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東京五輪の謎:「ネガティブ報道が多いけれどボランティアは安心して参加できますか?」

LIMO / 2020年3月2日 20時40分

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東京五輪の謎:「ネガティブ報道が多いけれどボランティアは安心して参加できますか?」

大会ボランティアのライターが組織委員会に突入取材!(5)

東京オリンピックの開催まで半年を切ったというのに、いまだにボランティアの位置付けについては混乱があるようだ。私(ライター)は、大会ボランティアとして参加する予定だが、評判が悪いまま大会に参加するのは不安だ。そこで組織委員会を取材。

シリーズ最後の第5回は、熱中症対策やアシスタントキャスト、ボランティア研修の延期などについての疑問を中心に聞いている。

取材に答えてくれた、公益財団法人 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の担当者は以下の通り。

総務局 ボランティア推進部 部長 兼 人事部 担当部長 傳 夏樹氏
総務局 ボランティア推進部 ボランティア推進課長代理 古瀬 浩一氏
総務局 人事部 採用課長 朱 賢太氏

<取材・文/下原一晃 フリーライター。東京五輪・パラリンピックに、大会ボランティア(フィールドキャスト)および、東京都の都市ボランティア(シティキャスト)として参加予定>

熱中症対策はどうする? 終電で会場に入る活動はあるの?

――東京2020大会の開催中はかなりの暑さになることが予想されています。都市ボランティアの場合、運営する自治体によって活動場所や活動内容、さらには気温が異なるものの、おおむね屋外での活動となります。東京都の都市ボランティアでは熱中症対策として、2つのチームが1時間ごとに交代するようなシフトも検討しているようです。

大会ボランティアでは対策はどのようになっていますか。

:大会ボランティアの場合、屋内の競技場もあれば、屋外の競技場もあります。競技によってセッション時間なども異なりますので、競技ごと、会場ごとに、どのようなシフトがいいのか異なるかと思います。30分ごとに交代するのがいいのか、1時間ごとに交代するのがいいのか、あるいは一定の時間内に自由に休憩するのがいいのかといった具合です。

ただ、これもその日の気温、ボランティアの方の体調などによっても異なるため、いろいろなパターンを用意して、何よりも無理をしないで自分に合ったパターンで活動できるようにしたいと考えています。もちろん、競技が行われている時間帯には一定の人員が必要なので、そこをどうするのかは細かい調整が必要です。

古瀬:大切なのは、ボランティアの方ご自身で小まめな水分補給を行うとともに、無理をしないことです。つらければつらいと気軽に言えるような雰囲気作りも大切です。ボランティアリーダーもいい関係を作り、お声がけができるようリーダー研修などでも念押しをしていきます。

:職員側にもその意識は徹底させます。ボランティアの体調管理も重要な仕事だと研修などの場で伝えます。

組織委員会 総務局 人事部 採用課長 朱 賢太氏

――シフトの件についていえば、早朝に行われるマラソン競技などで活動するボランティアは終電で会場入りするとされ、「夜通し徹夜で待機させるなんてブラックだ」と批判が起きました。

:それも少しご説明が足りず申し訳ありません。当初、マラソン競技はスタート時間が午前6時とされていました。ボランティアが会場に入るには始発の交通機関でも間に合わないため、終電で会場に入り待機すると想定していたのは確かです。

ただ、待機時間は「夜通し」というほどではなく、数時間と考えていました。というのも、すでに発表されていますが、東京2020大会の開催中にはJRや大手私鉄などの鉄道事業者にご協力をいただき、終電が、遅いところでは2時過ぎまで延長されることになっていました。

6時スタートの場合、ボランティアは4時半ごろから準備を始めることになります。2時過ぎの終電で会場に入った場合、待機時間は2時間程度となります。それもあくまでも「自主的に」ということですが、すでに共通研修の会場などでは「ぜひ協力したい」とのお声をいただいていて驚いています。

――そのマラソンおよび競歩は、開催地が札幌に変更になりました。最大2000人のボランティアが必要とされているそうですが、その確保はどうする予定でしょうか。東京などの大会ボランティアを連れて行くということはありますか。

:現在まさに人数も含めて調整中というところです。詳細が決まるまでもう少しかかりそうです。といっても東京から数千人を連れて行くというのは宿泊施設などの問題もあり現実的ではないと考えており、札幌の皆様を中心に支えていただく方向で検討を進めております。

古瀬:3月に大会ボランティアの皆さんに役割・活動場所をお知らせする予定ですが、応募にあたり希望する活動場所を「札幌」と答えている人も少なくありません。これらの方々に協力していただくことも検討しています。

組織委員会 総務局 ボランティア推進部 ボランティア推進課長代理 古瀬 浩一氏

2200人の「アシスタントキャスト」はボランティアではない?

――ところで新しいところでは2月7日に、東京大会の開閉会式で選手の入場などをサポートする「アシスタントキャスト」約2200人を公募すると発表されました。この2200人はボランティアですか。すでに選考・決定した大会ボランティアの8万人に対して、「追加のボランティア」ということになりますか。

(この質問に対して、「アシスタントキャスト」はボランティアではなく、3人の所属する部門とは別の部門が運営を行っているとのことだった。後日、組織委員会広報から文書で回答を得た)。

組織委員会広報:我々としては、両者のプログラムや採用方法も大きく異なることから、「アシスタントキャスト」については、追加のボランティアではなく、大会ボランティアとは別枠の大会への参加機会と捉えていただければと思います。

――すでに選考・決定している大会ボランティアの人も、この「アシスタントキャスト」に応募できますか。都市ボランティアの人は各自治体に尋ねればいいですか。

組織委員会広報:可能です(注1)。ただし、両方を活動するとなると、スケジュールの調整等をご自身で行っていただく必要があります。都市ボランティアの方は、各自治体にお尋ねいただければと思います。

(注1)募集は2月28日にて終了

――パソナの広告の件をはじめ、「アシスタントキャスト」などの募集など、こういったことが決まっているのであれば早く知っておきたかったというボランティアも多いのではないでしょうか。最初から選択肢がいろいろあることを伝えていただくのは難しいのでしょうか。

組織委員会広報:東京2020大会には多くの方々に様々な形で参加いただきます。そして、大会スタッフの採用などはすべて予算や計画に基づいて公表し、実施するのですが、大会運営を取り巻く状況が刻一刻と進展していく中で最初からすべて公表するのが難しかったことは、我々としても大変ご不便をおかけしたと思っています。

――いろいろと具体的にご説明いただいてありがとうございます。私も大会ボランティアとして東京2020大会に参加する予定ですが、今日初めて知ったこともたくさんありました。

ただ仕事柄、私などはボランティアの中でも、かなり情報を持っているほうだと思いますが、地方都市にいて、周りに一緒に参加するような人がいないボランティアは不安に感じているのではないでしょうか。

:もしそのようなことがあれば、一人一人のボランティアの方に丁寧に対応していきたいと思っています。

組織委員会 総務局 ボランティア推進部 部長 兼 人事部 担当部長 傳 夏樹氏


――いいニュースもたくさんあると思うのです。たとえば、選手村のベッドですが、オフィシャル寝具パートナーの「エアウィーヴ」が東京2020大会のために独自に開発した最新鋭のマットレスを備えたベッドです。

ところが、環境に配慮して段ボールで作られているということだけが一人歩きして、「粗末だ」とか「選手に対するおもてなしがない」などと言われてしまう。組織委の情報の出し方がよくないのではないかと思ってしまいます。

:そのあたりの反省も踏まえて、ボランティアの皆さんが、安心して参加いただけるよう、丁寧な説明をしていきたいと思います。ただし、毎日の報道やSNSのトピックなどに対して、一つ一つ組織委としての見解を出すといったことをすることは考えていません。

その代わりというわけではないですが、組織委では、大会ボランティアの皆さんの問い合わせにお応えするメール窓口やコールセンターを設けています。疑問点や不安な点などがあれば、ぜひご利用ください(注2)

注2:都市ボランティアについては、それぞれの自治体に対応窓口あり

――2月21日には新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、大会ボランティアを対象にした研修の一部が延期されると発表がありました。新聞などでは「大会そのものが中止になるのではないか」といった論調も見かけます。

:大会ボランティアの共通研修(集合研修)は昨年10月から実施しています。まだ共通研修に参加されていない方、約2700人を対象にした研修のうち、2月22日以降に行われる研修を5月以降に延期することにしました。具体的な開催日程や会場、実施内容などについては、対象者に別途ご案内する予定です。

組織委員会では、引き続き関係機関などと密接に連携し、安全な東京2020大会開催に向けて準備を進めていきます。大会の中止は検討していません。

――私も大会ボランティアの一員として、安心して楽しく参加できるような雰囲気になればいいなと思っています。

古瀬:8万人の大会ボランティアは、国内47都道府県、海外120カ国以上から応募いただきました。8万とおりの出会いからいろんなシナジーが起こるのではないかと期待しています。ボランティアの皆さんにも、ぜひそこを楽しみにしていただきたいです。

:20万人の応募をいただきましたが、採用は8万人なので、12万人の方をマッチング成立とすることができませんでした。ボランティアの皆さんにはぜひその方々の分も楽しんで一緒に大会を成功させてほしいと思っています。また12万人の方々も「大会を成功させたい」という思いは同じはずですので、いろいろな形で東京2020大会を楽しんでいただければと思っています。

今ちょうど、8万人のお一人お一人に、大事な役割を割り振っているところです。ぜひ楽しみにお待ちいただき、3月以降の「承諾」へと進んでいただきたいと願っています。

――5回にわたり、長いインタビュー記事をお届けした。取材時間は2時間に及んだが、その間3人は、やや失礼な質問にもムッとした表情をすることもなく、丁寧に答えてくれた。新型コロナウイルスの感染拡大など、新たな不安もあるものの、私もボランティアの一員として、前向きに進めそうな気がしてきた。

<これまでの記事>
第1回『東京五輪の謎:「パソナの派遣職員とボランティア、本当のところどう違うんですか!?」(https://limo.media/articles/-/16098)』
第2回『東京五輪の謎:「ボランティア不足だからパソナが派遣を募集してるって本当?」(https://limo.media/articles/-/16100)』
第3回『東京五輪の謎:「大会ボランティアと都市ボランティアって活動場所が違うだけですか?」(https://limo.media/articles/-/16184)』
第4回『東京五輪の謎:「ボランティアと経験の浅い派遣社員の間に混乱は起きませんか?」(https://limo.media/articles/-/16198)』

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