アイヌ伝説の小人・コロポックルの棲家が埼玉に!? 希少植物・ヒカリゴケも自生する「吉見百穴」の神秘的奇観

TOCANA / 2016年2月28日 11時0分

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 小説『蝮のすゑ』などの著作で知られる第一次戦後派の作家・武田泰淳(1912~1976年)。彼は厳寒の北海道で海難事故にあった船の乗組員が、仲間の肉を喰らいながら生き延びたという実在の死体損壊事件、いわゆる『ひかりごけ事件』(1944年)をモチーフに小説『ひかりごけ』を上梓した。この事件は、我が国で唯一、裁判が行われた食人事件として知られている。同作の表題となった希少植物・ヒカリゴケは、洞窟のような冷暗所で美しい緑色に発光するもの珍しい植物である。

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■世界的にも珍しい奇観

 埼玉県比企郡吉見町にあるここ『吉見百穴』は、古墳時代後期に掘られた無数の横穴がその口を外に向かって無言で開く、珍しい景観が特徴の遺跡だ。無骨な岩肌に点在するその開口部はトルコの奇岩群・カッパドキアを彷彿とさせる独特なものである。明治時代には、あの大森貝塚(東京)の発掘でその名を知られる考古学者・エドワード=モースが、また、江戸時代における蘭学の振興に寄与したドイツの医師、フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトの次男・ヘンリー・シーボルト(小シーボルト)が調査に訪れている。『吉見百穴』の景観は、世界的に見てもいかに特異なものであったかがよくわかる。

 実際に現地を訪れてみると、遠巻きに見てもその岩肌をむき出しにした小高い山の一部に、いくつもの穴が口を開いていることが見てとれる。それらはある程度、規則的に並ぶようにして開けられており、風化や浸食といった自然現象によって開いたものではないことは一目瞭然だ。


■埼玉にヒカリゴケが自生するミステリー

 さらに近づいてみると、それらひとつ1つの穴は、さほど大きなものではなく、大人が出入りするには小さいが、棺のようなものを入れるにはちょうど良い大きさであるという印象を覚える。心無き者によって刻まれた落書きを横目にその内部へと足を踏み入れてみると、遺体を安置するようなスペースが設けられていることも確認できた。この場所が近現代の考古学の世界において、古代における集合墳墓であったと見なされるようになったのも、どこか合点がいくところである。

 しかし、そんな『吉見百穴』を語る上で、決して避けては通れないのが、原始的な希少植物・ヒカリゴケとコロポックル伝説だ。実はこの岩山の下の方には、関東地方としては極めて珍しいヒカリゴケの自生地が存在しており、そうした経緯から、当地は『吉見百穴ヒカリゴケ発生地』として、国の天然記念物に指定されている。

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