大学の看護学部新設ラッシュ、看護師数がそんなに増えて大丈夫?
LIMO / 2019年5月11日 20時45分
大学の看護学部新設ラッシュ、看護師数がそんなに増えて大丈夫?
毎年5月12日は「看護の日」です。これは、1965年から5月12日が「国際看護の日」に制定されていたのに合わせる形で、1991年に日本独自の形で制定されました。
ただ、本当の始まりは、赤十字社がナイチンゲール(1820~1910)の誕生日に因んで制定したものです。主旨としては、ナイチンゲールの誕生日に看護及び看護職について考えるということに変わりはありません。
看護婦と看護士が2002年に統一されて「看護師」へ
なお、看護職と聞くと“看護婦”をイメージする人も多いと思われます。確かに、2001年までは女性の看護職を「看護婦」、男性の看護職を「看護士」としていましたが、2002年からは男女とも「看護師」に統一されています。
ただ、英語表記は従来通り「nurse」のままです。“ナース”と聞くと、白衣の天使(女性)をイメージしてしまうのは、少し時代遅れなのかもしれません。
そこで、ほとんどの人が1度はお世話になったことがある看護師について、公益社団法人日本看護協会のデータを参照しながら見てみましょう。
現在の看護師数は約156万人、年率+2%強で増加中。男性の看護師も急増中
まず、2016年現在の看護師(准看護師含む、保険師と助産師は除く。以下同)は全国で約156万人います。この看護師数はほぼ一貫して増加しており、直近10年間では年平均+2.2%の増加、人数にすると毎年3万人弱の増加です。
特に男性の看護師の増加が著しく、2004年の61,490人が12年後の2016年には106,333人へと+73%増加しました。しかも、国家資格である看護師に限れば約+2.2倍に増えています(38,028人が84,193人へ)。
とはいえ、男性の比率が未だ7%弱であることから圧倒的な“女性職場”であることは確かなのですが、男性の進出は着実に増えていると言えます。
女性にとって看護師は人気職業の1つ
さらに、この看護師という職業、結構人気が高いようなのです。まず、急速な高齢化社会の進展に伴う医療業務の増大が続くため、医療現場を支える看護師に対する需要が拡大しています。
また、女性にとっては、結婚・出産後も働き続けられる職業の1つであることも大きな魅力なようです。看護師の資格を取得すれば、活躍のフィールドは将来的にも有望なのでしょう。
大学の看護学部・学科の新設ラッシュが続く
この人気の高さを裏付けるのが、看護学部・学科を設置した大学(看護系大学含む)の急増です。ご存じの通り、少子化の影響を受けて多くの大学が学生数の確保に苦心しており、大幅な定員割れも珍しくありません。しかし、看護学部・学科の新設ラッシュは止まるところを知らない状況です。
看護学部・学科のある大学数は1991年度にはわずか11校に過ぎませんでしたが、2018年度には263校へと約24倍に増加しています。これは、全国にある大学の約3.3校に1校が看護学部・学科を設置していることを意味します。
しかも、最近では、医療系とは全く関係ない大学(たとえば工業大学)でも看護学部・学科を新設することが珍しくなくなりました。
定員割れに悩む大学にとって看護学部は救世主?
また、学生数(定員ベース)も1991年度の558人が2017年度には22,481人へと増加しており、今後もさらなる拡大が見込まれています。学生数の確保に苦しむ大学、言い換えれば、経営難に直面する大学にとって、看護学部・学科は必要不可欠というのは言い過ぎでしょうか?
こうした状況からも、年に1度の国家資格試験に合格する必要があるとはいえ、看護師が人気の高い職業の一つであることが推察されます(注:准看護師は都道府県知事による免許制度)。
“看護師は3K職業”は昔の話なのか
ここまで読んだ人の中には、“人気職業? 看護師は代表的な3K職業だったはずだが…”と思う方がいらっしゃるかもしれません。そうです、看護師の仕事は3K(きつい、汚い、危険)で表されることが多々ありました。
特に、バブル経済時期の頃は、女性にとって看護師(注:当時は「看護婦」と称していました)は敬遠する職業の1つだったと記憶しています。「3K」を超えた「9K」という言葉があったくらいですし(たとえば給料が安い、休暇が取れない、結婚が遅くなる等々。諸説あります)、実際、夜勤の連続などで体調の維持なども大変だったようです。
今も看護師は大変な職業、とりわけ小規模病院では顕著
ということは、現在の看護師は3Kから解放されたスマートな職業になったのでしょうか。いや、今でもそう変わっていない可能性があります。日本看護協会の調査によれば、2015年度における看護職の離職率(病院勤務のみ対象)は、常勤が10.9%、新卒が7.8%でした。
新卒の離職率8%未満は、大卒平均の11%前後(厚生労働所のサンプル調査)に比べると低い部類ですが、それでも大変な仕事であることが伺えます。しかも、この数字は、小規模の病院ほど高くなっており、病床数99未満の新卒離職率は約14%に達しています。
将来的には看護師にもリストラの波が押し寄せるという予測も
さらに、看護師の約85%が勤務する「病院」「診療所」では、厚生労働省の旗振りの元、病床数の削減が実施される見込みです。これが進むと、病院の経営が難しくなり、看護師人数の適正化が進むという見方もあります。今は不足している看護師ですが、一転して余剰時代が来るのでしょうか。
こうした看護師を取り巻く状況に目を向けながら、「看護の日」には改めて看護師に感謝していいのではないでしょうか。
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