女性警察官・幹部の躍進が加速。しかしその背景は複雑?
LIMO / 2019年4月26日 20時40分
女性警察官・幹部の躍進が加速。しかしその背景は複雑?
4月27日は「婦人警官記念日」
4月27日は「婦人警官記念日」です。
これは、戦後間もない1946年(昭和21)4月27日、警視庁で日本初の婦人警官62人が採用され、勤務に就いたことに由来しています。婦人警官の採用は、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の強い意向によるものとなっていますが、その真意はよく分かっていません。ちなみに、応募した人の数は約1,300人だったようです。
なお、1999年から婦人警官という呼称は廃止されて「女性警察官」となりました。
女性警察官の比率は9.4%へ上昇、新規採用ではザックリ5人に1人が女性
初の採用から約73年が過ぎた現在、女性警察官の数はどれくらいなのでしょうか。
警察庁が刊行した「平成30年警察白書」によれば、全国で24,587人、全警察官に占める割合は9.4%となっており、この数字は年々増加しています。
ちなみに、平成21年度実績は、14,162人で割合は5.6%でした。この9年間、全国の警察官は8,563人増加したのに対して、女性警察官の増加は10,425人でした。新規採用と退職者の入り繰りはありますが、いかに女性警察官が増加しているかがわかります。
また、平成29年度に新規採用された女性警察官は約1,827人で、新規採用者総数に占める比率は17.8%でした。本当にザックリ言うと、新規採用の5人に1人が女性警官です。そして、現在のペースが続くと、平成35年前後には全国に勤務する警察官の7~8人に1人が女性警察官になると試算することができます。
もはや女性警察官は珍しくない存在で、逆に、女性警察官なしでは警察活動がままならない状況にあると言えましょう。
女性警察官の増加は喜ばしいことばかりではない?
ところで、女性警察官と聞くと、駐車違反を取り締まったり、交通整理をしたりする姿を思い浮かべる人が多いかもしれません。確かに、従来はこうした職務が中心の交通部門(交通課など)に配置されるケースが多かったようです。
しかし、近年は地域・刑事・組織犯罪対策などに配置される比率が大きく増えています。この背景には、女性が被害者となるパターンが多い性犯罪やDV犯罪の増加が挙げられます。
また、その裏返しにもなりますが、女性の犯罪者が増えていることも関係しているようです。女性警察官の増加にはこうした複雑な背景があるのは間違いありません。
女性警察官の幹部への登用も急速に拡大中
もう一つ特筆すべきは、女性警察官の幹部への登用が加速していることでしょう。平成30年に「警部」以上の役職に就く女性警察官は498人となっており、平成21年(142人)と比べて約3.5倍に増加しました。
当然、その幹部の下には男性警官の部下もいるはずですから、そういうパターンも珍しくないということでしょうか。もちろん、まだ絶対数は少ないですが、女性警察官の幹部への登用は急速に拡大していると言えます。
さて、ここまで読んで、“女性活躍が叫ばれる一般社会と同じかもしれない”、“幹部への登用増加は、一般企業の女性役員の増加と一緒だな”と感じた人も多いと思います。いや、警察庁における女性警察官の躍進ペースは、一般企業より進んでいると見ることが可能かもしれません。
内閣府男女共同参画局のホームページにある「女性役員情報サイト」によれば、2018年7月現在の上場企業の女性役員数は1,705人となり、アベノミクス始動後に3倍弱へと急拡大しているものの、その比率は34.1%に止まっています。
もちろん、警察庁の「幹部」と上場企業の「役員」を同一に考えることは無理がありますが、少し意外な結果と見る人もいるでしょう。
『女性活躍推進法』の成立は女性活躍社会のゴールではない
思い返すと、「女性活躍」は現在の安倍政権が掲げる重要政策の1つです。わざわざ、「女性活躍担当」の閣僚(大臣)まで設置したくらいですから、強い意気込みを感じずにはいられません。
しかし、今から約3年前の2016年(平成28年)4月に『女性活躍推進法』が成立して以降、女性活躍に関する具体的な政策を耳にすることが少なくなったように思われます。法案成立はゴールではなく、女性活躍の始まりだったはずです。
たとえば、安倍政権の支持層でも、「女性活躍担当」の大臣が誰なのか即答できる人は意外に少ないのではないでしょうか。施行から既に3年が経過したとはいえ、『女性活躍推進法』の効果は不明瞭なままと言っていいでしょう。ちなみに、現在は片山さつき参院議員が担当大臣です。
激変する国内外情勢とは別に、「女性活躍」政策の進捗を
確かに、法案成立以降の3年間は、筆者を含めた多くの人の関心が、激変する国際情勢(ブレグジット、トランプ政権誕生、北朝鮮問題など)や金融市場、あるいは、森友学園問題や閣僚スキャンダルのようなゴシップ問題に向いていました。
最近では“働き方改革”の議論も熱を帯びています。安倍内閣も、こうした諸問題への対応が最優先だったかもしれません。しかし、アベノミクスの大きな柱の1つでもある女性活躍、女性活用を一層推進してほしいと思う人は、女性を中心に少なくないはずです。
女性活躍には、現在も深刻な状況が続いている待機児童解消など、解決しなければならない課題が多くあります。そういったものを含めて、安倍政権が掲げた重要政策の成果に注目したいと思います。
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