LIXILのお家騒動に見る「プロ経営者」の価値と株価
LIMO / 2019年7月2日 20時40分
LIXILのお家騒動に見る「プロ経営者」の価値と株価
2019年6月25日のLIXILグループの株主総会にて、前CEO瀬戸欣哉氏のCEO復帰が決定されました。他の取締役も瀬戸氏らの提案に沿って選任され、数年にわたり続いた創業一族と、その雇った「プロ経営者」との争いが、瀬戸氏側が支持される形でいったん区切りをつけることとなりました。
この決定により、翌6月26日のLIXILグループの株価は16%上昇と急騰。瀬戸氏のCEO復帰、そして経営陣の争いによる事業停滞の懸念が和らいだことが好感されたようです。
瀬戸氏は株式市場から評判が良い?
瀬戸氏は東京大学を卒業後、住友商事に入社。その後、社内ベンチャーで工具通販のMonotaROを立ち上げ、社長として爆発的な成長を牽引しました。MontoraRoは2019年6月25日現在で6,400億円もの時価総額を持つ工具通販最大手となっています。東大在学中は体育会系ボクシング部に在籍するなど、まさに文武両道のビジネスマンです。
そのMonotaROでの実績を買われ、業績低迷に苦しんでいたLIXILにヘッドハンティングされ、2016年6月にCEOとして招聘されました。瀬戸氏のCEO就任が報道されて以来、株価は約1年半にわたり上昇を続けたことを鑑みると、MonotaROを成功させた実績もあって株式市場から高い期待を寄せられている経営者だとみなすことができるでしょう。
今回のLIXILグループの株価急騰も、お家騒動が収束に向かい、瀬戸氏がCEOとして今まで以上にスムーズに経営改革を行える環境になるという株式市場からの期待が要因と言えます。
しかしながら、瀬戸氏のCEO就任早々、LIXILグループ傘下のイタリア建材大手パルマスティーリザ社の巨額損失が発生し(この損失責任については創業一族側と瀬戸氏側で対立)、実績十分の瀬戸氏もLIXILグループでは目立った成果を残したとは言い難い状況です。
経営陣の優劣は株価に大きな影響力を持つ
株価は将来の業績がどうなるかを予測して動きます。将来、業績が上向きそうだと考えられれば、株の買い手は増えて値上がりします。逆に今以上に良くなることは難しい、悪化しそうだと考えられれば売られます。
そして会社の業績の命運を握るのは、企業活動のかじ取りを行う経営者です。経営者が優秀だと市場から判断されれば、現時点での業績以上に株が買われる材料となります。
たとえば、カルビーの元CEOである松本晃氏は、2009年にCEOに着任して以来、下降していた同社の業績をV字回復させた人物で、市場からの評価が高いプロ経営者です。
2018年に退任が取引時間中に発表されると、カルビーの株式に売りが殺到し、株価が9%急落する事態となりました。松本氏の経営手腕が市場から高く評価され、それがプレミアム(割増価格)となって株価に反映されていたと考えられます。
その後松本氏は2018年に赤字に苦しむライザップ社のCOO(最高執行責任者)として招聘され、その翌日には松本氏の経営手腕に対する期待から、ライザップ株が一時12%高まで急騰しました。
しかしその半年後にCOOを退任、さらに半年後の2019年6月にはライザップ社の経営から離れることとなりました。ライザップ社が買収した子会社の赤字が続く中での退任となり、カルビー社の経営再建ほどの成果が残せたとは言い難いでしょう。
松本氏以外にもソフトバンクグループの孫正義氏、日本電産の永守重信氏、ファーストリテイリングの柳井正氏、ニトリの似鳥昭雄氏など、実績十分な経営者(これら4人は創業者でもある)が指揮をとる企業は、株価にプレミアムが反映されていると考えられます。
瀬戸CEOの復帰は市場から好意的に受け止められましたが、本当にLIXILの業績を立て直せるかはまだわかりません。今後、瀬戸CEOが市場の高い期待に応えられるか見ものです。
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