「リーン・スタートアップ」トヨタ方式から生まれた生き残るスタートアップのマネジメント手法、日経BPから16日発売 【増田(@maskin)真樹】

TECH WAVE / 2012年4月12日 10時0分




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 スタートアップには虚栄がつきものだ。優秀なチームと技術、有名人の支援、大きな目的に一眼となって邁進するチームの気概と不屈の精神こそ成功の道標べと多くのスタートアップが思っているが現実は違う。巨額な資金は思っている以上のスピードで底をつき、磐石の体制を整えていたチームは小さな雷雲の回避することもできず、急降下する機体と共に空中分解する。



 「リーン・スタートアップ」は、不確実な目標に対し、科学的評価で切り抜ける組織マネジメントの手法である。日経BPより4月16日に発刊される同名の書籍の中で、著者のエリック・リース氏は「日本のトヨタ生産方式から始まったリーン生産方式に出会った。この各種概念をうまく応用すれば、起業に伴うさまざまな問題を解き明かすことができる」と説明する。

リーン・スタートアップ=組織マネージメント




 トヨタ生産方式はご存知通り、一人の工員が複数の処理をこなすことで、必要なものを、必要な量だけ、必要な時に生産するなどの特徴を持つもの。これをITスタートアップに適用し発想を展開していったのがリーン・スタートアップ方式だ。



 この手法が素晴らしいとされるのは、現実のITスタートアップの現場で、“到底、画期的な新プロダクトを産み出そうとは思えないふるまい” があまりにも多過ぎるからだ。例えば、“たった3人なのにセクショナリズムを徹底しチーム内シナジー効果が全くないスタートアップ” や、“売上はいい、とにかくスピーディに大量の顧客を得るんだ” と 数年前のITバブルのような社是で爆走するスタートアップもある。



 これは当事者だけの問題でもない。大企業の中で、新規事業チームとして斬新なサービスを生み出しても、いざ本体と連携して拡大となった際、固定観念に支配された社員によって “つまらないものに修正” されて世の中に出たプロダクト、など数え切れないほどだ。



 本書は、現IT業界の置かれた状況を汲み取り、そもそもスタートアップの定義とは何かを追求しつつ、不確実な目標に対し、科学的アプローチで仮説を立て、実験活動で測定検証する地に足が付きつつも果敢に挑戦する「リーン・スタートアップ」のサイクルを具体的事例により明確化しようとしている。



 多数の事例とそれに紐づく「リーン・スタートアップ」方式の効果の組み合わせは若干読みにくいかもしれないが、“不確実性と対峙する組織マネジメント方法” を学んでいるんだということを忘れなければ大いなる気づきを得られるだろう。



 不確実な目標への挑戦とは、要するに固定観念との戦いである。「俺は○○社で営業成績がよかったんだ、これでいいんだ」「有名人が推奨するキーワードだから」「あの人に投資を受けたくらいの実力あるチームなので」「それはだめなんじゃない? イメージわるいし」「俺はCTOだか企画は任せた」「会社としては利益が出ない事業を快諾できない」「今までこの方法で結果が出てるんだから、それ以外は不要だ」などなど上げたらキリがない曖昧な言い訳と虚栄。リーン・スタートアップは、これら不確実で不明瞭な事象を対峙するところから始まる考え方の一種と言える。



 なぜフリーミアムでいいのか、「だめならやってみよう」は本当に正しいのか、なぜこの仮説は推奨されるのか、いつもやっているこのやり方は正しいのか、そんな些細で普段なら「これでいいんだ」と受け流される事柄を、できる限り自分たちの実験として検証する方法は、スモールスタートのチームのみならず、先が見えなくなりつつあるこの世界の全て企業の組織を変容させる上で参考になると思う。





【関連URL】

・Amazon.co.jp: リーン・スタートアップ ―ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす: エリック・リース, 伊藤 穣一(MITメディアラボ所長), 井口 耕二

http://www.amazon.co.jp/gp/product/4822248976






蛇足:僕はこう思ったッス

いくつものスタートアップの残骸を見てきた。それらのほとんどは大企業の中や大資本の下でうごめくものではなく、みずからの価値観を打ち壊し、果敢に挑戦するものだった。ただ、優れた人が集まると小さいながらも閣僚化し、カリスマがいるとワンマンになり、潤沢が資金が集まると怠惰になる。これは誰もが陥る罠だということを今改めて感じている。

そういうこともあり最近は「全てのプロダクトに値段を付け売上があがる具体的仕組みを付与して考えよう」と提唱している。特にネットサービスは客商売であり、対価を得られる前提で考えなければ、顧客満足についても考えにくいからだ。特にゼロから立ち上げられたスタートアップには忘れないで欲しいと思っている。なぜなら、全てがダメになりそうな時、支えになるのは自分達が構築した価値と仕組みだけだからだ。

本当の意味でのスタートアップ全てに成功して欲しいと思っている。そのためにこの書籍をお勧めしたい。


著者プロフィール:TechWave副編集長・イマジニア 増田(maskin)真樹

 8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代はソフト/ハード開発&マーケティング→週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーでベンチャー起業に参画。帰国後、ネットエイジ等で複数のスタートアップに関与。関心空間、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。 DJ、emacs使い。大手携帯キャリア公式ニュースサイト編集デスク。TechWaveでは創出支援に注力し目利きとして定評が生まれつつある。夢は映画作り (宇都宮市在住)
メール maskin(at)metamix.com | 書籍情報・Twitter @maskin・詳しいプロフィールはこちら





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