高学歴でもフリーターになってしまう理由とは? 正社員化は狭き門という現実
LIMO / 2019年10月29日 20時15分

高学歴でもフリーターになってしまう理由とは? 正社員化は狭き門という現実
かつては大学や大学院を卒業したら、定職について働くことがごく普通のことでした。しかし、社会や経済状況の変化により、最近ではそればかりではなくなってきているようです。最近のフリーター・転職事情を見ていきます。
高学歴フリーターが増加する厳しい社会環境
2017年10月20日に独立行政法人 労働政策研究・研修機構(以下、労働政研)から発表された「フリーター経験者(注)の高学歴化と正社員化減少-「第4回 若者のワークスタイル調査-」では、フリーターの現状を知ることができます。
注:本調査での「フリーター経験者」は、パート・アルバイト経験者(学生時代のアルバイトを除く)と定義されている。
この調査では、2001年にはフリーター経験者中の高卒者の割合が約4割、大学・大学院卒者約1割であったのが、2016年には大学・大学院卒者が約4割を占めるようになり、高卒者は約2割となっています。ここからは、高学歴のフリーターが急激に増えている現状が見えてきます。
また、労働政研はフリーターを「夢追求型」「モラトリアム型」「やむを得ず型」「ステップアップ型」の4つに分類していますが、それぞれの定義は以下の通りです。
夢追求型…明確な目標を持っている人
モラトリアム型…フリーターになった当初に明確な職業展望を持っていなかった人
やむを得ず型…本人の意欲とは別の、環境要因によるフリーター化した人
ステップアップ型…資格取得などのため一時的にアルバイトなどで生計を立てる人
25-29歳層の男性で見ると、2016年の結果で「やむを得ず型」が全体に占める比率は35%です。5年前に調査が行われた2011年の調査と比べると、比率が増加しているのは「やむを得ず型」(30%→35%)と「ステップアップ型」(23%→29%)。低下しているのは「モラトリアム型」(28%→25%)と「夢追求型」(19%→12%)という結果でした。
一方、25-29歳層の女性も、男性と同様「やむを得ず型」の35%が一番多いという結果でした。また、2011年対比で比率が増加しているのは、「やむを得ず型」(32%→35%)、「ステップアップ型」(21%→27%)、そして「夢追求型」(12%→15%)です。一方、「モラトリアム型」(35%→24%)は大きく減っています。
「本人の意欲とは別の、環境要因によるフリーター化」という「やむを得ず型」は、十分な収入を得られず貧困に陥り、結婚したくてもできないという状況につながることも少なくないでしょう。
さらに、「フリーターから正社員化への状況」によると、25-29歳層で正社員になろうとしたものの、実際に正社員になれた割合は、男性で2001年には76%だったものが2016年には62%へ、女性は2001年の51%から2016年には41%へと、男女ともに大幅に減少しています。
一度フリーターになってしまってから正社員を目指すのは、今の日本では容易ではないと言えるでしょう。
会社をやめる理由の第1位は?
上記の調査では、離学直後に就職し、その後に離職した人の理由についても調べられています。
それによると、男女の25-29歳層いずれでも「労働時間(残業を含む)が長い」が理由の1位でした。一方、2001年の調査では、賃金や労働時間など労働条件の理由は男性で2位、女性では4位でした。
ちなみに、2001年調査での離職理由1位は、男性「仕事が自分に合わない、つまらない」、女性「健康上、家庭の事情・結婚・出産」となっています。
昨今は働き方改革により、世間の流れとしては残業を減らす方向にあります。仕事よりもプライベートに重きを置きたいという気持ちから残業をネガティブに捉えがちなのかもしれませんし、残業が少なくなったとしても日中の仕事負担や仕事の持ち帰りなどに嫌気が差しているのかもしれません。
会社を辞めることが必ずしも悪いわけではありませんが、安易な気持ちで無計画に離職してしまい、後から後悔がないように気をつけたいものです。
転職で収入アップを狙える世代は?
では、転職には希望が持てるのでしょうか? 厚生労働省の「平成30年雇用動向調査結果の概要」によると、2018年1月1日時点の常用労働者数は4970万人おり、そのうち転職入職者は495万5000人と約10%という結果でした。この転職入職者で、前職よりも収入が上がった人は37%、下がった人は34%、変わらない人は27%となっています。
年代別では、「19歳以下」や「20~24歳」の若い世代では、約半数の人が転職することにより収入を増やすことができており、それ以降「45歳〜49歳」までは増加の方が減少を上回っています。
一方「50~54歳」以降は転職による収入の減少が増加を上回っており、「60~64歳」の定年退職後の再就職だと思われる年代では7割以上で収入が減少しています。この結果から見ると、転職で年収アップを狙うのであればなるべく若いうちに行動に移すほうがよさそうです。
おわりに
働き方が多様化し、正社員にこだわらない人も増えてきています。しかし、フリーターになることで貧困に陥り、自分の意思に反して、結婚できない、子供を産めないという将来が待っているかもしれません。特に日本は、残念なことですが一度正社員を辞めたら簡単には戻れない環境です。
身体や精神が病むような環境で無理に働き続けるのはおすすめできませんが、衝動的に辞めてしまうのではなく、将来に向けた選択肢についてじっくり考えたうえで次のステップに進むことが大切ではないでしょうか。
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