日本のマンガ文化は不滅だが、アプリ普及で危惧されるのは?
LIMO / 2019年3月8日 20時15分
日本のマンガ文化は不滅だが、アプリ普及で危惧されるのは?
毎年3月17日は「漫画週刊誌の日」、黄金時代は約25年前
来週日曜日の3月17日は「漫画週刊誌の日」です。これは、1959年(昭和34年)のこの日、日本初の少年向け週刊誌「少年マガジン」と「少年サンデー」が発刊されたことを記念に制定された日です。
そう聞くと、“そう言えば、漫画週刊誌を読まなくなったな”とか、“漫画週刊誌を読んでいる人を見掛けなくなったな”と感じている人も多いでしょう。特に、30歳代以上の方は強く思うかもしれません。
1980年代後半から1990年代半ばにかけて、漫画週刊誌は全盛期を迎えました。発売日になると、書店の店頭や駅の売店には漫画週刊誌が山積みとなり、すぐに売り切れ状態となりました。そして、電車の中では、若者に限らずスーツ姿の会社員が漫画週刊誌を貪るように読む光景も珍しくなかったのです。
人気4誌の中でも「週刊少年ジャンプ」は際立つ存在
当時、数多くあった漫画週刊誌の中でも、「少年ジャンプ」(集英社)、「少年マガジン」(講談社)、「少年サンデー」(小学館)、「少年チャンピオン」(秋田書店)の4誌に人気が集まっていました(注:雑誌の正式名から「週刊」を省略、以下同)。
その中でも特に、最大の発行部数を記録していたのが「少年ジャンプ」であり、その人気はある種の社会現象にもなりました。その「少年ジャンプ」の発行部数の推移を見てみましょう。
「少年ジャンプ」ピーク時の発行部数653万部は“不滅の金字塔”!
1968年に創刊された「少年ジャンプ」は、当時としては珍しかった読者アンケートを重視する編集方針(評価の低い作品は前倒しで打ち切りなど)や新人作家の積極的起用などにより、着実に人気を高めます。そして、1995年の3-4号では653万部という空前絶後の発行部数を記録しました。
念のために言いますが、この653万部は年間の記録ではありません。週刊誌ですから、1週間の発行部数です。この記録は当時、ギネスブックにも登録されました(今も残っているかは不明)。
漫画週刊誌の発行部数は壊滅的な激減、製紙業界再編の一因となった?
しかし、この1995年をピークに2年後の1997年には約400万部(毎週の年間平均、以下同)、2003年には約300万部と減り続け、2017年はついに200万部を割り込みました。直近(2018年10~12月、以下同)も約171万部に止まっています。
これは、23年間でピーク時の約4分の1(約▲74%減)まで減少したことになります。まさしく、激減と言っていいでしょう。
発行部数が減少したのは他誌も同じです。「少年マガジン」はピーク時の453万部(1995年)が直近は約74万部へ、「少年サンデー」は同じく約228万部(1983年)が約30万部へと激減しています。また、「少年チャンピオン」に至っては、いつの間にか日本雑誌協会の発行部数公表の対象外となっており、10万部程度と推測されます。
話は少しそれますが、これだけ漫画雑誌の発行部数が激減しているわけですから、当然のごとく、製紙業界も苦境に陥っています。実際、直近6~7年間で業界再編が進み、さらにもう一段の再編が起きる可能性が高いと言われています。
漫画雑誌だけで判断するのは正しくないかもしれませんが、製紙業界の淘汰・再編は不可避の流れと言えましょう。
ピークの4分の1に激減した今でも「少年ジャンプ」は別格的存在
発行部数がピーク時の約4分の1に落ち込んだとはいえ、今でも約170万部を誇る「少年ジャンプ」の存在感は圧倒的に大きいと言えます。発行部数第2位の「少年マガジン」の2倍以上あるわけですから、“さすが少年ジャンプ!”というところでしょうか。
発行部数は減ってもなお、間違いなく、漫画週刊誌の巨人と言えましょう。
漫画アプリの登場で電子版の普及が進み、2017年は紙媒体の売上を上回る
さて、こうした状況を鑑みると、政府が推進する“クールジャパン”を代表する重要コンテンツの1つである漫画の将来は大丈夫なのか?という懸念が高まります。しかしながら、最近ではモバイル普及を背景とした漫画雑誌の電子版の人気が急速に高まっています。既に2017年の漫画市場では、電子版の売上が紙媒体(漫画雑誌)を上回ったことが明らかになっています。
そして、この電子版急拡大の最大要因となっているのが、いわゆる“漫画アプリ”の登場です。漫画アプリの多くは、電子コミックのコンテンツ配信サービスを兼ねており、作品の一部を無料で閲覧できるサービスも充実しています。これが若年層に受け入れられ、その数は50以上あるのではと推測されています。
漫画雑誌の発行部数は激減しても、日本の漫画文化は不滅のようです。
漫画アプリの普及で“漫画雑誌”という概念は消滅へ?
しかし、こうした漫画アプリを通じた電子版拡大には、今後の漫画界に対する懸念も少なくありません。というのは、漫画アプリが定着することで、“漫画雑誌を読む”という行動が“漫画単品を読む”という行動に変わりつつあります。つまり、読まれない漫画はあっという間に退場する(コンテンツから除外される)ことになります。
競争原理の徹底と言えばそれまでですが、漫画雑誌が担ってきた“新たな漫画家の育成”が置き去りにされることを危惧する声も少なくありません。3月17日の「漫画週刊誌の日」は、このような問題を改めて考える機会になりそうです。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「ヒロアカ」シリーズ世界累計発行部数が1億部突破 豪華広告や398話無料施策など実施
映画.com / 2024年4月7日 15時0分
-
『ヒロアカ』キャラ90人以上が登場!読売新聞に広告掲載 47都道府県の地方紙絵柄も公開
ORICON NEWS / 2024年4月4日 7時10分
-
『ヒロアカ』累計1億部突破で作者感謝「時代に恵まれた」 PV公開・新聞広告など記念企画実施
ORICON NEWS / 2024年4月4日 0時0分
-
『ヒロアカ』累計発行部数1億部突破! 堀越耕平描きおろしイラスト&コメント到着 スペシャルPVも
クランクイン! / 2024年4月4日 0時0分
-
『ONE PIECE』取材・構想で3週間休載 作者・尾田栄一郎、病気説否定も体のメンテナンス「忙しいです僕は」
ORICON NEWS / 2024年4月1日 0時0分
ランキング
-
1「いつまでも結婚できない40代男性」の勘違い…高年収でも女性から選ばれない“深刻な原因”
日刊SPA! / 2024年4月25日 11時11分
-
2平均月23万円だが…〈初給与〉に心躍る大卒新入社員〈給与明細〉を見て愕然「天引き額が多すぎる!」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月25日 7時15分
-
3初期から老眼鏡をかけっぱなしにすると「老眼」が早く進む【一生見える目をつくる】
日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年4月25日 9時26分
-
4老けるスピード3倍も!老化を早める体の酸化って?予防のための7つの習慣
ハルメク365 / 2024年4月25日 16時0分
-
5「健康食品は健康に悪い」という不都合な事実…紅麹サプリ問題で明確になった健康食品の恐ろしいリスク
プレジデントオンライン / 2024年4月25日 9時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください