東京五輪の謎:「ボランティアと経験の浅い派遣社員の間に混乱は起きませんか?」

LIMO / 2020年3月1日 20時10分

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東京五輪の謎:「ボランティアと経験の浅い派遣社員の間に混乱は起きませんか?」

大会ボランティアのライターが組織委員会に突入取材!(4)

東京オリンピックの開催まで半年を切ったというのに、いまだにボランティアの位置付けについては混乱があるようだ。私(ライター)は、大会ボランティアとして参加する予定だが、評判が悪いまま大会に参加するのは不安だ。そこで組織委員会を取材。ボランティア目線でかなり突っ込んだ質問もしたところ、意外な事実が見えてきた!

シリーズ第4回は、派遣社員とボランティアの間で混乱は起きないのか?という疑問を中心に聞いている。

取材に答えてくれた、公益財団法人 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の担当者は以下の通り。

総務局 ボランティア推進部 部長 兼 人事部 担当部長 傳 夏樹氏
総務局 ボランティア推進部 ボランティア推進課長代理 古瀬 浩一氏
総務局 人事部 採用課長 朱 賢太氏

<取材・文/下原一晃 フリーライター。東京五輪・パラリンピックに、大会ボランティア(フィールドキャスト)および、東京都の都市ボランティア(シティキャスト)として参加予定>

ボランティア経験が少ないスタッフで大丈夫?

――ここまでのお話で、そもそも組織委の派遣社員と大会ボランティアとでは、所属も役割も指揮命令系統もまったく別であり、現場で簡単に代替できるようなものではないとのことでした。

それは理解できたのですが、それでも組織委の派遣社員とボランティアが一緒の現場で仕事をする(活動する)ことには変わりはありません。組織委の派遣社員がボランティアに直接指示をすることはないとしても、ボランティアリーダーを通じて依頼をすることになると思います。

組織委の派遣社員が仮にスポーツイベントやボランティアに参加した経験が浅い場合、現場で混乱することはありませんか。

:具体的にはどのようなことを想定されていますか。

――実際の例でご紹介したほうがわかりやすいと思います。2019年7月21日に東京2020大会のテストイベントとして、「READY STEADY TOKYO-自転車競技(ロード)」が行われました。

多くのボランティアがコースサポーター(沿道整理)として参加しましたが、このボランティアに指示を出すスタッフが、ボランティアの出席を取るのを忘れたり、ユニホーム代わりのキャップを支給しなかったり、ボランティアの活動内容や活動場所の指示が曖昧でボランティアが混乱するといったトラブルが多くの現場で頻発しました。

あまりにも混乱がひどく、参加したボランティアに対して後日、組織委員会の会場運営担当部長名で謝罪メールが届いたほどです。東京2020大会で同様なことが起こらないかと心配です。

古瀬:トラブルに関して、参加いただいたボランティアの皆さんには、大変ご不快な思いをおかけして申し訳ございませんでした。

背景を申し上げると、自転車競技(ロード)は一都三県にまたがる十数の自治体にご協力いただき、それぞれ、コースサポーターと呼ばれるいわゆる「ボランティア」を募集しました。さらに、そのボランティアのまとめ役として「コントラクターAD」と呼ばれる委託スタッフを各自治体が雇用し運用も行いました。これは他の競技とは大きく異なるところです。

一方で、コントラクターADの競技やそれにともなうボランティアの活動内容に関して理解不足も生じ、そのことが今回の混乱を招きました。

組織委としてもコントラクターADの習熟度を高める必要がありましたが、研修等が決して十分ではありませんでした。今回の反省を踏まえ、各自治体などとより密接に連携をはかるとともに、ボランティアの皆さんが安心して活動できるためにはどうすればいいか、対策を進めているところです。

組織委員会 総務局 ボランティア推進部 ボランティア推進課長代理 古瀬 浩一氏


――自転車競技については、コースが複数の都県、自治体にまたがるとともに、コースサポーターという大会ボランティアとも異なるボランティアを別途募集・運営するという仕組みになっているため、コントラクターADという委託スタッフがいるわけですね。本番ではきちんと機能することを願っています。

では、別な競技ではどうですか。若いからダメというわけではないですが、ボランティア経験の浅い組織委の派遣スタッフが、経験豊富なボランティアのリーダーに、的を射ないような指示を出すことはありませんか。

:そのようなことが起こらないよう、組織委の派遣職員の採用や配属、さらに研修は入念に行う計画です。

――パソナの広告では、応募資格として「アルバイトの場合はリーダー経験ある方」といった記載もあります。失礼な言い方になりますが、アルバイトしか経験のない人が、大勢の人が活動する現場にいきなり配属されて仕事ができるものでしょうか。

:もちろん、先ほどの事故対応や、医療クラークとして医師とコミュニケーションをはかりクリニック運営をサポートするような仕事は、経験者のほうが適しているかもしれません。しかし、たとえアルバイトの方であっても、リーダーとして店舗で他のアルバイトの勤怠管理などをしていたような人であればボランティアのシフト管理などでも即戦力になるのではないかと考えております。

派遣社員とボランティアが同じユニホームで混乱は起こらないのか

――そうは言っても、派遣社員とボランティアはユニホームも一緒だそうですね。誰が派遣社員で誰がボランティアかわからないのでは、ボランティアリーダーもメンバーも活動しづらいのではないでしょうか。

:組織委の派遣社員と大会ボランティアのユニホームが同じであることについては、「どちらが上、どちらが下」というのではなく、職員もボランティアも一緒になって、文字どおり「ワンチーム」で大会を成功させたいという思いがあります。

昨年行われた「ラグビーワールドカップ2019」でも、組織委の職員と大会を運営するボランティア全員が同じユニホームだったと聞いていますが、オリンピックでは過去大会からずっと、ユニホームは全員一緒です。

もう一つ、「誰が派遣社員で誰がボランティアかわからない」ということはありません。というのも、3月以降には具体的な役割・活動場所をお知らせし、「承諾」いただくと、それが決定します。

その後、具体的なシフトが決まり、5月、6月くらいから順次会場別研修が始まります。ここで、会場の責任者、組織委の職員などが顔を合わせ、一緒に研修やミーティングを行うのです。ですので、ボランティアの方が「初めて会った知らない人と一緒に活動する」ということはありません。

もちろん、ボランティアの中には活動経験の豊富な方も多くいらっしゃると思います。もし「こんなやり方ではやりづらい」といったことがあれば、ぜひ、これらの職員とのミーティングの場でご意見、ご要望などをお聞かせいただきたいと思っています。

組織委員会 総務局 ボランティア推進部 部長 兼 人事部 担当部長 傳 夏樹氏

「最初から知っていたら、有償スタッフを選んでいた」人も歓迎?

――朱さんの話を聞いていると、派遣社員として働くにしても、人のマネジメントや施設の計画、管理など、責任もやりがいもある仕事がありますね。新聞の中には「『最初から知っていればこっちに応募していた』と語るボランティアもいる」と報じているところもあります。

:傳や古瀬が隣に座っているので言いづらいのですけれども、もしそういう方がいらっしゃれば、募集している職種については今からでも応募可能です。

短期職員は長ければ半年、短くても1カ月は働けるジョブがたくさんあります。「8月までは時間の融通がつく」という方や、「充実した夏休みにしたい」という学生の方などにはぜひ参加してほしいですね。早ければ3月から働けるジョブもあります。

いずれにしても多様な人材と国際的なスポーツイベントの運営側で仕事をするのは貴重な経験になるはずです。

組織委員会 総務局 人事部 採用課長 朱 賢太氏


:ボランティア推進部としては、すでに大会ボランティアで研修などのステップに進んでいただいている方にはぜひ続けていただきたいところですが、ボランティアは決して契約ではありません。「申し込んだからやめられない」というものではありません。あくまで選択肢の一つです。今後も、ご家族やお仕事の都合で、当初思っていたような活動ができなくなった、という人も出てくるでしょう。

ボランティアの具体的な役割・活動場所のお知らせやその内容の「承諾」は3月ごろを予定しています。活動日程が合わない、活動場所や活動内容が希望と違うなど、内容が承諾できないようであれば、その時点で、「辞退」していただければ、改めて職員に応募していただくことも可能です。

つづく:第5回は「熱中症対策やアシスタントキャストの役割」について(3月2日公開予定)

<これまでの記事>
第1回『東京五輪の謎:「パソナの派遣職員とボランティア、本当のところどう違うんですか!?」(https://limo.media/articles/-/16098)』
第2回『東京五輪の謎:「ボランティア不足だからパソナが派遣を募集してるって本当?」(https://limo.media/articles/-/16100)』
第3回『東京五輪の謎:「大会ボランティアと都市ボランティアって活動場所が違うだけですか?」(https://limo.media/articles/-/16184)』

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