ゲームは悪くない。壊れているのは社会のほう【書評】幸せな未来は「ゲーム」が創る【湯川】

TECH WAVE / 2012年5月24日 11時0分


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 人間はもともと狩猟で食料を得ていた。いや人間だけではなくあらゆる動物が生きるための必死の攻防を繰り返してきた。それが人間だけは農業技術を身につけ飢餓の心配がなくなった。さらに工業社会になり豊かになったのはいいことなのだが、その一方で多くの人々の生活は非常に単調なものになった。



 生きるか死ぬかというドキドキ感、獲物を得るために工夫する創造の楽しさ、仲間と協力することで得られる一体感、獲物獲得に成功したときの高揚感・・・。狩猟のときに味わっていたこうした感覚を求める気持ちは、今日もわれわれの中に残っている。ところがこうした感覚を現代の日々の生活の中ではなかなか味わえない。



 だから人はゲームに没頭する。ゲームに没頭することは人間として自然なことなのである。さらに言ってしまえば、こうした人間の根源的欲求を満たせない今日の社会のほうが間違っているのだ・・・。英文タイトル「Realty is Broken」を直訳すれば「現実社会は壊れている」となる書籍「幸せな未来は「ゲーム」が創る」の著者、ゲームデザイナーで未来学者Jane McGonigal氏の主張は、簡単に言えばこういうことだ。



 ゲーム好きの著者からみれば、現実社会は設計に失敗したゲーム、壊れたゲームのようなもの。いつまでたっても同じステージのくり返しだし、ポイントが加算されているのかどうかも分からない。簡単過ぎて達成感がなかったり、難しすぎて挑戦する気にもなれない。こうした「壊れた社会」を、再びワクワクドキドキするものにするには、ゲームの要素を取り入れるべきだし、ゲームをおもしろくする要素を理解しているゲーム愛好者こそがこれからの社会を築く力を持っている、というのが同氏の主張だ。



 今流行りのゲーミフィケーションというバズワードは、バッジやポイントでユーザーの行動を誘導するという、どちらかというと小手先の施策のことを指すことが多いが、この本は主に心理学の最先端の研究結果をベースに議論されているのがおもしろい。



 社会の価値観の大きな変革期を迎えている日本。やりがいのある仕事をしたい、たのしい仕事をしたい、という人が増えている。自分の気持ちを大事にしたいという人が増える中で、「嫌な仕事でも黙って我慢して続けろ」と説教するだけでは、人は動かなくなってきている。こうした時代を迎えつつある今だからこそ、どのようなゲームの要素が人間の心理に適合しているのか、ゲームの要素を取り込むことでどのように社会を変化させることができるのか。それを知りたいと思い、この本を手に取った。

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