苦節9年。未完大器・岩佐が悲願の世界王者「山中氏に敗れたから今がある」

THE PAGE / 2017年9月14日 5時59分

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岩佐(右)の左カウンターが王者・小国(左)の作戦を潰した

ボクシングのダブル世界タイトル戦が13日、大阪のエディオンアリーナ大阪で行われ、IBF世界スーパーバンタム級戦は、挑戦者の同級3位、岩佐亮佑(27、セレススポーツ)が、王者の小国以載(29、角海老宝石)から3度のダウンを奪い、6回2分16秒、TKOで破り新王者となった。習志野高時代に高校3冠。将来の世界王者間違いなしと言われていた未完の天才サウスポーは、前WBC世界王者、山中慎介(帝拳)に敗れ敵地での世界戦に失敗するなど、数多くの挫折と試練を乗り越え苦節9年にして悲願のベルトを腰に巻いた。初防衛に失敗した小国は、試合後、引退を表明した。
 

 ゴングと同時に奇襲をかけたのはチャンピオンの方だった。
 小国は一気に前に出て、ワンツーを放つ。その右が岩佐の顔面を捉えた。さらにプレッシャーは続く。しかしそれは、岩佐陣営にとって願ってもない展開だった。

「おい、出てきてくれたよ」。コーナーでセレス小林会長がにやついて加藤トレーナーにつぶやく。
「会長! しかも、小国の足が動いてないですよ」

 ラウンドの終盤、“宝刀”左カウンターが炸裂した。小国はダウン……。

 第2ラウンドに入っても小国の作戦に変化はなかった。
「1ラウンドは岩佐の距離、2ラウンドはちょっと近くなったんだけど」(セレス小林)
 ボディを絡め変化をつけながら突進されると困ったかもしれないが、正攻法で攻めてくる小国が、サウスポーの岩佐の正面に立つと、もう逃げられない。絶好の標的である。
 また左のカウンター。小国は尻餅をついて2度目のダウン。さらに、この回の終盤にも同じパターンで右を放ってくる小国にドンピシャの左。3度目のダウンを奪う。
「練習してきたパンチだけど、あれだけ綺麗に当たるとは思っていなかった。2ラウンドはたまたま。(出て)来てくれから、こちらの作戦にはまった」

 しかし4ラウンド、5ラウンドと、もう後のない小国が、「何かが起きないか」と捨て身の反撃を仕掛けてきた。岩佐は、いい左を一発、アゴにもらっている。
「予想以上に(小国は)強気だった」
 岩佐の闘争本心に火がついてしまうところをセレス会長がおさえた。

5ラウンド終了後のインターバル。
「相手は、あれしかないんだから、つきあうな、打ち合うな。やってきたボクシングに立ち返れ」
 気がはやって“行き過ぎる”のが岩佐の欠点でもある。
「その声で冷静になった。打ち合うと僕はパンチをもらう悪い癖があるので」

 それでも無敗のグスマンに打ち勝った小国のパンチを受け止め続けるだけの余裕はない。
「心も折れかけた。大丈夫、大丈夫!と自分に言い聞かせていた。ディフェンスだけを意識してね。パンチは見えていた。だからあえて笑ってみせたりした」
 セコンドからしきりに声が飛ぶ。
「足を動かせ」「頭をふれ」「右を打て」「スピード」

 そういう基本を重ねるのが岩佐のボクシングである。
 6ラウンド、距離をはかって岩佐が左を打つと、小国の唇が裂かれた。大流血。みかねたレフェリーが試合を中断してドクターチェックを要求した。

「チェックされた段階で止められると思った。たらこみたいな唇。ありえないくらい血がでたので」と小国は敗戦を覚悟、岩佐も「出血がすごかったので止めるかも」と思ったという。
 2人の予感どおりに「トータルでダメージ。前の回からも兆候があった」と、ドクターストップがかかり、レフェリーはTKOを宣言した。

「長かった。この世界は、世界王者にはなれる人となれない人。どっちがひとつ。なれる人だと確認できてホッとした」

 岩佐は、控え室の中で興奮気味にそう語った。

 一方、体育館の通路の椅子に腰をかけた小国は、「完敗。岩佐は上手いなあ。うまくタイミングをずらして当ててくる。やっぱりサウスポーが苦手で反応できなかった。百発百中もらった。アホみたいに打ちにいって、アホみたいに打たれた」と、タオルであふれる涙を拭った。

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