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離婚が身近でなかった時代の妻たちは、結婚生活の苦痛とどう向き合ったか

LIMO / 2020年2月20日 11時15分

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離婚が身近でなかった時代の妻たちは、結婚生活の苦痛とどう向き合ったか

離婚率は減少傾向だが、妻からの申し立ては増加

2018年に結婚したカップルは58万6438組、離婚は20万8333組です(厚生労働省)。単純に計算すると、約36%の離婚率になり、一般的にも「3組に1組が離婚」と言われたりしています。

ただ公式な離婚率は、人口1000人当たりで計算されるので、約1.7‰(パーミル)となります。

離婚率は02年をピークに減少傾向にあります。必ずしも昔は離婚が少なかったというわけではなく、明治中期ごろまではむしろ現在より高い離婚率となっていたようです。減少する離婚率ですが、妻からの離婚率となると、また違う数字になるのではないでしょうか。

裁判所に申し立てられた件数を見ると、06年から16年の10年間で、夫からの申し立ては1万9730から1万8134件と微減しているのに対し、妻からは4万5440から4万8351件と増加しています(司法統計)。

数字はさておき、妻たちにとって離婚が身近になったのは、やはり近年になってからと言っていいのではないでしょうか。なぜなら、妻が経済力を持つようになったのはそう古いことではないからです。

経済力がなければ、離婚なんて絵空事でしかありません。どんなに日々の生活が苦痛だったとしても、です。

「男に逃げられる」と言われ、「いいよ」と答える妻

妻からの離婚が身近でなかった時代は、社会も男性に寛容なところがありました。夫のわがままを許さない妻は、心が狭いとする風潮さえないわけではありませんでした。

そもそも妻たちは、離婚すれば生きていくことが難しかったのです。限界ぎりぎりまでの我慢を妻に強いても、離婚をさせないような社会であったのでしょう。

筆者の周辺でも、離婚の恐怖におびえる妻の話はそう珍しいことではありませんでした。思い出すのは、対照的な二人の妻です。一人は、妻の役割を捨て、母親の役割を選びました。

生まれたときから羽布団にくるまって育った夫に対して、妻はごく普通の農家育ち。遠縁ではあるのですが、家柄の違いは結婚生活にも響きました。

学術的な会話しかしない夫、難しいことには全く興味のない妻。食生活の違い、つきあう人の違い、つきあい方、何から何まですれ違ったそうです。やがて、夫が帰宅しない日が増えていきました。

周囲は、妻にこう言ったそうです。

「ご主人に合わせていかないと、追い出されるよ」
「少しはおしゃれして、もう少し上品にしないと、男に逃げられても文句は言えない」

そして最後は、必ずと言っていいほど、こう締めくくりました。

「ご主人がいなくなったら、奥さんは生きていけなくなるんだから」

妻の答えは、決まっています。

「出て行ってもいいよ。いらないから」

妻も、夫の家柄や生活レベルに合わせようと努力した時期はあったそうです。しかし、戦後の経済変革に伴い、田畑が大幅に減少し、生活費の大半を夫の給料で賄わなければなくなったのです。この時点で妻は、夫の生活レベルに合わせるのをやめたそうです。

このご夫妻は100歳近い長寿だったのですが、離婚せず添い遂げています。晩年になっても、夫はスラリとした長身でダンディでした。妻は、誰とでも気軽に話し、姿も話題も飾らず庶民的でした。

夫の不在に悩み、自殺未遂を繰り返す妻

もう一人の妻は、人見知りで、家族だけで仲良く過ごすことを好みました。対して夫は、やたら人づきあいがいいのです。新婚時代から大勢の友人を連れて帰宅していたそうです。妻が不快に思っていることに気づくと、家ではなく外でにぎやかに過ごすようになりました。

夫は人に頼まれると、喜んで引き受けます。多くの相談事が持ち込まれ、深夜に電話で呼び出されることもしばしばでした。妻や子どもがいくら「行くな」と止めても、振り切って出かけるのだそうです。一番目の夫と同じように、帰宅しない日も多かったようです。

妻は、夫が帰らないときはお酒に頼り、昼間でも酔っぱらい、数回の自殺未遂を起こしています。娘も一度、自殺未遂をしています。制服や教科書もすべて処分したうえでの行動なので、本気だったことがわかります。

父親の不在が直接の原因ではありませんが、「いろんなことが複合的に襲ってきて」と語っています。

この夫妻も離婚せずに添い遂げ、定年退職後、夫は外泊しなくなりました。人づきあいの機会がなくなり、相談事を持ち込まれることもなくなったためでしょう。夫の外泊がなくなってからの妻は、以前とは別人のように穏やかになっていました。

たかがお金、されどお金

夫に不満のある妻は珍しくありません。夫に不満を持ちつつ、よき妻になろうと努力する妻もたくさん知っています。

しかし、その結果、不満が消えたという話はまず耳にしません。自分の性格すら思い通りにならないのに、夫といえども他人の性格を思い通りにするのは至難の業ということでしょう。

ならば無駄な努力はちょっとだけにして、あとは自分を変えるほうに努力するのが賢明かなと考えてしまいます。一番目の妻は、妻の部分はさっさと切り捨て、母親としての役目に徹しました。子どもたちはいずれも社会的地位を得、家庭も円満です。

二番目の妻は、娘の自殺未遂だけでなく、息子ものちに妻との不仲で離婚しています。父親の不在で精神的な支柱を失った子どものことを考えると、せめて母親だけでもドーンと構えていたら、と思ってしまいます。

ところで二組のご夫妻とも、離婚はしていません。夫の共通点は、妻に渡すお金には一切手をつけていないことです。司法統計では、妻からの離婚原因の第2位が「生活費を渡さない」となっています(16年)。たかがお金、されどお金ですね。

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