羽生結弦の挑戦を賞賛するのは危険! 本当に怖い、スポーツの脳震とう

tocana / 2014年11月11日 12時30分

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 フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ中国杯に出演していた羽生結弦が、11月9日に帰国した。羽生は紺のジャージにマスクを着けた姿で報道陣の前に登場。これから精密検査を受けることになるという。

 羽生は、8日に開催された男子フリーに出場する際の本番直前練習で、中国のエン・カン選手と激しく接触した。彼はリンクに突っ伏したのちに自力で立ちあがったが、脳震とうがあったのではないか? と疑われる症状が見て取れた。額からは血が流れていたため、リンクサイドで緊急治療を受け、頭とアゴにテーピングを施された。羽生は満身創痍のまま決勝に臨み、「オペラ座の怪人」の楽曲にのせて演技したものの、2種類の4回転ジャンプはいずれも転倒している。万全の演技とはとてもいいがたい出来だったが、みごと2位に輝いた。また、羽生は演技終了後、あごを7針、右側頭部を3針縫う治療を受けたという。

 痛々しい姿を見せつつも強行出場をした羽生の姿を見て、「感動した」などと賞賛する声がネットを中心に上がった。しかし、多くのスポーツ関係者は、彼の強行出場に難色を示していた。

 グランプリを放送していたテレビ朝日のメーンキャスターを務める松岡修造氏は、「これは滑るべきじゃない!」とマイクを通して訴え、「僕は、美しく見せることがフィギュアだと思っていましたが、これはとんでもないスポーツだなと今、思っています」とアスリートの観点から疑問を呈した。また、松岡だけでなく、元陸上競技選手で400mハードル日本記録保持者の為末大氏は、Twitterで「気持ちの強い選手はどんな状況でもいくらでも頑張ろうとするわけだから、選手を命の危険から守るのが競技会側とメディアだと思う 」と投稿。これに対しては、「金メダリストの意地と思います。こんな時に後先考えない羽生君だからこそ、感動を与えるのです 」という一般市民の反論意見が出るなど、賛否両論が巻き起こった。

「羽生選手は、明らかに脳震とうの症状を起こしていたと思われます。特別な治療を必要とするものではないが、一般的には最低でも24時間は様子を見て、後遺症を残さないようにしなければならない。脳の障害は重篤な症状や後遺症を残す危険があり、また他の脳疾患を引き起こす原因にもなります。当然ですが、運動選手の場合は競技への復帰は控えるのがあたりまえです」(スポーツライター)

 多くのスポーツ選手にとって、頭部外傷の危険性は常について回るものだ。格闘技は言うに及ばず、サッカー、ラグビーなどでも起こる可能性がある。アメリカのNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)では、引退選手が頭痛、めまい、認知症に悩まされており、81件に上る訴訟が起きている。

 またサッカーのJリーグは、「簡易的な脳震とう診断ツールで脳震とうが疑われれば、試合・練習から退くべきである。短時間のうちに回復したとしても、試合復帰は避けるべきである」と、たとえ選手の意識がはっきりしても、は避けるべきだとの指針を提示している。不安定な氷の上に立ち、演技を行うフィギュアスケートでも、頭部への怪我などは、常に危惧しなければならない問題であることは言うまでもない。

 傷を負いながらも競技を実行し、あきらめない姿勢を見せることを美徳とする心情が理解できないわけではない。見ている者にとって、競技中のアクシデントはワンシーンを悲哀で彩るアクセントのように思えるかもしれないが、競技者には"その後"があることを忘れてはならないだろう。
(文=本山文七)

※イメージ画像:『羽生結弦「覚醒の時」』ポニーキャニオン

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