「いざとなったら体を売ればいい」 20代貧困女子のリアル
LIMO / 2019年7月21日 10時45分

「いざとなったら体を売ればいい」 20代貧困女子のリアル
”自己責任”で切り捨てられる人々
6月17日、とあるツイートが話題になりました。それは、「お金持ちになりたいわけでもすごく欲しいものがあるわけでもなくて、50円や100円のコーヒーを買うのに躊躇する生活をやめたい。若者の貧困はそういうレベル」という内容。衣食住にすら困っているのが若年層の貧困のリアルだとするこのツイートは、多くの人の共感を集めていました。
筆者は大学卒業後、大学生の時からやっていた演劇やコントを続けたいと思い、就職をせずにフリーターをしていました。若者の貧困と言うと、大学の奨学金返済の負担や将来の年金への不安が多く取り沙汰されます。しかし、筆者が経験した“若者の貧困”はもう少し違ったものでした。
少子化による売り手市場の現状も若者の貧困化の原因か
どこにでもいる普通の大学生が大学を除籍され、住まいを失い、あっという間に貧困から抜け出せなくなるリアルを描いた映画『東京難民』。原作の小説を書いた福澤徹三さんは、専門学校で講師をしていた際に学生たちが何も考えずに卒業後フリーターとなり、貧困に陥っていく様子を見てこの小説を書いたと言います。
大学を卒業後、正社員にならずにフリーターになる理由は人それぞれです。就活がうまくいかなかったり何かしらの試験に落ちてしまったり、はたまた新卒で入社してもすぐに辞めてしまったりといったことも。
一方で今は少子化による“売り手市場”のため、「働こうと思ったらいつでも仕事はある」状態であることも理由のひとつでしょう。しかし、いくらでも仕事はあるけれども賃金や業務内容の格差は大きく、「働いていても、いつまで経っても生活が苦しい」という人は少なくありません。
また「どうせ老後は年金なんてもらえないかもしれない」という将来に対する不安を通り越した諦めも多くの若者が持っているように思います。実際に筆者もフリーター時は国民年金保険料を支払わず、保険料免除手続きを行って納付を猶予してもらっていました。筆者の周囲のフリーターの中には、こうした手続きを行わず年金保険料をずっと支払っていない人も多くいました。
「本当にお金に困ったら体を売れば」と言われた
筆者が「就職しない」と決めて定職に就かなかったことの最たる理由は、夢を追ったり会社に縛られない生き方を選択することの表面的な部分しか見えていなかったからです。貧乏生活をしながらも夢を追う若い女の子の姿がテレビコンテンツとして消費されるほど、その生き方は世間的に肯定されていると思い込んでいた節があったと思います。
しかし、“夢を追うために貧乏をすること”が美談とされるのは、その経験を経て成功した人が自身の過去を振り返った時だけであることを筆者は理解していませんでした。
親からの仕送りもなくフリーターで月十数万円しか収入がない中では、電車賃を浮かすために2~3駅であれば徒歩を選択したり、もやしや玉ねぎなどコスパの良い野菜と乾麺を茹でただけの食生活で食費を削ったりといった生活を当たり前のように送っていました。急性胃腸炎になった時も入院してお金がかかるのが嫌だったので、市販薬を飲み家で悶絶しながらしのいだことを覚えています。
また生活が困窮していることを知っている人からは、「本当にお金に困ったら女の子は体を売れるから大丈夫」「早くお金持ちの男性と結婚しなきゃね」といった言葉も多く言われました。これは特に、アルバイト先の飲み屋で男性から当たり前のように言われた言葉でした。
「貧困は自己責任」から逃げられないのは若者だけではない
大学卒業後に就職しなかったのが悪い。若い女性が貧困から抜け出すためには、体を売る仕事かお金持ちの男性との結婚しかない。当時はこう言われることに対して「いま貧乏なのは就職をせずに夢を追った自分のせいだ」と、ずっと自己責任を感じていました。
しかし同時に、大学在学中の就職活動によってその後の人生が決まってしまう怖さも否めません。リーマンショックの影響で就活に失敗し、就職浪人をしていた何人かの友人が「人生もう終わった」と切羽詰まった表情をしていたことを思い出します。何かにつけて「自己責任」と言われ続けてきた平成生まれの筆者世代にとって、就活の失敗さえも自己責任だと追い詰められています。
また貧困女性の一種の”セーフティネット”として、体を売る仕事が当たり前のように機能していることも疑問に思わなくてはいけないでしょう。体を売る仕事はそもそも日本では非合法であり、心身ともにさまざまなリスクがつきまとうものです。
仕事をしていないのは自分のせい。仕事は見つけられるけれども、普通に生活していけるレベルに達しない。それは若者だけでなく、出産や子育てを経て再就職しようとする女性や現在引きこもりの増加が取り沙汰されるロスジェネ世代も抱えている感覚ではないでしょうか。
雇用は拡大しているものの、“最低限の生活をしていけるレベル”の収入がない人が増えているのが現在の貧困の最たる問題。普通に仕事をして当たり前の生活ができる世の中にするには、貧困を“自己責任”と単純に片付けないことから始める必要があるのではないかと、筆者自身の経験からは思います。
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