伝説の井筒監督作品 ― 猛抗議で“必然的に“封印された「猫肉ハンバーガー」映画!

tocana / 2014年6月30日 18時0分

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――絶滅映像作品の収集に命を懸ける男・天野ミチヒロが、ツッコミどころ満載の封印映画をメッタ斬り!

【映画 『ガキ帝国 悪たれ戦争』】

 1981年、村川透監督の『獣たちの熱い眠り』の公開を控えていた東映は、観客動員を不安視したため、急遽併映作品を付けることにした。白羽の矢が立ったのは、今やナインティナイン初主演映画『岸和田少年愚連隊 BOYS BE AMBITIOUS』(96年)や、沢尻エリカ主演『パッチギ』(05年)などでお馴染みの井筒和幸監督。何と言っても彼の知名度を上げたのは、自腹を切って公開中の映画を鑑賞した監督が辛口の感想をぶちまける、テレ朝の深夜番組『虎ノ門』(01~08年)内でのコーナー「こちトラ自腹じゃ!」だろう。

 さて、東映が依頼した1981年当時の井筒といえば、同年7月に公開された『ガキ帝国』(ATG)で、60年代の大阪の不良達(豪田遊、島田紳助、松本竜介ほか)を生き生きと描き、日本映画監督協会新人奨励賞を受賞する売り出し中の監督だった。そんな彼が応えた作品は、出世作の続編となる『ガキ帝国 悪たれ戦争』。しかしこの作品の上映は期間途中で打ち切られ、その後ソフト化も一切されず現在に至っているのだ。

 内容はと言うと、前作をより過激にしたものとなっている。イタズラとケンカに明け暮れる日々を送る大阪のヤンチャ高校生・良一(豪田遊)と辰則(北野誠)。2人は辰則の兄(名脇役の鶴田忍)が店長を務める某Mバーガーでバイトしていた。ある日、辰則は兄嫁を犯そうとして少年院に送られ、院内で首を吊って自殺。その後の良一は、女絡みで幼馴染みを殺したヤクザを銃殺し、エセ右翼と揉め事を起こした上、モーテル内で暴走族と血みどろの戦いを繰り広げる......といった具合だ。前作に引き続き、主演を趙方豪(ちょうばんほう)改め豪田遊が見事に演じ切り、島田紳助・松本竜介もちょこっとだけ顔を出しているという嬉しい配慮も。

 ATG(日本アート・シアター・ギルド)による低予算の前作と違って、大手・東映が今作に出した予算は、前作の倍以上となる3,000万円。だが、現場は大変だったようだ。9月12日の公開日に対して、制作が依頼されたのが6月4日。7月にはクランクインしなければ間に合わない。助監督兼脚本家の西岡琢也はわずか1週間で台本を完成させ、不眠不休の過労からか、撮影中に走行する自動車から転落して大怪我を負う。さらに西岡には、製作会社の徳間書店から「公開に先行して作品の小説を1カ月で書いてくれ」と無茶振りオファーの連続。こうして急ピッチで完成させた作品は、封切られるや好評を博し、西岡の努力も報われた......かと思いきや、なんと公開は中止となってしまう。原因は、劇中に登場するハンバーガー店の本社からクレームを受けたことにあるという。

 店長に不満を抱える良一は閉店後、「この店のハンバーガーは猫の肉や!」と叫び、大きな石を店のウインドウに投げつけて粉々に割ってしまう......。当時流布していた都市伝説(あくまでも都市伝説です)を、店舗の実名を上げた形で取り入れてしまっては、企業側の抗議も必然だったのだ。

 ちなみに、主役の趙方豪(豪田遊)は、その後1997年に悪性腫瘍により41歳の若さでこの世を去った。彼は今作以降も様々な作品で活躍し、演技に対する評価も高かっただけに、その早すぎる逝去を惜しむ声は多い。前作『ガキ帝国』のラストで、権力を笠に着る元仲間の機動隊員を殴って逃げ、飲み屋に駆け込み「ビール1本!」と叫ぶシーンが秀逸で忘れられない。多くの映画ファンが、今もその続編の鑑賞を望んでいるはずだ。
(天野ミチヒロ)

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