事件記者は語る! 伊良部氏の孤独な死と、沖縄・伊良部島の因縁

tocana / 2014年7月10日 10時0分

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かつてメディアを賑わせた凄惨な事件や悲劇的な事故。事件記者が綴る暗黒のアナザーストーリー。

【伊良部島の因縁】


 2011年7月27日、ある男が米国ロサンゼルス近郊の自宅で自ら命を絶った。

 かつて「豪腕」とうたわれた男の名は、伊良部秀輝。日米球界でピッチャーとして伝説的な活躍を見せた元野球選手だ。

 プロ野球・千葉ロッテマリーンズ時代には、当時の球界最高記録となる時速158キロをマーク。1997年には、鳴り物入りで米メジャーの名門ニューヨーク・ヤンキースに移籍し、「和製ノーラン・ライアン」の異名を取る快投を見せた。2003年には、阪神タイガースで日本球界に復帰し、18年ぶりのリーグ優勝にも貢献した。しかし、野球人としての華やかな経歴とは裏腹に、私生活はスキャンダルに満ちていた。

「現役当時から監督に反発したり、スタンドのファンにつばを吐きかけたり、トラブルが絶えなかった。引退してからは飲食店経営に乗り出したが失敗。08年には大阪市北区のガールズバーで酔って大立ち回りを演じて、警察に逮捕もされている」(スポーツ紙の野球担当記者)

 自殺の1年前にはアメリカで飲酒運転で逮捕され、妻子とも別居状態になるなど、孤独を深めていた。

「将来を悲観しての自殺」...マスコミ各社は、球史に名を残す不世出の豪腕ピッチャーの悲報をこう結論づけた。

 伊良部は、沖縄県コザ市(現在の沖縄市)で、沖縄出身の母親と米兵の父親との間に生まれた。物心がつく前に両親は離婚し、兵庫県尼崎市に移っているが、伊良部の古里であるその沖縄では、「非業の死」と、ある土地の「因縁」を関連づけて語る者もいた。

「伊良部の母親のルーツはその姓の通り、宮古島に隣接する伊良部島にある。実はこの島は沖縄の中ではいわくつきの土地として知られている。暴力沙汰を起こしたりする者が多いことから、地元では『荒くれ者が生まれやすい土地』として忌避されることが多い」(地元の不動産業者)

 沖縄では毒を持つウミヘビのことを「イラブー」というが、島の出身者を揶揄してそう呼ぶこともあったという。

 その血を受け継ぐ伊良部自身も、土地の呪縛に絡め取られるように破滅的に生き、悲劇的な最期を迎えた。伊良部の訃報が伝えられると、古くからの宮古の住民の中には、「島の呪いだ」という者もいたという。

 ただ、伊良部は、さらに重い十字架を背負ってもいた。

「沖縄では、つい最近まで、米兵と地元女性との間に生まれたハーフの子どもを『アメラジアン』と呼んで差別する傾向があった。伊良部は渡米するまで、母親から自分の父親が米兵だとは知らされていなかった。『息子に苦労をかけたくない』との親心もあったのだろう」(先の記者)

 父親を知らず、母とふたり、世間の目から逃れるようにたどり着いた尼崎の地。縁もゆかりもない土地で開花させた野球の才能だけが、伊良部のアイデンティティーだった。その唯一の拠り所を失った時、彼の中で何かが弾けてしまったのだろうか...。
(文=KYAN岬)

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