【米イラン緊張】イランの報復は日本企業・日本人にどんな危険をもたらすか
LIMO / 2020年1月8日 20時20分
【米イラン緊張】イランの報復は日本企業・日本人にどんな危険をもたらすか
オリンピックイヤーが明け、日本ではその準備が着々に進むなか、中東では激震が走った。
米国のトランプ大統領が、イラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」のスレイマニ司令官を殺害したと発表し、米イラン関係はこれまでになく緊張が高まっている。石油の多くを中東に依存する日本でも、第3次世界大戦かなどとその行方を懸念する多くの声が聞こえる。
イランによる報復の選択肢は?
今後の動きはどうなるのだろうか。1月7日現在、イランは必ず報復すると宣言し、トランプ大統領もイランが攻撃すればやり返すとツイートしている。米国がイラン国内を空爆し、イランがそれに応戦するなど、両国の軍隊が直接衝突する(戦争)というシナリオの可能性は低いとされてきたが、司令官の殺害によってその可能性も高まったといえる。
しかし、米国とイランの軍事力には圧倒的な差があり、イランも真っ向から衝突しても勝てないことは十分に分かっている。よって、報復すると宣言しているイランが採るプランは、まずは今までのような非対称戦だ。非対称戦とは、文字どおり、ボールを受け取ってそのボールをそのまま返すのではなく、違う手法で相手に仕返すということだ。
すなわち、イランが報復として具体的に採る選択肢としては、①サイバー攻撃、②ホルムズ海峡の封鎖、③親イランのシーア派組織・民兵への支援強化(それによる攻撃)がなどが挙げられる。イラン経済も石油輸出に大きく依存していることから、②はなかなか難しいので、まずは①と③による報復となろう。
③は中東での影響力拡大を目指すイランが前からやっていることではあるが、イランは、イラクやシリア、レバノン、イエメンなどを拠点とするシーア派組織を軍事的・財政的に支援している。
既に、イラクの親イラン組織はバグダッドにある米国大使館などを攻撃している。今後はこれら組織が中東各地にある米国大使館や米軍基地を攻撃する可能性が高いが、イランがより突っ込んだ形で対応してくる場合もあろう。
また、イランはテルアビブなどイスラエル各地の都市への攻撃も示唆している。そうなると、レバノンやシリアにあるシーア派組織がイスラエル領内に向けてロケット砲やミサイルを撃ち込むといったケースもあり得るだろう。
日本企業・日本人への影響は?
既に、株価の大幅下落など世界経済にも影響が出ているが、今後はどんな影響が出てくるのか。
まず、この問題によって、中東にある日本権益・日本人が狙われるということはない。日本は米国だけでなく、イランとも歴史的に友好関係にあり、イランが日本権益を攻撃する理由はない(ただ、去年安倍首相がイランを訪問している最中、ホルムズ海峡付近を航行中の日本タンカーが攻撃された事件の背景が分からないままだが)。
しかし、中東各国に米国権益は多数あり、各国を拠点とする親イランの組織が米国権益を攻撃する可能性が高い。イエメンのフーシ派やレバノンのヒズボラ、パレスチナのハマスなどは今回の事件を非難し、米国への報復を強く呼び掛けているが、そういった場合に日本人が巻き込まれるリスクは十分にある。
既にイラクでは米国と親イラン組織の応酬が激しくなっているが、たとえばサウジアラビアやUAE、バーレーンはイランと外交関係を断絶しており、それら各国にある米国権益が狙われる可能性もある。
そして、イスラエルにおいては、周辺各国の親イラン組織はミサイル攻撃などの軍事力を十分に備えている。既にイスラエル軍は厳戒態勢をとっているかも知れないが、今後は両者の攻防が激しくなる可能性もある。
よって、企業であれば駐在員や出張者に対して、中東各国の首都にある米国大使館、米軍施設には絶対に近づかないことを徹底させ、イスラエルへの出張を停止するなどの対策を施すべきだろう。
今後の行方は?
現在の緊張は今後も続く。世界情勢の行方にとって、今年最大の政治イベントは11月の米大統領選であるが、トランプ大統領が再選されるかどうかは、イラン情勢にも大きく影響するだろう。
トランプ大統領の頭の中は11月のことで一杯と考えていい。よって、今後のイラン情勢の行方は、イラン問題がトランプ氏にとって支持拡大の材料になるかどうかに掛かっているといっても過言ではない。
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