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日本のマスコミ、評論家、企業が揃って悲観的な情報を流す理由

LIMO / 2019年8月4日 20時15分

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日本のマスコミ、評論家、企業が揃って悲観的な情報を流す理由

楽観的な情報より悲観的な情報の方が世の中に拡まりやすいので注意が必要だ、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は説きます。

儲かっている企業は控えめ

円安になると輸出企業は儲かりますが、静かにしています。「儲かった」とはしゃぐと労働組合が賃上げを、下請け部品メーカーが値上げを要求してきますし、下手をすると税務署も来るかもしれませんから。

一方、輸入原材料を多く使う企業は、「円安でコストが上がって大変だ」と大声を出します。「従業員にはボーナスを諦めてほしい。下請けには値下げをお願いしたい。政府には支援をお願いしたい」というわけですね。

マスコミも、取材に応じてくれそうな輸入企業を取材しますから、マスコミ報道を見ていると「日本経済は円安で苦しいのだ」と勘違いをしてしまうかもしれません。

翌年、円高になると、今度は輸入企業が黙る一方で輸出企業が大きな声を出すので、やはり「日本経済は円高で苦しいのだ」と勘違いをしてしまいそうです。

日本は、輸出と輸入が概ね同額なので、輸出企業が苦しい分だけ輸入企業が儲かっているはずで、円高でも円安でもそれほど影響を受けないはずなのですが。

マスコミは悲観的な報道を好む

マスコミは、悲観的な報道を好みます。それは、顧客が悲観的な情報を喜んで受け取るからです。「株価暴落の可能性は小」と書くより「株価暴落の可能性に注意」と書く方が売れるので、そう報道されるわけです。

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は3カ月ごとに運用成績を発表するわけですが、儲かった時は小さく報道され、損した時は大きく報道されます。

そこで、国民の中には「GPIFは運用で損をしているから、俺たちの老後の年金が心配だ」と考えている人もいるようですが、実際にはGPIFは大いに儲かっているのです。株価がこれだけ上昇しているのですから、当然のことですが。

筆者はマスコミを批判したいとは思いません。製品を売りたいと考えるのは、誰でも同じことですから。

一般企業のコマーシャルを見たときに、「過大広告スレスレに違いない」と身構えるのと同様に、マスコミ報道を見たら「悲観バイアスがかかっているに違いない」と割り引いて受け取るのが「賢い消費者」だと心しましょう。

余談ですが、マスコミの使命は政府を監視することであるのに、マスコミの一部には「マスコミの使命は政府を批判することだ」と考えている人もいるようです。

そうした人は、政府に都合の良い報道はしないでしょうから、「景気が悪化しそうだ」「GPIFが損をしたので我々の老後が苦しくなった」と書きたがるのかもしれませんね。

評論家は悲観論を述べたがる

評論家は、楽観論より悲観論を述べた方が得です。「特に問題ありません」というより「AやBという問題点があり、CやDというリスクもある」という方が賢く見えますし、面白い話ができますから。

「幸せな家庭は一様に幸せであるが、不幸な家庭はそれぞれに不幸である」というのは文豪トルストイの文章ですが、「順調な経済は一様に順調であるが、順調でない経済は、それぞれに問題やリスクを抱えている」わけで、いくらでも面白い話ができるのです。

加えて、楽観論者は予測が外れて景気が悪化すると皆に恨まれます。皆が不愉快ですから。しかし、悲観論者は予測が外れて景気が好転しても誰にも恨まれません。皆が幸せですから(笑)。

不安を煽って商品を売りつける人がいる

世の中には、不安を煽って商売をしている人が大勢います。「あなたは悪霊が取り憑いているから除霊の壺を買いなさい」という感じです。

「老後資産が不足しているなら投資して儲けないと」と言って不安を煽って変な投資商品を売りつける輩が多いようなので、気をつけましょう。

もちろん、変ではない真っ当な金融商品を売りつける金融機関も多いようですが、いずれも我々を不安にさせることには変わりありませんから。

楽観論者の多くは淘汰された

今の日本に特有の事情として、楽観論者の多くがバブル崩壊後の長期低迷期に淘汰されてしまい、悲観論者しか表舞台に残っていない、ということもありそうです。

「景気は良くなります」と言っていた評論家は、見通しが外れつづけたので呼ばれないくなったでしょう。「景気が良くなるので工場を建てましょう」と言っていたサラリーマンは左遷されてしまったでしょう。

そこで、表舞台に立っている人は悲観的な人ばかりになってしまった、というわけですね。

サングラスをかけて明るさを観察中

上記のようなことを考えると、我々が普段接している情報は、真実よりも悲観的なものが多いということがわかります。我々が真実だと思って受け取っている情報は、じつは「サングラスをかけて部屋の様子を観察した結果」なのです。

そうだとすれば、「サングラスを通さないで観察したら、この部屋はどれくらい明るいのだろう」と考えてみる必要があるわけですね。

筆者は楽観派だと言われています。世の中の評論家の中で楽観的であることは自他共に認めます。しかし、もしかすると、筆者の発信が「サングラスをかけずに世の中を見た時の姿」なのかもしれません。

読者がそう思わないとすれば、それは「読者が自分のかけているサングラスの存在に気づいていないから」なのかもしれませんよ。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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