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貧困、DVに悩む「ひとり親家庭」をホントは救えない!? 国や自治体の制度・事業の残念な面とは

LIMO / 2019年11月13日 20時15分

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貧困、DVに悩む「ひとり親家庭」をホントは救えない!? 国や自治体の制度・事業の残念な面とは

昔と比べると世間の風当たりもゆるやかになり、ひとり親家庭が生活しやすくなったと言われる現在は、さまざまなセーフティネットが確立されています。しかし、現行のままではDVなどから逃れたい人や収入の少ないひとり親にとって、利用しづらい内容となっているものが多いのも事実です。

今回は、自身もシングルマザーである筆者が、「現状のままでは、ひとり親家庭を救えない」と残念に感じた国や自治体の制度を取り上げます。

はじめに

本記事のタイトルや内容を読み、「どこまで国のお金をアテにするつもり?」という意見を持たれることもあるかと思います。しかし、セーフティネットが機能せず、貧困の悪循環を繰り返す世の中になれば、思いやりや常識という概念が育ちにくくなり、犯罪率の上昇につながる可能性も高くなることでしょう。

本稿では、貧困の悪循環を断ち切るために政府がせっかく確立した制度であるにもかかわらず、ひとり親などが利用しづらい実情について焦点を絞ってお伝えしているものとお考えいただけると幸いです。

また、ひとり親を支援するための制度のなかには、都道府県によって内容や名称が違っていたり、実施されていない自治体が存在する場合もあります。そこで、筆者が住んでいる地域の制度を例に挙げ、筆者を含むシングル家庭の人たちが「救いになっていない」と感じた制度や改善案について綴っていきたいと思います。

児童扶養手当

ひとり親の収入や扶養の人数に応じて手当額が決定され、支給される制度です。具体的には現状、児童扶養手当が全額支給される場合で子供が1人の場合、月額42,910円となっています。

子供が小さいと、発熱時の保育問題や保育時間が短いなどの理由で正社員として働くことが難しいため、養育費をもらっていない「ひとり親」の生活の支えとなっている制度でもあります。

この制度が残念だと感じる部分は、手当額を決定するために対象となる所得が最長で2年ほど前のものになることです。たとえば、令和2年10月分の児童扶養手当を申請する場合、平成30年1月1日~12月31日までの所得で判断されるのです。

また、支給日は2カ月に1度(令和元年11月より)となっているため、申請する月によっては、支給されるまでに2カ月以上かかることも残念に感じます。

仮に配偶者の経営する会社で働いていた場合、DVに耐え切れず着の身着のまま飛び出したとしたら、急に収入が断たれるだけでなく児童扶養手当も支給されず困窮してしまうでしょう。

また、身寄りのない人や、たとえ身寄りがあってもさまざまな理由で親族に頼れない人たちが、救いを求められずに貧困生活から脱出できないというケースも少なくありません。若者や低所得による貧困問題、貧困の悪循環についての討論でもよく取り上げられているテーマでもあるため、何らかの改善策が必要なのではないかと思います。

たとえば、DVで家を飛び出してきたような場合には、過去の年収にかかわらず児童扶養手当の支給が必要な場合もあるのではないかと思います。また、初回は支給額を日割り計算して早い段階で支給するなどの柔軟な対応を行うことで、今よりもさらに強力なセーフティネットになるのではないかと思うのです。

ひとり親家庭自立支援教育訓練給付金

児童扶養手当の支給要件と同じ所得水準にあるひとり親が、厚生労働大臣の指定する講座を受講すると、受講費の60%相当の額を支給してくれるという手厚い制度です。ただし、講座費用が1万2千円以下の場合は支給されず、20万円を超える講座の場合は20万円を上限として支給されます。

また、ハローワークで一般教育給付金の受給資格がある場合には、一般教育給付金の支給額を差し引いた金額を支給。一般教育給付金の受給資格がない場合でも、「ひとり親家庭自立支援教育訓練給付金」から規定の支給額が全額支払われます。

講座内容は、介護士や看護師、司法書士やIT関連、キャリアコンサルタント、ファイナンシャルプランナーなど、就業や転職に即戦力となるものが多く魅力的です。

ただ残念なのは、この給付金が支払われるのが講座終了後であるということです。

厚生労働省が平成29年12月に公表した「平成28年度 全国ひとり親世帯等調査結果の概要(https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11923000-Kodomokateikyoku-Kateifukishika/0000188136.pdf)」によると、ひとり親家庭のうち、母親のみで子供を養育する家庭では、母親の就労収入の平均は年間200万円と低くなっています。

さらに、預貯金額が50万円未満であるシングルマザー家庭が約半数であることを考えると、何十万という学費を貯めてから講座を受講するというのは、現実的には難しいと思われます。

預貯金のある人や親族からお金を借りられる人であれば、受講が可能でしょう。しかし、講座を受けるために貸付を受けたりクレジットやキャッシングを行ったりした場合、受講が終わるまでは就労条件などを変更することが難しくなります。

また、今までと変わることのない毎月の生活費に月々の返済がプラスされるというのは、暮らしていくのがやっとのひとり親家庭にとっては厳しいものがあります。

さらに、正社員ではない契約社員やパートなどの場合、体調が悪いなどの理由で仕事を休めば月々の返済が滞ってしまう可能性も高いでしょう。そのため、大抵の場合はこうしたリスクを考慮して受講を先送りにするか、本来希望していた講座とは違う数万円程度で受講可能な講座を選択したりするようです。

もし、離職したときに通えるハローワークなどの指定講座のように、支払う金額が教科書代程度であれば、収入の少ないひとり親でも利用しやすくなるのではないかと思います。さらに講座を受講するひとり親が増えることで、就業率や年収、納税額がアップし、生活水準の向上が子供への学習費用の捻出などにもつながるのではないでしょうか。

ひとり親家庭等子どもの学習支援事業

学習支援コーディネーターと学習相談ができ、学習習慣が身につくような学習支援計画を立て、1回60~90分の学習支援を指定期間内に8回も実施してくれる制度です。

とても手厚いこちらの制度ですが、学習支援を行ってくれる場所が「対象者の自宅」であるという点が残念な部分だと言えます。学習支援の対応時間は朝の9時から夜20時までと配慮されているものの、「忙しくて家の片付けにまで手が回らないから、自宅に来てもらうのは気が引ける」という意見も多数ありました。

収入の少ないひとり親は、生活のためにダブルワークをしていたり、夜勤のある介護職や看護職に就いたりしていて留守であることも多く、親が家にいる場合は、まだ年齢の小さな兄弟姉妹がいて勉強に集中できる環境ではないことも少なくありません。

学習支援事業を請け負っている事業所は、家庭教師だけでなく個別指導を行っていることも多いため、最初の手続き以外は子供だけでも通えるような制度になると利用しやすくなるのではないかと思います。

まとめ

日本にはたくさんのセーフティネットがあり、特にひとり親に関しては、国や自治体も力を入れて支援をしてくれていると感じます。ただ、残念なことに、ひとり親など制度を利用したいと思っている人たちが利用しづらい内容となっていることも少なくありません。筆者を含むひとり親たちのリアルな声が、今後の制度の充実につながれば嬉しく思います。

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