なぜ惹かれるの?「禁断の愛」を扱った7月期ドラマに見る、魅力と深いメッセージ

LIMO / 2019年9月29日 9時45分

写真

なぜ惹かれるの?「禁断の愛」を扱った7月期ドラマに見る、魅力と深いメッセージ

ドラマや映画を観るとき、「禁断の愛」という言葉に惹きつけられる視聴者は多いでしょう。実際、よく目にする文言ではないでしょうか。しかし「禁断の愛」と一言にいっても不倫や年の差、兄妹、教師と生徒など形はさまざまです。

7月から9月に放送された連続ドラマでは、少年犯罪を絡めた遠藤憲一さん主演の『それぞれの断崖』(東海テレビ)のほかに、不倫を扱った『偽装不倫』(日本テレビ)、夫が3人の妻を”シェア”するという斬新な設定を展開した『私、旦那をシェアしてた』(読売テレビ)がありました。

今回は、この3作品の中でも最も「禁断の愛」をストレートに描いたといえるドラマ『それぞれの断崖』を中心に、なぜ視聴者はこのようなテーマに惹かれるのか、現実において禁忌の恋愛をなぜフィクションで描くのか、考えてみたいと思います。

とある少年犯罪の被害者の父・加害者の母が恋愛に発展

「オトナの土ドラ」枠で放送されたドラマ『それぞれの断崖』(全8話)。

主人公・恭一郎(遠藤憲一さん)の息子が、親しくしていた同級生に殺害される事件が起きます。加害少年と、その母親にも強い怒りと憎しみを持っていた恭一郎でしたが、ある時、加害少年・満(清水大登)の母・はつみ(田中美里さん)が働く店に立ち寄り、自身の素性を偽って接するうちに、はつみの儚げな美しさに惹かれます。

恭一郎は加害少年の母であると知っていながら、放っておくことができなくなるのです。事情を知らずにいたはつみも、恭一郎に次第に心を寄せるようになり、恋愛に発展します。

本作で指摘するべきは、加害少年の母であるはつみが、事件後も同じ場所に住み続け、恭一郎をはじめとした被害者家族と簡単に接触できる距離で生活していたことです。

また、加害少年・満の担当弁護士も、事件後の被害者家族と加害者の母に面識があると知っていながら、現実的な対応を取らなかったことも問題だといえるでしょう。

フィクションということを踏まえて、これらの問題を抜きにしても、被害者と加害者であるという立場を越えて恋愛に発展するほどの決定的な出来事や、人間的魅力は描かれていなかったと言って良いでしょう。

加害者側であるはつみには夫がおらず、加害少年以外には子どももいませんが、恭一郎には妻がいて、娘が2人います。家庭の状況も考えると、恭一郎がはつみに惹かれた理由が不十分でした。視聴者がみて、ストーリー上納得できるような出来事がほしかったところです。

「禁断の愛」があったからこそ、見えた真実

しかし、一見理解しがたい「禁断の愛」を描いたことで可能にした、少年犯罪への扱い方があったことも事実です。

恭一郎とはつみに関係が構築されたことで、被害者家族が、加害少年の満に面会する機会を得ることになります。

満は初めて、それまで明かしていなかった恭一郎の息子を殺した理由を口にしました。また、恭一郎とはつみが関係を持つことで、恭一郎は満の今後を知り、誠実に生き、償い続けるのかを見届けることも可能にしています。

「禁断の愛」を描いたことが、事実が表に出ることがなく、不透明なままになりがちな少年犯罪の真相を明かし、被害者家族に対し、加害少年本人の口から事件を説明することを可能にしました。

フィクションという枠を越えるものではありませんが、作品として一定の意義を見出したと考えられます。これまで起きてきた数々の事実に対して、フィクションが今できる最大の役割を担ったといえるでしょう。

さらに、主人公の恭一郎を演じた遠藤憲一さん、そして非常に複雑な役であった加害少年の満を演じた清水大登さんのお芝居も秀逸でした。回を増すごとに進化するふたりの”芝居合戦”ともいえる役での交わりが、視聴者を強く惹きつけた要因でしょう。

「恭一郎が満にどう接するのか」、「少年院を経て満はどう変化しているのか」、役柄に対する興味関心を失わずにいたのは、ひとえにふたりの演技あってのことでした。

エンタメ要素の強い「禁断の愛」にも学びはある

一方で、主人公の鐘子が、「結婚している」と嘘をついたことで始まった恋愛を描いた『偽装不倫』や、事実婚状態の”夫”が亡くなったことであぶり出された3人の妻を描いた『私、旦那をシェアしてた』は「禁断の愛」といえどエンターテインメント要素の強いドラマです。

『偽装不倫』では、嘘をつくことで素直になって自分らしい恋愛ができるようになった女性の心の内を描き、『私、旦那をシェアしてた』は、事実婚状態の3人の妻たちを残して亡くなった夫の素性を探ることで、シングルマザーとなった3人の女性たちがその後の生き方を考え直す内容になっていました。

「禁断の愛」という観点においてもエンタメ要素の強い2作品でしたが、共感できるポイントがあり、学ぶべき行動があったといえます。

「禁断の愛」は、フィクションだと知っているからこそ純粋に作品を楽しめるテーマであると同時に、現実に起こり得ないこと、あるいは起こるべきではないことを擬似的に体感できるようにと、作り手が作品により強いメッセージを込めているジャンルなのかもしれません。

しかし、現実的ではない「禁断の愛」をテーマにした作品を質の良いものに仕上げ、成功させるためには、緻密なストーリーの構成や、画的なリアリティ、役者の演技力などを欠くことはできないでしょう。その点では、他のどの作品とも共通で、その評価は我々視聴者に委ねられているはずです。

視聴者として気づきを得る姿勢を忘れずに、「憧れる!」、「理不尽だ!」、「不自然だ!」と自由な感想を持つのもまた「禁断の愛」をテーマにした作品の魅力のひとつです。

【参考】
『それぞれの断崖(https://www.tokai-tv.com/dangai/)』東海テレビ
『偽装不倫(https://www.ntv.co.jp/gisouhurin/)』日本テレビ
『私、旦那をシェアしてた(https://www.ytv.co.jp/danshare/)』読売テレビ・日本テレビ系

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング