中高年社員の再就職を進めるのに有効な副業解禁、企業にもメリットあり?
LIMO / 2019年7月21日 20時15分

中高年社員の再就職を進めるのに有効な副業解禁、企業にもメリットあり?
副業解禁の流れは、中高年社員の再就職を考えると望ましい、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は考えています。
働き方改革関連法が副業を推進
今年度から働き方関連法が施行されていますが、その中に副業の普及を推進する内容が含まれています。
これを受け、副業を認める企業が出始めていますが、今秋からはメガバンクであるみずほ銀行も副業を解禁すると伝えられていますので、この動きはかなり広がるかもしれませんね。
建前としては、「働き盛りの社員に副業をさせて視野を広げさせ、本業に生かさせる」ということなのでしょうが、これは容易なことではないでしょう。
企業としては、副業先に気に入られて引き抜かれては困りますし、企業秘密を副業先で漏らされても困りますから、本音では歓迎しないケースも多そうです。
一方、本人としても、本業が忙しくて副業まで手が回らない、という場合がほとんどでしょう。ただでさえ働きすぎが問題となっている時に、副業でさらに働くというのは、現実的でない場合が多いでしょう。
したがって、実際に副業をするのは「サラリーマンとしての先が見えた中高年」が中心になると思われます。
先が見えたサラリーマンには転職先を探すインセンティブあり
「定年まで年功序列賃金で働いて、定年後は年金生活を送る」というサラリーマンは、転職先を探すインセンティブがないので、副業のインセンティブは大きくないでしょう。せいぜい小遣い稼ぎといったことでしょうから。
しかし、人生100年時代を迎えて「70歳まで現役で働きたい、年金受取開始を70歳まで待って老後の年金受取額を42%増やしたい」というサラリーマンが増えると、転職先を探すために副業するというインセンティブが高まります。
企業が70歳まで雇ってくれるならば、雇ってもらうという選択肢もあるでしょうが、70歳までは雇ってくれない企業も多いでしょう。
雇ってくれる場合であっても、企業が役職定年を設けたり、定年後再雇用はするけれども以前の部下にお仕えするポストしか与えなかったりするのであれば、70歳までその企業にしがみつくよりも転職したいと考えるサラリーマンも多いでしょう。
企業としても、出世競争の最中のサラリーマンと比べ、先が見えてしまったサラリーマンは勤労意欲が乏しい場合も多いでしょうから、積極的に副業してもらって人件費を削減し、運がよければ転職してもらう、という方が望ましいでしょう。
また、政府は70歳までの就業機会確保を企業の努力義務として定める方針です。そうなれば、「先が見えた中高年社員を70歳まで自社で雇うよりも、副業等により転職先を探してもらった方が良い」と考える企業は増えるでしょう。
したがって、企業としても先が見えた中高年サラリーマンには副業を積極的に勧めることになるかもしれません。特に「窓際族」には熱心に勧めることになるはずですね(笑)。
副業後の転職はリスクが小さい
転職にはリスクが伴います。転職する人も受け入れる企業も、相手のことをよく知った上で決めることができれば、リスクは大幅に軽減されるでしょう。そのためには、面接を重ねるよりも、実際に働いてみることが役立つはずです。
大企業で経理の仕事をしてきた人が、転職後にノウハウを生かして中小企業の経理の仕事をするならば、お互いにとってメリットは大きいでしょう。その際に、人間関係や仕事内容等々に問題ないか否かを確認できるなら、素晴らしいことです。
転職ではなく、起業にも副業の経験は役に立つはずです。たとえば定年後に喫茶店を開きたいのであれば、副業として喫茶店で働いてみる経験は、大いに役に立つはずです。
実際に働いてみなければ、どんな準備が必要なのか分かりませんし、仕事が自分に向いているか否かもわかりません。客が来なかった時に倒産の恐怖に耐えられるか否か、といった気持ちの問題も、体験してみた方が良いに違いありません。
そして、喫茶店のマニュアルに書いてあることは、過去の多くの失敗の経験をもとに決められたノウハウの塊でしょうから、「失敗は成功の源」を容易に入手することができるわけです。
転職先では神妙に
余談ですが、転職先では頭を低くしていることが重要です。企業人として年功序列の世界に長年住んでいると、年長者は意識しなくても態度が大きくなる場合が少なくないでしょう。
転職先で大きな態度をとると、「迷惑な年寄り」と認識されてしまいます。ただでさえ、大企業に勤めていた人が中小企業に馴染むのは大変なのですから、慎重に行きたいものです。
今までの経験を伝える時にも、「郷に入りては郷に従え」を基本として、控えめに提案する、といったことを心がける必要がありそうですね。
本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。
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