生まれつき指紋がない人間!? 世界でたった4家系のサンプルからわかった、人体の謎とは?

tocana / 2014年1月19日 9時0分

 あなたは指紋について、どのような認識を持っているだろうか。それが、「すべての人にとって、生涯固有の形状が与えられている、指先の皮膚の模様」という類いのものであったとしたら、どうやらその認識は間違っているようだ。「Smithsonian.com」が今月14日に報じた内容によれば、世界では、極めて珍しい症状ではあるものの、生まれつき指紋を持たない人々の存在が確認されているというのだ。

 2007年、皮膚病学者のピーター・イティン氏は、あるスイス人女性から相談を受けた。話によると、彼女は米国への入国に際して、特別な悩みに直面しているという。なぜならば、彼女の指には生まれつき指紋がなく、完全に平らだったからだ。米国への入国審査時、外国人には指紋の採取が課されることとなっているが、自分に対して当局はどのように対応するか不安に感じているというのだ。

 生まれながらにして指紋を持たない症状には、「Adermatoglyphia(先天性指紋欠如疾患)」という名が付けられているが、前述のスイス人女性の例などから、最近では別名「入国遅延病」とも呼ばれている。この症状は、遺伝性の疾患であると考えられており、実際にスイス人女性の親戚には、指紋を持たない人がほかにも存在していた。指紋が欠如する遺伝性疾患はいくつか確認されているが(「ネーゲリ症候群」や「網状色素性皮膚症」)、それらが「皮膚の色素沈着」「もろい歯」「細い毛髪」などの症状と併発するのとは対照的に、「先天性指紋欠如疾患」を持つ人は、至って健康体であるという。なお、この疾患を持つ家系は、今回のスイス人女性の家系を含めて、現在世界でも4家系しか確認されていないようだ。そしてイティン氏は、イスラエル人皮膚病学者であるイーライ・シュプレッヒャー氏との共同研究に取り組み、ついにこの極めて珍しい疾患の原因が、ある遺伝子の変異によるものであることを突き止めたのだった。

 スイス人女性の親戚で、「先天性指紋欠如疾患」を持つ9人の遺伝子を調査した結果、それぞれSMARCAD1というタンパク質に関する遺伝情報に変異が認められ、その生成が妨げられていることが判明したのだ。このSMARCAD1というタンパク質が、どのような役割を担うものであるか詳しくは明らかになっていない。しかし研究グループは、胎児期に肌細胞が折り重なるように組成することを助ける役割があるのではないかと考えているようだ。つまり、その細胞の折り重なりこそが指紋を発現させているために、SMARCAD1が生成されない人には、指紋が発現しない、というわけだ。

 世界でも数少ない、「先天性指紋欠如疾患」研究の第一人者であるスプレッヒャー氏は、「これは極めて珍しい症例なのです。入国審査官がどうしようかと困ってしまうのも無理はないでしょう」「映画などでは、よく犯罪者が自分の指紋を取り去ろうとするシーンを見ることがありますね。でも、このような病気の話は誰も聞いたことがないでしょう」と語った上で、「しかしですよ、もしもこのような症例がなかったら、私たちは指紋の形成をつかさどるメカニズムを知り得なかったのです」「本当に患者数の少ない、珍しい疾患の研究を通して、私たちはすべての人に共通する人体の謎の解明に大きく近づくことがあるのです」と研究の意義を強調している。「先天性指紋欠如疾患」を持つ人は、われわれ人類にとって、指紋の謎を解き明かすために必要なキーパーソンなのだ。
(グリーン・M)

tocana

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