無邪気さの中に潜む狂気 ― マリエル・クレイトンの“邪悪なバービーワールド“

tocana / 2014年6月15日 17時0分

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 1959年の発売以来、本国アメリカはもとより世界中で愛されているバービー人形。女性を取り巻く時代の変遷ともない、形態や表情などを変化させてきたバービー人形だが、今でも変わらないのは、その時代時代の "愛される女子の有り様" を具現していることだ。

 そんなバービー人形をモチーフにかなりイカレたジオラマを作成、写真作品として発表しているアーティスト。それが、マリエル・クレイトンだ。

 マリエル・クレイトンは南アフリカ出身の女性写真家だ。「破壊的なユーモアのセンスを持った人形写真家」と自称するように、彼女はバービー人形と日本製のミニチュアを主な素材として、本来バービーが社会から期待されているイメージ、つまり "愛される女子"とは真逆のバービー像を作り上げている。


■男を犯し、殺し、微笑む "等身大の"バービー

 マリエル・クレイトンがバービーをモチーフに最初に作った作品は、別の男(女ではない)を選んだパートナーのケンに捨てられたあと、バスタブで手首を切ったバービーの姿だった。散らかり果てた部屋、バスタブでの自殺、首を切断された恋人の姿、銃で撃たれた死体、アブノーマルな性行為などなど。彼女が創り出すバービーワールドはどれも過激で残酷。セックス、バイオレンス、マッドネスのオンパレードだ。

 それもそのはず。彼女が作品を作り始めた動機は、彼女が徹底して忌み嫌っているバービーの "うさん臭さ" にあるからだ。

 彼女はバービーを、「アメリカ社会が求める典型的かつ理想的な女の子」と捉える。そしてその有り様を痛烈に批判する。

「バービーのようになるためには超大量の過酸化物(脱色剤)や27種類におよぶ形成外科手術、そして知性の完璧な欠落が必要。そんなおもちゃが『こんな女の子になりなさい』とでも言わんばかりに親から娘に与えられる。それが私を強烈にいらつかせるの」

「GIジョーやアクションマンのような男の子のおもちゃには、少なくともパーソナルで深みのある人格、真に想像力に富んだ物語としての価値がある。ところが、バービーにはおしゃれと『女の子らしくしなさい』というメッセージしかない。でも、"女の子らしく"ってどういうこと? 首が回らないくらい借金をして豊胸手術を行ったような、中身のない体になりなさいってことかしら?」

 女の子に個性やオリジナリティなんていらない。ただただ社会の、つまり、男たち好みの容姿と立ち振る舞いを演じることだけを求める社会からの無言の要求に対して、マリエル・クレイトンはあっけらかんとした邪気とクリエイティヴィティで中指を立てる。女の子が内面に持つ本当の姿を、お仕着せのバービー的世界観を叩き壊すことで露わにするのだ。

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