どうなる日本競馬。JRAの売上高はピーク時の7割、今後の拡販ターゲットは?
LIMO / 2019年9月13日 18時10分
どうなる日本競馬。JRAの売上高はピーク時の7割、今後の拡販ターゲットは?
毎年9月16日は「競馬の日」です。これは、1954年(昭和29年)に日本中央競馬会(JRA)が農林省(現在の農林水産省)の監督の下で発足したことに由来します。
公営ギャンブルの中で圧倒的な売上規模を誇る中央競馬
その中央競馬は、公営競技(公営ギャンブル)の中で最大規模を誇ります。以下は2018年度の売上実績(カッコ内は対前年比)ですが、2番目の規模である競艇の約2倍という圧倒的なトップなのです。
また、前年比売上増は2018年で7年連続となっています(中央競馬の売上高は勝馬投票券による収入を用いているため、財務諸表上の売上高とは若干の差異があります)。
中央競馬:2兆7,950億円(+1.7%増)
競艇:1兆3,728億円(+10.9%増)
競輪:6,541億円(+2.2%増)
地方競馬:6,034億円(+9.2%増)
オートレース:704億円(+6.8%増)
中央競馬以外の公営ギャンブルの売上も近年増加傾向にありますが、ピーク時には遠く及ばないのが実情です。
多くの公営ギャンブルが1990~1997年にピークの売上を記録しましたが、近年の売上回復が著しい競艇と地方競馬がいずれもピーク時の約6割程度、競輪は約3分の1、オートレースに至っては約2割程度(つまり▲8割減)まで減少しています。
売上の大幅減退という意味では、中央競馬も例外ではありませんが、他に比べれば大健闘しています。
中央競馬の売上のピークは1997年の約4兆円でしたから、2018年度実績はピーク時の約70%水準になります。大幅減少に変わりはありませんが、他の公営競技のような半減には陥っていません。
ピーク時の7割水準を維持していること自体、競馬に対する底堅い人気を垣間見ることができるでしょう。
また、公営競技である競馬は、原則として、1)勝馬投票券による収入(=ほぼ売上高に近い)の10%、2)最終利益の50%を国庫納付金として納入し、国の一般財源(国家予算)に繰り入れられています。
この国庫納付金は、1997年の4,663億円をピークに減に転じ、ここ数年は3,000億円未満が続いていました。
しかし、2017年度は久々に3,000億円を上回り、2018年度も3,083億円を計上しています。中央競馬を盛り上げることは、一般財源収入の観点からも重要だと言えましょう。
競馬ファンの裾野を広げてきたJRA、今後のターゲットは?
JRAは、まだ日本がバブル経済期だった1980年代後半から、それまでの“競馬=中高年男性のギャンブル”という暗いイメージを払拭するために、人気タレント(注:成人。以下同)を起用した広告宣伝、テレビ放送枠の拡大、人気騎手の育成などに注力してきました。
そこに、オグリキャップを始めとする全世代に受け入れられた数多くの人気馬の登場もあり、前述した1997年には空前絶後の売上を記録したのです。
JRAはその後も、勝馬投票券の多様化や、アイドルタレントを起用したテレビ番組の放映など、様々な“企業努力”をしていると考えられます。また、早くからインターネットによる勝馬投票券の販売に取り組んだことも見逃せません。
しかし、今後は少子化の影響がジワリジワリと出てくるでしょう。何らかの新たな対策を講じる必要があるのは明白です。
たとえば、増加の一途を辿る訪日外国人向けの宣伝広報活動を強化するのも一考に値しましょう。諸外国でも競馬が盛んな国もありますが、アジアを中心にまだ拡大余地は大きいと見られます。
特に、公営ギャンブルが事実上禁止となっている中国では、日本の競馬に対する関心は高いと言われています。
また、18歳以上に選挙権が認められたことから、法律上の「成人」が18歳以上になる日が遠くないかもしれません。日本の若年層が熱中しているモバイルゲームとのタイアップも有効な策と考えられます(注:既に一部実施されている可能性があります)。
伝統ある競馬を“文化”として後世に残す
競馬は、古代ローマ時代にその起源を遡ることができる歴史ある競技です。日本でも約150年前から行われている”文化”とも言えます(注:開始時期には諸説あり)。伝統ある競馬を良い意味で後世に残すよう、競馬の日に改めて考えるのもいいかもしれません。
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