ルネサスの工場一時帰休、操業継続に含み
LIMO / 2019年4月2日 20時20分
ルネサスの工場一時帰休、操業継続に含み
工場停止期間は大幅減少
半導体大手のルネサス エレクトロニクスは、国内外工場の一時帰休について、当初計画から大幅に停止期間が縮小する見込みだと明らかにした。生産品目に応じて工場単位で停止期間に大きな差が出るほか、工場の一部では操業を継続するところもあるという。
労働組合との協議は継続中
同社代表取締役社長兼CEOの呉文精氏が都内で行った記者会見で明らかにしたもの。当初計画では5月と8月の大型連休にあわせて、国内前工程の操業を最大2カ月停止する予定であった。8月は需要動向に応じて柔軟に対応するとして、少なくとも5月に関しては操業を止める意向であったが、操業継続に若干の含みを持たせるかたちとなった。
懸案となっていた労働組合との協議も継続中で、呉CEOもまだ交渉中であることを認めた。また、生産品目によって需要動向に大きな隔たりがあることも影響しているほか、工場によってクリーンルームの仕様が異なるため、完全に操業を停止できる工場と、そうでない工場があることも要因の1つだとしている。
なお、工場稼働率(前工程ウエハー投入基準)は18年第4四半期(10~12月)が全体で5割であったの対し、19年第1四半期(1~3月)は60%強まで回復する見通し。5月に予定されている一時帰休にあわせて、作り貯めなどを行っていくものと見られる。
メリット・デメリット双方が混在
同社は、需要減少時の効率的な工場運営を模索するなかで、今回の一時帰休という決断に至った。前工程はクリーンルーム維持にかかる固定費が大きいことから、コスト削減、キャッシュアウト抑制を図るため、工場停止を行う。
ただ、半導体前工程は他の製造業に比べて、リードタイムが非常に長く、ルネサスの場合でも60〜70日を要していると推定される。同社は製品供給を滞らせず、機会損失ゼロを目指すとしているが、需要変動時に柔軟かつ迅速に対応するには、需要予測の精度を相当高める必要があることから、固定費削減効果と機会損失による売上・シェア減というメリット・デメリットの両方が混在する判断といえそうだ。
新経営体制に移行、IDT幹部を重用
同社は米IDT(Integrated Device Technology)社の買収が3月30日に完了したことを受けて、新たな役員・組織体制に移行する。2事業本部体制への移行などを段階的に行うほか、重要ポストにIDT幹部を配置する。新体制には2019年7月までに移行する予定。
ルネサスは17年2月に、アナログ半導体に強みを持つインターシルを買収。さらに、IDTの買収完了により事業ポートフォリオの拡充を進めている。インターシルの買収以降、日本中心の事業運営体制から脱却し、地域に捉われずグローバル組織として運営する「One Global Renesas」への強化を進めている。IDTとの統合はこの動きを加速させるものであり、同社Executive Vice President, Global Operations and CTOのSailesh Chittipeddi(サイレシュ・チッティペディ)氏が3月30日付で、IDTのPresident and CEOに就任するとともに同社執行役員常務に就任した。
また、IDTとの統合にあたり、自動車向け以外の産業やインフラなど幅広い分野向けの事業を担う、現行の「インダストリアル事業本部」と「ブロードベースドソリューション事業本部」を統合し、19年7月1日付で「IoT・インフラ事業本部(IIBU)」を発足。自動車向け事業を担う「オートモーティブソリューション事業本部」との2事業本部体制に移行する。IIBUはチッティペディ氏が率いる予定。
なお、これまでインダストリアルソリューション事業本部長を務めていた横田善和氏は、19年4月1日付でフェローに就任するほか、ブロードベースドソリューション事業本部長を務めていた、インターシル出身のNecip Sayiner(ネイジップ・サイナエアー)氏は退任する。
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