【虐待死】あれから20年…今でも忘れられない悔いる気持ち
LIMO / 2020年1月4日 19時45分
【虐待死】あれから20年…今でも忘れられない悔いる気持ち
一緒に遊んだ子が、その日の晩亡くなりました。原因は虐待によるケガ。現在社会的問題になっている虐待ですが、20年以上前に私の身近に起こっていた事件でもあります。当時は大きく報道されることもなく、まるで忘れ去られたかのよう。
でも今も心の片隅にあり、不意に記憶が蘇ります。虐待が与える影響は当人だけでなく、もっと多くの子供に広がっているのです。
とても優しかった男の子が、虐待で死んだ
小学生だった頃の話です。私には5歳離れた弟がいるのですが、ある日弟の友だちAくんが家に遊びに来ました。母は仕事をしていたため、母が帰宅するまで弟たちの面倒をみることに。と言っても、もう小学生の男の子。そこまで世話をしなくても、自分たちでゲームをして遊んでいました。
1時間ほど遊んだ頃でしょうか。Aくんの母親から電話がありました。「今から迎えに行きます」と。「母がもうすぐ帰宅するので、帰ってきたら送っていくと言っていました」と伝えたのですが、「今すぐ迎えに行きます」と5分後くらいに到着。「もうすぐ母が帰ってくるので、良ければ待ちませんか」とすすめたのですが、とても急いでいる様子。Aくんを連れて、そそくさと帰ってしまいました。
Aくんは来たときも帰るときも、あいさつのできるしっかりとした子でした。弟と遊んでいる間も、揉めることなく、優しい男の子という印象。弟とも「小学校でいい友だちできてよかったね」と話したくらいです。そんなほのぼのとした気持ちが、一夜にして消えてしまうとは、このとき思ってもいませんでした。
翌日は休日だったのですが、親が朝刊を読んでいると、「えっ?!」と叫ぶではないですか。どうしたのかと聞くと、「Aくんが死んだって!」と。新聞には、暴行によって死んだこと、暴行したのが母親の交際相手だったことが記載されていました。
はじめは信じられませんでした。しかし通夜に行った母から、Aくんの姿を聞き、本当なんだと実感。Aくんの顔は、パンパンに腫れていたそうです…。
20年経ち、大人になって思うこと
当時は相当な衝撃を受けたAくんの虐待死ですが、新聞に載っただけで、ニュースに大きく取り上げられることはありませんでした。それでも私の心には、虐待死というものが深く残っています。結婚し子供を持つまでは、「虐待をするような男性は嫌だ」くらいの漠然とした思いでした。しかし子供を持ち、自身も大人になり感じることがあります。
愛おしいわが子であっても、ふと優しくなれないときってあるんです。泣き止んでくれない、イヤイヤ期で手がかかる、事あるごとに口答えをするなど。育児や家事、仕事に疲れて、心に余裕がないときは、つい大声で怒ってしまいます。もしかしたら、Aくんに暴力を振るった人は、Aくんがかわいくなかったのかもしれない。なら、我慢の限界もかなり低いところにあったのだろう、と。
もちろん暴力を振るった人をかばう気はありません。あんなに優しくていい子だったAくんに暴力を振るうなんて、理解できません。でも、お母さんはなぜ助けてあげられなかったのだろう…と疑問に思うことがこれまでよくありました。
ずっと疑問だったのですが、自分が大人になったこと、最近虐待のニュースをよく耳にしたことで、お母さんも怖くて何もできなかったんだ!と思うように。本当は逃げ出したかったのかもしれません。そしてSOSを発していたのかも…。そう思うと、Aくんを迎えにきたときに私の母がいれば、母がAくんを送っていれば、焦っている様子を変だと私が感じていれば。と悔いるようになりました。
今さら悔いても仕方がありません。でもこの気持ちを忘れたくない。せめて自分の身近にAくんのような子がいるなら助けてあげたい。そう感じます。だから、スーパーで子供を大声で怒る親や、子供の泣き声がずっと続く家があると、ついつい気にしてしまいます。おせっかいなおばさんかもしれません。でも救われる子がいるなら、おせっかいをしたい!そう思う気持ちがあるのです。
しかし、もしかしたらAくんはうちで長く遊んでいたせいで、反感を買って暴力を振るわれたのではないだろうか…。そう思うと、おせっかいをしたせいで、子供への暴力がひどくなるかもしれない。とも思ってしまうのです。
虐待がなくなってほしい!でもその特効薬はない。行政や警察が介入すべきだが、人手不足も実情なのでしょう。どうすればよいのか、と悩むたびに、Aくんのあの色白で丸顔な優しい笑顔が頭に浮かぶのです。
まとめ
虐待はあってはならないこと、それでも、子供に暴力を振るったりネグレクトをしてしまったりする親が後を絶ちません。私がAくんに会ったのは、たったの一度だけ。それでもAくんのことが忘れられません。
私と同じように周りで虐待死があったという人の心にも、傷跡が残っていることでしょう。身近に虐待があった子の心のケアも必要かもしれません。虐待で傷つき悲しむ子がいない世の中になることを祈るばかりです。
参考:子ども虐待運動 オレンジリボン運動「虐待死統計データ(http://www.orangeribbon.jp/about/child/data.php)」
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