夢をコントロールする法 ー 19世紀フランス貴族、エルヴェ・ド・サン・ドニ侯爵の残した奇書!

tocana / 2014年5月10日 19時0分

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■フロイト、ブルトン、そして澁澤龍彦も注目した夢研究

 澁澤龍彦『悪魔のいる文学史―神秘家と狂詩人』(中央公論新社)のなかに、こんな一節をもって紹介される人物がいる。

「アンドレ・ブルトンの『通底器』に目を通された方は、この書物の開巻劈頭名前の出てくる、唐代中国の詩の翻訳者であり、かつ『夢および夢を支配する法』という匿名作品の著者であるところの、エルヴェ・ド・サン・ドニ侯爵という人物を思い出されるであろう。ブルトンも書いている通り、このエルヴェ・ド・サン・ドニの著書は、長いこと稀覯本になっていたため、ともに夢の研究家であったフロイトもハヴェロック・エリスも、ついにこれを入手することができなかったといわれているほどであるが、初版刊行の一八六七年からおよそ百年後の一九六四年に、新たに美本が刊行されて、ようやく私たちにも読めるようになった」

 エルヴェ・ド・サン・ドニ侯爵とはいかなる人物だったのか? そして、幻の著書の内容とは? 今回はそんな一人の夢の研究家(と、その成果)にスポットを当ててみたい。


■エルヴェ・ド・サン・ドニ侯爵

 エルヴェ・ド・サン・ドニ侯爵は1822年、パリのシェーズ街五番地に生まれた。代々続く貴族の家柄で何不自由なく育てられたが、幼少の頃は邸宅に1人でひきこもりがちな孤独な少年だったらしい。そして、内向的なエルヴェ少年はしだいに夢に興味を抱き始める。

「ある日、(私は十四歳だったが)、生き生きとした印象の特別な夢を素早く記録したらどうかという考えが浮かんだ。面白そうだったので、すぐに専用のノートをつくり、そこに夢の光景や形象を、それがどんな状況でもたらされたのかという説明と一緒に描いた」
(『夢の操縦法』国書刊行会より引用)


■天下の奇書『夢の操縦法』

 14歳の頃より、夢の記録を取り、独自の研究をはじめたエルヴェ侯爵。ついに1867年には夢研究の成果を出版することになる。しかし、著者名は「匿名」。当時はまだ社会的認知度の低かった夢研究には、ある種のいかがわしさがつきまとっていたからである。すでに中国学の権威として世間に認知されていたエルヴェ侯爵の匿名での出版は、苦肉の策だったということだ。

 ちなみに原題は"Les rêves et les moyens de les diriger"で、澁澤龍彦『悪魔のいる文学史』のなかでは『夢および夢を支配する法』とのタイトルで紹介されているが、現在日本では『夢の操縦法』(国書刊行会)とのタイトルで翻訳されている。また原書は、Amazon.frでkindle版(http://www.amazon.fr/dp/B00JBNZPKW)も入手することができる。

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