学童保育が危ない! 3密の環境、一斉休校のしわ寄せで悲鳴を上げる現場
LIMO / 2020年5月6日 10時0分
学童保育が危ない! 3密の環境、一斉休校のしわ寄せで悲鳴を上げる現場
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴い、3月2日から小・中・高校の全国一斉休校が始まりました。
新学期に入り授業再開と思いきや、4月7日には7都府県で緊急事態宣言が発出、次いで16日には全国に緊急事態宣言が拡大され、各地で休校が続いている状況です(編集部注:本稿は緊急事態宣言の延長が発表される前に執筆されたもの)。
そして、そのしわ寄せが及んでいるものの1つが学童保育です。本稿では学校休校に伴う教育の問題、特に悲鳴を上げる学童保育の現状を伝えたいと思います。
学童保育の現場が疲弊する理由
学童保育は厚生労働省が管轄するもので、法律に基づいて国庫補助を受けながら、各自治体の指導の下、色々な呼び名、種々の組織形態で運営されています。しかし、一般的にその実態はあまり知られていません。
筆者は、大学教育の現場を定年退職後、子どもの教育に寄与したいと思い、神奈川県で学童保育の支援補助員を2か所で2年間務めました。1つは、小学校に併設されNPO法人が運営する学童保育、もう1つは、小学校外の建物で子どもの父母が運営する学童保育です。
その経験から、なぜ学童保育が悲鳴を上げるのか、その実態を以下にいくつか挙げたいと思います。
1. 新型コロナウイルス対策は3密(密閉、密集、密接)を避けるのが基本だが、学童保育の現場は狭い場所に子どもが集まる3密そのものであり、感染リスクを排除できない。
2. 支援員および支援補助員が不足し、勤務のシフトに苦慮している。
3. ケガなく遊ばせ、宿題をさせ、おやつを出し、体温を測り、体調の悪い子どもに気を配ることが求められる。
4. 何時に子どもを帰すか、親御さんとの連絡にも心を砕く。
5. 日誌をつけ、年間イベントの企画、学校や自治体との対外的折衝などの事務処理も多い。
このように、支援員の仕事は極めて厳しく、いわゆるサービス残業が当たり前なのが現実なのです。
支援員には、資格、資質が求められるのはもちろんですが、現状では給料を度外視したボランティア精神がなければ務まりません。そのため、今後より優れた人材を確保するには給与などの待遇改善が必要でしょう。
今回の新型コロナパンデミックで、政府は学童保育に助成金を増やすこと決定しましたが、一過性ではなく、学童保育の意義を評価して、恒常的に助成金のさらなる増額を強く望みたいところです。
そうでなければ、学童保育は崩壊してしまう危機をはらんでいるからです。
学童保育にしわ寄せが生じる理由
学童保育は、共働き世帯やひとり親の増加により、また、女性の就労拡大を掲げる安倍政権の成長戦略の中で、そのニーズが高まりました。それに加え、今回の一斉休校で朝から学童保育に子どもたちが押し寄せるようになっています。
休校になった学校もそれなりに忙しいでしょうが、学童保育に任せっきりというのは疑問です(筆者は神奈川県の学童保育に関わっていますが、地域によって対応が異なる場合があります)。学校が学童保育ともっと連携することを工夫すべきであり、たとえば学年ごとに週に一度でも登校日を設定することを検討しても良いのではないでしょうか。
それが、子どもの「もう家の中にいるのは限界」というストレスの解消にもつながるはずです。
また、在宅勤務になった親が、朝から子どもを学童保育に任せきりにするケースもありますが、これでは学童保育はパンクしてしまいかねません。
確かに、在宅で子どもの面倒も見ながら仕事をするのは大変なことです。ただ、一方で今回の休校で子どもと過ごす時間が増えるのは、教育について子どもと共に考える絶好の機会と捉えることもできるでしょう。
以上のような視点以外にも学童保育の問題点は多く、このままだと学童保育が危ないと言わざるを得ません。
政府は、学童保育の拡充を掲げていますが、新設のための場所や指導員の確保も容易ではない中、本当に学童保育を拡充できるのか…。子どもがより良い放課後を過ごすには、行政や地域はどうすればよいのか、真剣に考えなければならない時がきています。
学童保育の施設の問題、政府の補助金の問題、学校および父母の問題、この3つは密接に関係しています。期せずして、ここにも”3密”の問題が浮上していると言えるでしょう。
おわりに
子どものみずみずしい好奇心、驚くほどの鋭い感性、それが、いつともなくなぜか削ぎ落され、敷かれた線路道の上を真っすぐ進むように仕向けられてしまうことも往々にしてあります。
しかし、はみ出してもいい、自ら好きな道を切り開き、たとえ寄り道してでも前進できる人間力を養ってほしいというのが筆者の願いです。そして、学童保育ではその手助けができると思います。
学童保育は、年齢の違う子どもが共に過ごす空間です。ただ単に放課後の子どもを遊ばせる場所ではなく、人づくりの現場そのものとも言えます。そうした場が崩壊することのないよう、行政、学校、保護者が知恵を出し合うことが必要ではないでしょうか。
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