ザ・グレート・カブキ誕生前夜 1973年3月8日「日プロ最後のUN王者」高千穂明久
東スポWEB / 2024年9月22日 10時4分
【昭和~平成スター列伝】米国マットで最も成功を収めた日本人プロレスラー、ザ・グレート・カブキの自伝「毒霧の真実」が本紙で好評連載中だ。
カブキに変身する以前の日本プロレス時代の裏話は古いファンに限らず興味を引くが、実はカブキは「日プロ最後のUN王者」として歴史に名を残している。当時のリングネームは高千穂明久。日プロが崩壊する直前の1973年3月8日栃木・佐野で、アントニオ猪木と名勝負を展開した“妖鬼”ジョニー・バレンタインから王座を奪取した。高千穂にとっては国内初のメジャーシングル王座で、本紙は1面で詳細を報じている。
「1本目は5分過ぎから乱戦ムードとなり、場外で痛めつけられた高千穂がお返しとばかりに水平打ち、ドロップキックから再び場外戦。結局、両者リングアウトとなり1対1に。2本目はゴングと同時にバレンタインがハンマーパンチ、高千穂もパンチを倍返し。バレンタインは高千穂の耳に入れ、ロープに逆さ吊りだ。場外に逃げる高千穂。追うバレンタインは場外で机にぶつけ、パンチとキックの嵐。さらに高千穂を大机に乗せて、大の字になったところへ狙いすまして必殺の毒針エルボードロップ。高千穂は間一髪、机の下に転がりこれをかわす。バレンタインの右ヒジは大机をまともにヒット。右ヒジを押さえてそのまま七転八倒だ。この間に高千穂はリングにカムバック。リングアウトでUN選手権を獲得し、第7代王者となった」(抜粋)
歓喜の王座奪取を果たした高千穂だが、当時日プロは倒産寸前の危機にあり、新日本プロレス移籍が決まっていた“世界の荒鷲”坂口征二(現新日本プロレス相談役)ら4選手にとっては日プロ最後の試合となった。
そのため控室は異様な緊張感と殺気に包まれており、坂口は後に「会社を裏切ったワケじゃないという意地があった。仮に何か仕掛けられたら、どんな手段を使ってでも反撃するとハラをくくっていた。大体、日プロ内に俺をネジ伏せられる者がいるのかと相当に殺気立っていた」と述懐している。
結局、日プロに残留した高千穂は4度の防衛を重ねるが、団体は同年4月に活動停止。高千穂は王座を返上して、全日本プロレスへと移籍する。同王座は最終的に全日本預かりとなり、現在の3冠ヘビー級へと至る。日プロの大混乱期に王者となった高千穂だが、快挙であることには間違いなかった。
その後、高千穂は81年にザ・グレート・カブキに変身してベルト以上の名誉と歓声を得ることになる。今後もマット界の“語り部”としていつまでも元気でいることを願いたい。 (敬称略)
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