」ということで、「ケモナイ」か。あるいは、「ケモワタ」。

検索してみると、どうも「ケモナレ」で統一されている。それも何か怪しいな。こういうのってジワジワと自然発生的に色んな意見が出て統一されていくもんじゃないの。もしかしたら制作サイドがこう呼んでくださいとリークでもしたのかもしれない。

ちなみに私は、長谷川大雲という名前だが、自分で「“大ちゃん” と呼んでください」とお願いしているようなもので恥ずかしい。そうでないことを祈ります。

いずれにせよ早くも来週が待ち遠しいドラマである。

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