磯崎哲也氏らがベンチャー支援組織「Femto Startup」を立ち上げ【増田(@maskin)真樹】

TECH WAVE / 2012年1月20日 9時0分




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 ネットイヤーグループの立ち上げやカブドットコム証券株式会社社外取締役、ミクシィ社外監査役等を歴任し「起業のファイナンス」等の著書でも有名な磯崎哲也氏 (磯崎哲也事務所)は1月20日、株式会社インターリンクおよび同社代表取締役横山正氏ら三者が組合員となるベンチャー支援組織「有限責任事業組合フェムト・スタートアップ (Femto Startup LLP)」を設立したことを発表した。設立日は2012年1月1日付けとなっている。



 最近、2000年代に成功を納めた起業家がエンジェル投資家となり投資事業を行うケースが急増しているが、磯崎氏はどのようなコンセプトで「Femto Startup」を設立したのだろうか。TechWave独占インタビューをお伝えする。

“投資後のコンサルティング” が最大の強み




・TechWave増田:



「ミクシィ笠原社長やウノウを設立しジンガに売却した山田進太郎氏、paperboy & co. を立ち上げた家入一真氏など、一世を風靡した起業家が現在エンジェル投資家としてスタートアップへの投資を加速しています。磯崎さんはファンドを組まれたとのことで、彼らとはどのような違いがあるのでしょうか」。



・磯崎哲也氏:



「このLLPの出資総額は5000万円ほどと、ファンドとしては非常に小さいものです。しかし、米Y Combinatorや日本のインキュベーター各社さんと同様、一社あたり200万から300万円を投資するモデルですので、これでも十数社に投資することになります。



多くのインキュベーターのモデルは、Y Combinatorのやりかたと同様、半年に一度、十社前後のベンチャーを選抜して投資し、3か月後にデモDAYを開催するといったやり方が多いと思います。これに対して、このLLPでは、1社1社丁寧にハンズオン(支援)しようと考えています。基本的には全社私が直接、経営者といっしょに経営戦略や財務戦略などを考えて実行する手伝いをしていこうと考えていますので、これでも社数が多すぎないかとちょっと心配しています。



私は今まで、ベンチャーのファイナンス等のサポートをしてきました。一昨年の9月に「起業のファイナンス」という本も書いて、多くのベンチャーや投資家の方々に読んでいただいているんですが、それでも、なかなか本を読んだだけでファイナンスの交渉や実務をするというのは難しいんですね。日々、さまざまな起業家が、私のところに相談に来てくれるのですが、その中に経験も実績もある有望な起業家ではあるけれど「ファイナンスはよくわからない」という人も非常に多いんです。このため、まずは初期の資金をこのLLPから出資して、私が言わば、その会社の初期のCFO的な役割をして、ビジネスモデルや資本政策を創業者といっしょに考え、“イケてる”会社にして、次のベンチャーキャピタルなどの投資家からのまとまった金額の資金調達までつなげる第一弾ロケットのような役割を果たせたら、と考えています。



日本で成功しているベンチャーを見ると、技術やサービスといったビジネス面について外の人からアドバイスを受けて「なるほどー」と言ってるような起業家はあまりいないんじゃないかと思います。自分で徹底的に調べて考えて、「この領域については誰よりオレ(私)が詳しいぞ」という経営者が成功している気がします。ただし、最も大事な最初の最初のファイナンスで失敗して「あの時、ああしておけば・・・」という人は山ほどいます。



話しているうちに考えがまとまるということはありますので、創業者とビジネスモデル等について熱いディスカッションはすると思いますが、成功するベンチャーの「本質的な価値」は、外から教えてあげられるものではなく、既に創業者が持っていると思います。そういう人に投資をして、もっとも速く健やかに成長できるように、ファイナンス面からの支援をしていくしくみがあると、お役に立てることもあるんじゃないかと考えたわけです」。



・TechWave増田:



「実際、サービスや開発はすごくても、いざ起業してみるとファイナンスの知識がなく頓挫する起業家がとても多いように思います。特に2011年のスタートアップブームで起業した人などは、勉強する機会も得にくく苦労している」。



・磯崎哲也氏:



「その通りですね、ビジネスはわかるけどファイナンスは全然わからないという人がメチャクチャ多いし、そこで「ビジネスモデルをこう変えて、将来に膨らみをもたせてこういうVCさんと組めればいいな」とか「こういうコーポレートVCさんと組めば事業シナジーもあるから、投資も期待できるし事業の発展にもプラスになるよ」といったことを一緒に考える形を考えています」。



・TechWave増田:



「磯崎さんお一人ではなく三者で構成されていますが、どういった考えの座組みなのでしょうか」。



・磯崎哲也氏:



「ベンチャーキャピタルさんなどの一般のファンドでは、投資事業有限責任組合(LPS)等を使って、ファンドの運営には携わらない「お金を出すだけの投資家」(LP=Limited Partner)がいます。これは数十億円、数百億円といった大量の資金を集めるためには絶対に必要な枠組みですが、法律上は「金融業者」としての扱いになり、金融庁への登録などが必要になって、非常に厳しい規制を受けることになってしまいます。今回の「Femto Startup」はLLP (リミテッド・ライアビリティ・パートナーシップ :Limited Liability Partnership)という「器」を使っています。このLLPは「金融のファンド」というよりは、ジブリアニメでやっている製作委員会とか、建築会社さんが大規模な工事で使う「JV=ジョイントベンチャー」などと同様、「共同事業」としての位置付けなんです。このLLPを使ったやり方は、基本的に組合員全員一致で意思決定をしていかないといけないし、「オレは金だけ出すから、後は勝手にやって」というのは許されません。ですから、数多くの出資者がいたり、気が合わない組合員が集まる場合には利用できないんですが、今回のようなコンパクトな投資活動にはフィットするので、ベンチャー振興のために、他のみなさんにもぜひ活用を検討して頂きたいと思っているんです」。



・TechWave増田:



「LLPをお勧めする理由はどういった点にあるのでしょうか」。



・磯崎哲也氏:



「LLPは、法人格を持たないパートナーシップ的な「器」です。会社というのは「多細胞生物」のように、いろんな細胞や機関があつまって一つの人格の生物になっているようなものですが、組合は「群体」みたいなもので、それぞれの個性は残りつつ、共同で活動するために一つに集まっているものです。ただの「組合」(民法上の組合)というものもありますが、この組合員は無限責任ですので、出資額以上の損失を被った場合は、それが全部各組合員に降りかかってきます。LLPは有限責任なので出資額である5000万円以上の責任は負わない安心感があります。そもそも投資する株式が有限責任なので、借入れをしなければ、出資額以上に損をすることは、基本的には無いはずなんですけどね。



法人格は無いので、LLPには法人税もかかりません。といっても、もちろん全く税金を払わなくていいわけではありません。税務上、そこで発生した利益を「3:7で分ける」などと取り決めをしていけば、LLPで発生した所得を、その各構成員(組合員)の所得として振り分けて、各組合員がそれぞれいつも通りの税務申告をするわけです。LLPでは税務申告も不要ですし、いろいろ軽量なしくみになっていて使いやすいんです。



前述のとおりLLPは共同事業なので、何かの決定を下す時は、基本的にかならず組合員全員が関わらないといけません。組合員が10人とか20人となると、決議のたびに招集をかけたり、全員の合意を得るのが不可能に近くなってきますが、今回は、インターリンク社と社長の横山氏と私の3者だけですので、横山氏と私がOKしさえすれば投資もスピーディに決定できます。



「Femto Startup」では、サポートすると決めた企業に、日頃、相談に乗ったりビジネスプランを組んだりするコンサルティングは基本的に私が中心にやることになります。このため、残念ながら、そんなに多くの会社は見ることができません。ファンドのマネジメントフィーだけで食っていける規模ではないし、少なくとも次のベンチャーキャピタルからの投資を受けるまでのアドバイスではベンチャーからフィーをもらうのも難しいと思います。このため、他の磯崎哲也事務所の業務もやりながらとなるので、おそらく年間3社とか5社とかが限界ではないかと思います。



というわけで、「これはメガベンチャーになりそうだ!」という起業家と、いっしょに仕事ができたらいいなと考えています(笑)」。



・TechWave増田:



「どのような投資スタイルを想定していますでしょうか?」。



・磯崎哲也氏:



「ファンド金額が数十億円、数百億円といった大きなVCさんは、数百万円とか数千万円といった投資をすると、投資先のベンチャーが数百社、数千社にもなってしまうので、そうした「小さな」金額を投資をすることが逆に難しいんです。入れるなら3億とか5億をいれたい、とおっしゃるVCさんもいらっしゃいます。ですから「Femto Startup」の役割としては、そうした数千万円から数億円前後のVCの資金を注入すれば、さらにグググっと加速するような会社に形を整えて、そうしたVCさんや、コーポレートVCさん等に投資していただけるようにする役目を果たすというコンセプトで考えています。



日本でも最近は、学生の頃からビジネスをやっているという人も増えてきていますが、お金をたくさん持っているかというと必ずしもそうではない。だから200万から300万円という資金で、「資金を投下すればさらに加速しそうだ」という形になるところまで作ってみるという役割は必要だと思うんです。



ベンチャーへのアドバイスというのはビジネスとしては非常に難しいんです。色々な起業家が相談に見えますし、ベンチャーを応援するのは非常にワクワクして楽しいのでできるだけ協力したいのですが、ちゃんとしたフィーを支払えるベンチャーはほとんど無い。ベンチャーは投資を受けたり、M&A、上場等で後から調査や審査が行われることが前提ですので、最初から、いい弁護士さん司法書士さん税理士さんなどのアドバイスを受ける必要があります。シリコンバレーでは、起業のときから弁護士にそこそこのフィーを支払うのが当たり前になっていますが、日本ではまだ、そうした専門家に相談する必要性もなかなか理解してもらえないし、払えるお金も無い。私のフィーだけタダにすればいいわけではなくて、そうした専門家のネットワークで仕事をする必要があるので、他の弁護士さんや司法書士さんまで無償でやっていただくわけにもいかないんですよね。「フィーを株で払えませんか」といった質問もベンチャーから受けるのですが、企業価値が上がらないうちに、いろんな専門家にどんどん株を発行していったら、資本政策も崩れてしまいます。では、「Femto Startup」なら出資もしつつアドバイスもついてくるよ、ということにしたらどうかと。3か月から6ヶ月くらい創業者と一緒にがーっとやって、次の投資ラウンドに進む、ということをやったら、潜在力のある起業家のパワーを引き出せる可能性がグンと高まるんじゃないかと思うんです」。



・TechWave増田:



「エンジェル投資家、VCなど増え、可能性のあるスタートアップを発掘するのが難しい状態にあるのではないかと感じていますが、その辺はどうお考えですか」。



・磯崎哲也氏:



「やってみないことには自信は全くないんですが(笑)

実は、すでに一号案件は決まりつつあり、公表すべく準備を進めている状態にあります。メルマガやブログを書き、本や講演をしつつベンチャー支援をするという、TechWaveさんのメディア&事業連携モデルに似たモデルでがんばりたい考えです」。



・TechWave増田:



「なぜ、Femtoという名前にしたのですか?」。



・磯崎哲也氏:



「Femto Startup LLPの「フェムト」は、ご存知の通り国際単位で10のマイナス15乗のことで、“とても小さい”ということを意味します。ファンド総額も小さいし、投資対象とするスタートアップも小さい。しかし「フェムト」は、「フェムトレーザー」「フェムト秒化学」といった最先端の科学領域で使われている言葉でもありますので、小さいながらもそういった最先端を起業家とともに走りたいなという思いから付けています。



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