「日本のチベット」の何が悪い? ― 放送禁止用語と怪獣映画『大怪獣バラン』

tocana / 2014年8月12日 13時0分

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――絶滅映像作品の収集に命を懸ける男・天野ミチヒロが、ツッコミどころ満載の封印映画をメッタ斬り!

【映画 『大怪獣バラン』】

 メディアで使用される表現に関して、時期によって社会通念上「不適切」と烙印を押され、テレビ放送やビデオなどで多くの台詞が削除されてきた。バラエティ番組などでよく見る「ピー」に類似した処置で、劇中で台詞の一部が唐突に無音(口パク状態)となるのだ。その多くは、当時は当たり前のように使用されていた精神疾患や身体障害者に対する侮蔑的な表現だ。

 だが、レアケースとして、実在する国や特定された地域に対し不適切と判断された表現も対象となり得る。今回は、大ヒットしたハリウッド版『GODZILLA』の元祖たる、由緒正しき東宝怪獣作品上で発生した類例を紹介しよう。


■消されまりのトルコと「ソープランド」の誕生

 主に80年代から90年代にかけて再放送された古いテレビ番組において、性風俗の「トルコ風呂」または「トルコ嬢」という台詞がバッサリ消されまくった。松田優作主演『探偵物語』の再放送では、尼僧コスで客の相手をする「トルコ修道院」の看板までモザイクが掛かる念の入り様(苦笑)。これは1984年に、トルコ本国に配慮してトルコ風呂を「ソープランド」と改名したことに起因する。そして次のような音声処理もまた、珍しいケースとして留めておきたい。

 1950年代の東宝は『ゴジラ』と『空の大怪獣ラドン』のヒットにより、アメリカからテレビ放映用怪獣映画のオファーを受け、製作に着手した。たが、1958年の「六社協定」により、映画のテレビ放映が禁止されてしまい、そこで急遽、日米両国で劇場公開されたという曰く付き作品が『大怪獣バラン』だ。

「バラン? そんな怪獣いた?」。マニア以外には当然の反応だ。怪獣ファンでなくても、モスラやメカゴジラくらいは知っている。でもほとんどの人はバランの存在を知らないであろう。どんな作品なのか簡単に説明しよう――。


■あらすじと放送禁止用語

 東北に破羅陀巍(ばらだぎ)様を祀る土俗信仰を持つ岩屋集落があり、そこから程近い湖には中生代の巨大生物バランが生き残っていた。しかし、科学者やマスコミなど現代文明よるバランのテリトリーへの侵入が、大人しく暮らしていたバランを怒り狂わせ、自衛隊が退治のため出動するというストーリーだ。このバランは火も光線も吐かず、今風の怪獣のような瞬間移動もしない。別名「ムササビ怪獣」と呼ばれる所以の、腕と足の間にある被膜を広げて飛行できることが最大の特徴だ(地味)。

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