孤独死時代へまっしぐら? ”予備軍”の高齢単身世帯は2040年には900万へ
LIMO / 2020年3月28日 8時20分
孤独死時代へまっしぐら? ”予備軍”の高齢単身世帯は2040年には900万へ
今年の冬(2019~2020年)は記録的な暖冬となりましたが、それでも朝晩の寒さは相応に厳しかったと思われます。そして、今年も一人暮らしのお年寄りの家が火事になったというニュースが毎日のように報じられていました。それだけ一人暮らしの高齢者(65歳以上、以下同)が増えているのでしょう。
一人暮らしの高齢者が増える中、避けて通れないのが「孤独死」です。孤独死とは、一人暮らしの人が誰にも看取られること無く死亡することを言い、基本的に自殺は含まれません。心臓発作や脳出血などの突発的な疾病によって死亡するケースもありますが、持病などが重篤化してそのまま亡くなるパターンが「孤独死」のイメージではないでしょうか。
国立社会保障・人口問題研究所が昨年(2019年4月)公表した「日本の世帯数の将来推計(http://www.ipss.go.jp/pp-pjsetai/j/hpjp2019/t-page.asp)」を見ると、現在既に社会問題化しつつある孤独死がより一層深刻になる可能性が高まっていることが見て取れます。
高齢者の孤独死はめずらしくない時代に
ところで、現在の日本社会において孤独死で亡くなる高齢者はどれくらいいるのでしょうか?
内閣府の「平成30年版高齢社会白書(https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/index.html)」によると、平成28年(2016年)の東京23区内の65歳以上一人暮らし死亡者のうち、自宅での死亡者数は3,179人となり、過去最高を記録しました。平成15年が1,451人だったので、13年間で2倍超に増加したことになります。
この東京23区内の孤独死データを基にすると、全国では3万5千人~4万人の高齢者が孤独死で亡くなっていると推察されます。平成30年(2018年)の全国における自殺者(全世代)が約2万600人であることを考えると、孤独死の多さが理解できましょう。誰にも看取られることなく亡くなる人は、決してめずらしくない時代になったのです。
ちなみに、平成28年の全死亡者数は約130万人だったので、高齢者による孤独死の割合は3%前後と推測されます。恐らく、直近では3%を大きく超えている可能性が高いと考えられます。
2040年の高齢単身世帯数は約900万へ増加
さて、前述した「日本の世帯数の将来推計」によれば、65歳以上の単身世帯数は、
2015年実績:625万世帯(32.6%)
2020年推計:703万世帯(34.0%)
2030年推計:796万世帯(37.4%)
2040年推計:896万世帯(40.0%)
と予測されています。
基本的には、「単身世帯数=1人暮らしの人数」と考えていいでしょう。今から20年後の2040年には、65歳以上の単身世帯数が約900万に達し、65歳以上の総世帯数に占める比率は4割となるわけです。現在の少子化や未婚比率の上昇などを勘案すれば、孤独死の“予備軍”でもある高齢者の単身世帯がさらに増加することは容易に想像できましょう。
老後の住居は民間賃貸頼み?
そこで問題になるのが、孤独死を迎える自宅が持家なのかどうかということです。現在、日本の持家比率は約61%(全世代平均)ですが、過去の推移から見ても今後の大幅上昇は期待し難い状況にあります。仮に、前提条件を甘くして、この持家比率が65%まで上昇したとしても、2040年には約320万人の高齢者が自分の家を持たない状況になります。
これら高齢者は、高齢者向け施設(有料)、公営賃貸住宅、民間の一般賃貸住宅に住むことになります。しかし、施設や公営賃貸住宅で受け入れるキャパシティは限度があり、その大部分を民間の一般賃貸住宅に頼らざるを得ない状況にあると考えられます。
賃貸住宅では“孤独死リスク”が大きな壁に
しかし、一人暮らしの高齢者に貸すことを躊躇(ちゅうちょ)する家主は多いでしょう。仮に連帯保証人がいたとしても、いわゆる“孤独死リスク”があるからです。
家主から見た“孤独死リスク”とは何でしょうか?
一般に、孤独死が早期に発見されるのは稀で、少なくとも死後数週間を経過した時が多いと言われます。その際、現実問題として、遺体から発された体液が染み込んだ部屋は、とても使用できる状態にはありません。専門業者にしかできない特殊洗浄が必要になり、多額の費用がかかります。
しかも、現在の民法では、自殺でない場合、遺族や連帯保証人に対して損害賠償の請求ができません(一部は上限)。
“孤独死時代”に向けて
昨今、こうした社会情勢に合わせた家賃保証や特殊洗浄費用負担など、“孤独死保険”の類も登場していますが、まだまだ不十分です。今後迎えるであろう“孤独死時代”に備えた様々な社会保障の整備・強化が求められるでしょう。
今はまだ孤独死と言われてもピンとこない方も多いかもしれません。しかし、日々の仕事等に追われているうちに、あっという間に時間が過ぎていきます。直接的にも(自分が高齢になって孤独死)、間接的にも(隣室で孤独死が発見される等)、その影響を受ける日はもうすぐそこまで来ているのかもしれません。
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