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ひきこもりの子どもを支える親のお金事情…年金だけで支援、限界も

LIMO / 2020年1月9日 19時45分

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ひきこもりの子どもを支える親のお金事情…年金だけで支援、限界も

「8050問題」など、最近注目されている「大人のひきこもり」。2019年3月に内閣府が公表した『生活状況に関する調査(平成30年度)(https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/life/h30/pdf-index.html)』によれば、40~64歳人口(総務省『人口推計2018年』によると4235万人)中、広義のひきこもり(※)は61万3000人。このうち、約半数が7年以上もひきこもりを続けているという結果がでています。

今回は、この「大人のひきこもり」について、金銭面から考えてみましょう

※広義のひきこもり群
「自室からほとんど出ない」「自室からは出るが、家からは出ない」「近所のコンビニなどには出かける」「趣味の用事のときだけ外出する」に当てはまる人で、その状態が6カ月以上続いている人のことを指す。しかし病気である場合や、妊娠、育児、介護、専業主婦・主夫などで6カ月以内に家族以外の人と会話した人を除外。また在宅ワーカーや自営業なども除く。しかし今回調査から「専業主婦・主夫」「家事手伝い」「家事をする、育児をする」人であっても、家族以外との接触が少ない人は含めた。該当者は47人中11人。

大人のひきこもり事例

・職場に不満があり、退職後、再就職活動を始めました。学生時代の就職活動が比較的順調だったので、次もすぐ決まるだろうと思っていたのですが、これがなかなか決まらず…。自信を失って、「1日休んで明日から」「3日休んで再開しよう」とやっているうちに、だんだんと外に出ることができなくなりました。今は、家にこもって、ほとんど外にはでない生活です。(独身男性)

・主人が転勤族で専業主婦です。子どもはいません。主人が、私が働くことを嫌がりましたし、もともと人づきあいが苦手だったこともあって、数年したらまた新しい環境…という生活を繰り返しているうちに、ほとんど家から出ないという状態が定着してしまいました。近所に知り合いはいませんし、主人の仕事は多忙で、誰とも会話せずに就寝する日も多々あります。ひきこもりといえば、ひきこもりかもしれませんね…。(既婚女性)

・勤続15年目にして、あまり経験のない部署の中間管理職に抜擢されました。「他部署での経験をもとに業務改善を」という社の方針による昇進でしたが、いざ仕事をはじめてみると、部下からの風当たりが強く、仕事が思うように進みませんでした。とはいえ、上からのプレッシャーもすごく、誰にも相談できないでいるうちにうつ病を発症。そのままひきこもりに…。(既婚男性)

「ひきこもり」生活を支える同居家族。親が年金暮らしになったら…?

前述の『生活状況に関する調査(平成30年度)』によれば、広義のひきこもりである人がいる家庭の主な生計者は、父が21.3%母が12.8%。実に、計34.1%が父か母に支えてもらう生活を送っているという調査結果が出ています。

調査対象が40歳以上ということを考えると、その父や母は高齢者であり、その多くが年金受給者であると考えられます。

では、そもそも年金はいくらぐらい支給されるものなのでしょうか?

厚生労働省『厚生年金保険・国民年金事業年報(https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/toukei/nenpou/2008/dl/gaiyou_h29.pdf)』(2017年)によれば、厚生年金(第1号)の平均年金月額は、男性平均が16万5668円、女性平均が10万3026円となっています。一方の国民年金は、男性平均が5万5923円、女性平均が5万200円

夫が民間企業に勤務、妻は専業主婦という夫婦の年金額をざっくり平均値で考えた場合、世帯収入は、16万5668円+5万200円=21万5868円となります。

また、一方で、2019年9月に生命保険文化センターが公開した『令和元年度「生活保障に関する調査(速報版)(http://www.jili.or.jp/press/2019/nwl4.html)』によれば、「老後の最低日常生活費」の平均額は22.1万円。その一方、「老後のゆとりのための上乗せ額」の平均額は14.0万円と示されています。

しかし、これはあくまで夫婦2人で生活する場合の話。年金受給者である高齢者が、ひきこもっている子どもの生活をも支えるとなると、そのぶんは、自分たちの老後資金から…ということは容易に想像がつきます。

親に万が一のことがあった場合は、生活保護?

「8050問題」を考える時、「親に万が一のことがあれば、残された子どもの生活は生活保護頼みになる。ひきこもりの人が増えると、生活保護のシステムが破綻してしまうのでは?」という意見を耳にすることがあります。では、こういった家庭の生計者に万が一のことがあった場合、ひきこもりの人は即生活保護対象者となってしまうのでしょうか?

厚生労働省のHP(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html)を確認すると、生活保護の受給条件は以下のようになっています。

「生活保護は世帯単位で行い、世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提でありまた、扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先します。」

つまり、生活保護を希望する人は、世帯全員で
・預貯金や不動産、まずそれらを生活費に充てる
・働くことが可能であれば働く
・年金や手当など、他の制度で援助を受けることができるなら受ける
・親族等で援助してもらえそうな人がいれば、その人に援助をお願いする

ということをすべてやって、それでも厚生労働省の定める基準で計算される最低生活費に満たないということであれば、そこではじめて生活保護が選択肢に入ってきます。

そう簡単に生活保護受給という流れになるわけではない、と考えたほうがよいのかもしれません。

まとめ

ひきこもっている子どもを親が面倒をみているという状態の場合、この状態を放置すれば、親もひきこもっている人自身も高齢化して経済的に困窮してしまうのは明らかです。

ひきこもりのきっかけは人それぞれですが、そもそも「社会に戻れなくなった」ことが原因といわれています。「生活保護」しか選択肢がなくなってしまう前に、様々な支援が必要でしょう。政府も「地域若者サポートステーション(サポステ)(https://saposute-net.mhlw.go.jp/)」を設置するなどの対策を行っていますが、まずは、こういった人が社会復帰の1歩を踏み出すための方法を、社会全体で考えていく必要があります。

【参考】
『生活状況に関する調査(平成30年度)』内閣府
『厚生年金保険・国民年金事業年報』厚生労働省
『令和元年度「生活保障に関する調査(速報版)』生命保険文化センター
『生活保護制度』厚生労働省

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