子どもは規格外の野菜を選ぶ!? 食品ロスを減らし売り上げを増やしたスーパーも
LIMO / 2020年2月21日 20時45分
子どもは規格外の野菜を選ぶ!? 食品ロスを減らし売り上げを増やしたスーパーも
「このニンジン、足が2本あるみたいでしょ? 歩き出しそう!」
「見て見て、このサツマイモ。ボールみたいにまん丸だよ!」
子どもたちがはずんだ声で話しています。手にしているのは、いわゆる「規格外」の野菜や果物です。
ニュージーランドにあるオタゴ大学で先頃、子どもたちが規格外の野菜や果物について、どのように考えているのかを把握するための実験が行われました。
大人にはあまり人気がない規格外の商品に対し、子どもたちは「ノー」と言ったのでしょうか、それとも「イエス」と言ったのでしょうか?
見た目が悪いだけで、処分されている野菜や果物
食品ロスと廃棄は世界各国が取り組む問題です。国際連合食糧農業機関(FAO)は、2030年までにそれを半減させることを目指しています。
生産時に用いられる資源が無駄になるだけでなく、消費されないにも関わらず生産を行うことは、食料品自体の経済的価値が失われ、温室効果ガスの無駄な排出にも通じています。
残念なことに、世界中で年に45%が、規格外という理由だけで、サプライチェーンのさまざまな段階で捨てられているそうです。
これが排出される温室効果ガスの最大10%を占めることを、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書が指摘しています。捨てられる理由のほとんどは「見た目が悪いから」だといいます。
食品ロスと廃棄を半減させるには、どの段階で何をしたらいいのでしょうか。FAOの目標を採択しているニュージーランドで先ごろ発表されたのが、オタゴ大学のマーケティング学部博士課程に在籍するアネーシャ・マクハルさんによる実験・調査です。
子どもたちが選んだのは、規格品か規格外品か
アネーシャさんの調査対象者は5~11歳の97人の子どもたちです。
買い物かごと買い物リストを渡された子どもたちは、リストに沿って、テーブルに乗ったバラエティーに富む野菜や果物から各々1種類2個ずつを選び、かごに入れます。テーブル上には、通常スーパーマーケットや店舗で販売することはない規格外のものも含まれています。
子どもたちが選んだのは、形も色もサイズもまちまちな規格外の野菜・果物でした。かえって形がそろい、きれいなものより、ちょっと変な形をしている方が面白いようです。
ねじれていたり、曲がっていたりする野菜を、笑顔で皆口々に「好き」「かわいい」と言います。これらを人や動物、身の周りのものに見立て、ほかにはない形をしているのだから、きっとおいしいに違いないと想像するのだそうです。
アネーシャさんは、形やサイズもさまざまで、時には何かがぶつかり傷が付いた、いわゆる規格外農産物を廃棄せずに、子ども向きに売れないだろうかと考えます。
子どもだけでなく、一般の消費者にも規格外野菜や果物をもっと買ってもらえれば、資源利用も無駄にならず、ごみ処理場もいっぱいにならずに済むのです。
子どもだけのものにしておくのはもったいない!
規格外の野菜や果物を初めて全国規模で扱い始めたのは、国内に180以上の店舗を展開するスーパーマーケット・チェーンのカウントダウンです。
2017年から「オッド・バンチ」というブランド名で、こうした野菜・果物を販売しています。2018年の売り上げは、初年度の145%増しを記録し、現在も人気はうなぎ登りです。
「オッド・バンチ」として売り出されているのは、野菜ではインゲンマメ、サツマイモ、アボカド、ピーマン、ジャガイモ、ニンジンなど、果物ではリンゴ、イチゴ、プラムなどです。
サイズが小さめだったり、長さがまちまちだったり、雹被害で皮に傷がついていたりしますが、味に遜(そん)色はありません。
食品ロス・廃棄問題の解決に貢献しているだけでなく、スーパーマーケット自体の売り上げを伸ばし、さらには、生産者にもそれまで売り先がなかった不ぞろいな野菜や果物の出荷先を提供、利益をもたらしています。
まさにウィン・ウィン・ウィンの状況が作り出されているのです。
筆者は「オッド・バンチ」ブランドのファンです。料理をしてしまえば、規格品と何の変わりもありません。今まで規格と合わないというだけで、店頭に並ぶこともなく、処分されていたことを考えると、もったいない限り。
規格外の野菜や果物を子どもたちだけのものにしておく手はありません。
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