サッカーPK前の“なんとなく負ける“感、なぜ当たる?

tocana / 2014年7月12日 19時0分

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 ブラジルW杯が白熱している。大量点が入る試合も気持ちがいいものだが、手に汗握るPK戦は、一発勝負のトーナメント戦ならではのもの。コスタリカとの準々決勝、PK戦に突入する際にGKを交代させるという奇策に出たオランダは、見事勝利を収めたが、続くアルゼンチンとの準決勝ではGKを替えず、PK戦で敗れることとなった。

 この結果には大きな心理的効果が働いている。替えられた正GKシレセンは"PKが苦手"という心理的重圧を背負い、アルゼンチンのキッカーたちは"PKが苦手"だといわれているGKに対し、自信をもって蹴りこむことが出来た。重圧はオランダのチーム全体に波及し、アルゼンチンは4本中4本成功、オランダは4本中2本成功という結果につながった。

 監督がGKを替えない決断をしたとき、なんとなくオランダが負けるような予感がしなかっただろうか。『期待の科学 悪い予感はなぜ当たるのか』(阪急コミュニケーションズ)は、アメリカの科学ジャーナリスト、クリス・バーディック氏が、人間の心理や思い込みがもたらす"期待の力"に言及した本だ。以下は、本書の中で紹介されていた実験を元に考察を加えたものである。

「薬が効いていると思い込ませるプラシーボ効果」から「一度もPK戦に勝利したことがないサッカーイングランド代表」「黒いユニフォームを着たホッケーチームはファウルが多くなる」「ゲームの上手い人は優れた容姿のアバターを使用している」など、数多くの研究事例から、人間の"思い込み力"を科学的に分析している。

 中でもプラシーボ効果(偽薬効果)は特に有名だ。18世紀末、ドイツのメスメルという医師が、"動物磁気の調整"と称した治療を行い、民衆に高い人気を博したが、フランス王室が調査した結果、メスメルの治療法は「想像力にすぎない」と断定された。その後、プラシーボ効果は長いこと忘れ去られた存在だったが、1950年代に再注目され、疑問視する見方も多いものの、現在ではある程度の効果が認められている。

 たとえば「プラシーボ手術」という事例がある。変形性膝関節症を患った180人の患者を、3つのグループに分け、1つめのグループには完璧な手術を、2つめのグループには損傷部位の摘出を行わず洗浄だけを行う、3つめのグループにはメスは入れるが実質何もしない"手術するフリ"をした。すると、偽の手術のほうが本物の手術よりも、総じて痛みが少なく、歩行もスムーズにできたという。

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