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アサド政権崩壊でシリアの刑務所の実態が明らかに…解放された“収容者”には幼い子どもも【news23】

TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年12月11日 12時37分

TBS NEWS DIG

シリアの刑務所では、アサド政権の崩壊にともない解放された収容者たちに会うため、大勢の人たちが集まっていました。解放の瞬間とされる映像には女性や子どもの姿も。内部で何が起きていたのでしょうか。

「15年ぶりに故郷へ」続々帰国も政権崩壊でシリア首都は…

祖国を追われ、難民となった人たちの帰国が各国で始まっています。12月9日、レバノン側のシリアとの国境検問所には、アサド政権の崩壊を受け、シリアへ戻る人々であふれていました。

シリアへ戻る人
「私はシリアで生まれ育った。帰るのは15年ぶり。両親、兄弟、親戚があちらにいる。ずっと会っていない」

シリアの首都ダマスカスでは、いたるところで行列ができていました。パンやガスの配給を求め、待っているそうです。

欧米からの経済制裁を受けていたアサド政権下の人々。今回の政権崩壊後、街は機能を停止し、物資不足に陥っていました。

市民
「苦しい状況だが、皆で力を合わせて乗り切れる。みんな貧しく、空腹で苦しんでいる。パンを求めてここに来ている」

市民
「以前はみんなが抑えつけられて、何も手に入らなかった。これからよくなると願っている

「全員処刑されると思っていた」シリア刑務所の実態

ダマスカス北部のセイドナヤ刑務所の建物周辺には、収容者の家族らが集まっていました。アサド政権下、多くの人が拷問され殺害されたとされる場所です。反体制派勢力は、政権崩壊後、収容者を解放しました。

解放する瞬間の刑務所内とされる映像では、肩を寄せ合う複数の女性の姿が。別の部屋には、女性たちとともに幼い子どももいました。

刑務所で死亡した男性の妹は…

刑務所で兄が死亡
「兄のことで胸が張り裂けそう。13年間ずっと捜している。兄はどこにいるの。捕まったときは30歳だった」

また、別の部屋には、大量の資料が散乱していました。

収容所の親族
「刑務所の職員は全員ならず者だ。処刑されるべきだ。職員の名簿を見つけた。アサドより先に処刑されるだろう」

収容者の家族らで作る団体(ADMSP)の報告書によると、2011年から2018年かけて3万人以上が処刑されたか、拷問や飢餓などが原因で死亡したということです。

収容されていた人
「ここでの生活自体が拷問だ。看守はあらゆる手段で収容者を始末しようとする。解放される瞬間が来るとは思わなかった。全員処刑されると思っていた。順番に処刑されていった。毎日処刑される人が呼び出されていた。100人、200人、300人が呼び出された」

アサド政権の崩壊を受けてイスラエルは、シリアとの間にある係争地「ゴラン高原」の非武装緩衝地帯に軍を展開させました。

イスラエル ネタニヤフ首相
「我々はイスラエル軍にこれらの陣地を占領するよう命令した。敵対勢力がイスラエル国境近くに潜伏しないようにするためだ」

イスラエルは「国境の安全を確保するための一時的な措置」だと主張。アメリカ政府は容認する姿勢を示しています。

一方、エジプト政府は「権力の空白を利用して国際法に違反する既成事実を作ろうとしている」と非難。サウジアラビアやヨルダンもイスラエルの動きを批判しています。

こうした中、反体制派勢力を主導した「シリア解放機構」のジャウラニ指導者は9日、ジャラリ首相と会談。政権移譲に合意したということです。

シリアまだ“二分” 背後にトルコと米国

小川彩佳キャスター:
反体制派の政権移譲の話し合いが行われているということですが、今後どうなっていくのでしょうか?

23ジャーナリスト 須賀川拓 記者:
「政権移譲」という言葉が出てくると、内戦が終わったんじゃないか、もしくは収束していくんじゃないかという感覚に取られてしまうんですが、事態はそれほどシンプルではありません。

今回アサド政権が倒れる前、シリアは大まかに言うと反体制側・クルド勢力・アサド政権側に分かれていました。しかし、アサド政権が崩壊したことで、反体制側が全土の3分の2ほどを掌握し、今は2つの勢力になっているわけです。

クルド勢力の軍部の実行部隊に「シリア民主軍」というのがいますが、このシリア民主軍と反体制組織の一部の組織とが対立しているわけなんです。

その対立には、トルコが影響しています。クルドを敵視するトルコが、反体制派組織の一部の組織を支援してることによって、クルド勢力のシリア民主軍と対立するということです。

さらに、クルド勢力を支援しているのはアメリカなんです。シリア国内で、今はだいぶ勢力が埋まってますが、IS=イスラム国を掃討するために共闘してアメリカがクルド勢力を支援していたということなんです。

小川キャスター:
この2つの大きなグループの対立というのは今後も続いていくんでしょうか?

須賀川 記者:
今のところそれほど大きな衝突は起きていません。ですが、クルド勢力はアサド政権側がいた時には、高度な自治を保っていました。ある種、少し緊張状態にありながらも自分たちのテリトリーを守っていたんですが、アサド政権側がいなくなった今、もしかしたらこの小競り合いが拡大していってしまうかもしれない。そうすると一気に不安定になってしまう、そういったような状態なんだと思います。

株式会社 QuizKnock CEO 伊沢拓司 さん:
アサド政権のやっていたことというのは、セイドナヤの刑務所と言いつつも、実質は強制収容所のようなところになってます。そこを見る限りすごくひどいことをしていたわけです。アサド政権が倒れたからといって、平和万歳というわけにもいかないというのが情勢として難しいところですよね。

それぞれの正義をみんなが追い求めている中で、対立の火というのはずっと消えないわけですし、人道的に危機に瀕する状態にあるからこそ、今こそ国際社会の理解を得たいところなのに、イスラム過激派が反体制勢力だったりするので…橋渡しがうまくいかなそうというところなので難しいですが、何とか今こそ国際社会の協力が入ってほしいなという感覚はありますね。

小川キャスター:
非常に複雑な状況というのを見ますと、つい思考停止に陥ってしまいそうになるんですけれども、どう見ていますか。

田中ウルヴェ京 さん:
他国の問題をいかに共通課題は何かと考える能力を試されてるなと思います。

シリアに限らずどんな問題も歴史的な背景もあり、本当に複雑なわけです。そのような時に、他国のことを、解決する方向はどこなんだろうというように、解決は簡単じゃないからこそ、考える能力がなければならないということを感じます。

「核廃絶」とこれだけ日本がずっと言い続けてきている、そして被爆国だということを言い続けてきている。私は海外でいろんな方々とお話をするときに、この核についての理解が全然違うなと感じることがある。しかしそんなときに、今回のノーベル平和賞いただくということは、どこかの他国の人たちが「これって共通課題で、絶対にこの核廃絶を叫んでいる日本のことは取り上げなければいけない」というふうに誰かが共通課題だと思ってくださったということが始まりだと思うので、やはり1人1人が共通課題は何だろうっていうことを考え抜く能力は試されてるなと思います。

小川キャスター:
その考えの整理はどこかで私達に帰ってくるということにもなりますからね。

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<プロフィール>
須賀川 拓さん
23ジャーナリスト
前JNN中東支局長
ガザ・イスラエル・イラン・シリアなど中東地域を取材

伊沢拓司 さん
株式会社 QuizKnock CEO
東京大学経済学部卒 クイズプレーヤーとして活躍中

田中ウルヴェ京さん
スポーツ心理学者(博士)
五輪メダリスト 慶應義塾大学特任准教授
こころの学びコミュニティ「iMiA(イミア)」主宰

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