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「大卒イコール正規雇用」ではない現実。奨学金「無理なく返せる?」「教育ローンとの違いは?」

LIMO / 2020年6月7日 19時15分

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「大卒イコール正規雇用」ではない現実。奨学金「無理なく返せる?」「教育ローンとの違いは?」

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大防止のための緊急事態宣言が全国的に解除されました。学校の再開によって、日常を取り戻しつつある子どもたち。学習面の遅れをどうするかなど、懸念事項はたくさんあるものの、受験生を抱える家庭では、本格的に進路選択に向けて気を引き締めなおしているというところではないでしょうか。

5~6月は、奨学金の予約採用の募集が始まる時期。そこで、今回は「教育資金」について各種データをみながら考えていきます。

大学・短大進学率と、卒業後の就職者の割合

まず、文部科学省が2019年12月に公表した『令和元年(2019年)度学校基本調査(確定値)(https://www.mext.go.jp/content/20191220-mxt_chousa01-000003400_1.pdf)』の結果から、高等教育機関への進学に関する数字をみていきます。まずは、進学率からです。

高等教育機関への進学率

大学・短大進学率…58.1%(前年度より0.2ポイント上昇で過去最高)

大学(学部)進学率…53.7%(前年度より0.4ポイント上昇で過去最高)

専門学校進学率…23.8%(前年度より1.1ポイント上昇)

また、上記に、高等専門学校4年生を含めた、高等教育機関進学率は82.8%となり、こちらも前年度より1.3ポイントの上昇で過去最高を記録しています。

では、卒業後の就職についてのデータもみていきます。

卒業者に占める就職者の割合

高校卒業者…17.6%(前年度より0.1ポイント上昇)

うち,正規雇用は17.5% (前年度より0.1ポイント上昇)

大学卒業者(学部)…78.0% (前年度より0.9ポイント上昇)

うち,正規雇用は75.3% (前年度より1.2ポイント上昇)

大学院修了者(修士課程)…78.6% (前年度より0.1ポイント上昇で過去最高)

うち,正規雇用は75.9%(前年度より0.1ポイント上昇)

大学院修了者(博士課程)…69.0% (前年度より1.3ポイント上昇で過去最高)

うち,正規雇用は54.8%(前年度より1.2ポイント上昇)

前年度からの就職者の割合、正規雇用の割合ともに上昇していることがわかります。ただ、その一方で、例えば大学卒業者(学部)なら、2.7%が「就職はできたが、非正規雇用である」という計算になります。また、同調査の結果から、一時的に仕事についた者が1.4%、または進学や就職の準備中、家事手伝い、ボランティアなどをしている者の割合は6.7%となっています。大学を卒業しても正規雇用以外の状態である人も一定数存在するということがわかります。

2.7人に1人が奨学金を利用

先ほどのデータでは、「大学に進学しても必ずしも正規雇用に結びつくとはいえない」という現実も垣間見ることができました。それでも進学率は年々上昇しています。とはいえ、すべての家庭が子どもの希望をかなえられるだけの教育費を準備できるわけではありません、そんな経済的な困難を抱える学生を支援する仕組みが奨学金制度です。

文部科学省管轄の独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)(https://www.jasso.go.jp/about/jigyou_rikai/__icsFiles/afieldfile/2019/06/04/190604gorikai.pdf)(※1)によると、2017年度における高等教育機関(大学・短大・大学院・高等専門学校・専修学校[専門課程])の学生に対する貸与割合は37%。2.7人に1人がJASSOの奨学金を利用していることが分かります。

多くの学生が奨学金制度を利用している背景には、進学に関わる費用の高さ、そして家計収入の減少などにより教育費が家計の大きな負担になっていることが要因だといえるでしょう。日本政策金融公庫の「令和元年度『教育費負担の実態調査結果』(https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kyouikuhi_chousa_k_r01.pdf)」から、入学・在学にかかる費用に関するデータをみていきます。

卒業までにいくらかかるの?

入学費用には、「受験費用」「学校納付金」「入学しなかった学校への納付金」も含まれます。在学費用には、授業料や通学費などの「学校教育費」、参考書購入などの「家庭教育費」も含んだ数値となっています。

高専・専修・各種学校

[入学費用]57万円+[在学費用]289万4000円
[入在学費用合計]約346万円

私立短大

[入学費用66万9000円+[在学費用]295万6000円
[入在学費用合計]約363万円

国公立大学

[入学費用]71万4000円+[在学費用]428万円
[入在学費用合計]約499万円

私立大学文系

[入学費用]86万6000円+[在学費用]630万4000円
[入在学費用合計]約717万円

私立大学理系

[入学費用]84万5000円+[在学費用]737万2000円
[入在学費用合計]約822万円

短大を選んだ場合でも合計で360万円超、国立大で約500万円、私立大では700万円から800万円が必要となることが分かります。では、こうした教育費は、家計においてどれくらいの割合を占めているのかを見ていきます。

世帯年収に占める在学費用の割合

世帯年収に占める大学進学費用(家庭の子ども全員にかかる費用)の割合です。
《世帯収入別割合》

200~400万円未満:37.5%

400~600万円未満:22.5%

600~800万円未満:19.9%

800万円以上:13.3%

平均で16.3%ですが、世帯収入が低いほど、その負担の重さが分かります。

奨学金と教育ローン、違いは何?

教育ローンは、奨学金とならぶ、教育資金準備の方法です。両者の大きな違いは、

金融機関に申し込む教育ローンは親が申込んで借主となる

貸与型の奨学金は学生本人が借主となる

という点です。どちらも負債ですので、一定期間返済が滞れば信用情報にも関わります。

以下、特徴を整理していきましょう。
貸与型奨学金(※2)
年利0.157~0.003%(利率固定方式・見直し方式)/毎月貸付型

金融機関の教育ローン(※3)

年利2~4%台が多い

希望の時期にまとまった金額の融資を受けられる

融資実行までが短期間のことが多い

日本政策金融公庫「教育一般貸付(国の教育ローン)(https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/ippan.html)」

固定金利1.7%(2020年6月現在)

所得の制限(上限)あり

融資実行までに数週間かかることも

教育ローンの融資金利は高めだといえますが、受験前から申し込みが可能で、融資審査が通れば希望の時期にまとまった金額を受けることができます。受験費用や合格後の納付金、入学費や住居費など、進学に関わることに幅広く利用できるというメリットがあります。

ただし借入金額・金利は返済総額に大きく影響します。奨学金や教育ローンを検討する場合は、早めに情報を集めて預貯金や学資保険などと合わせて計画を立てていきましょう。冒頭でもお話したとおり、例年、進学前年の5~6月頃より奨学金の予約採用の募集が開始します。金融機関によっては住宅ローン利用者の金利優遇があるケースもありますので、情報を広く集めて比較・検討していくことをおすすめします。

親子で返済計画の共有を

奨学金も教育ローンも、平たくいえば借金です。若年世代にとって「奨学金を利用する」という現実は、どのように受け止められているのでしょうか。SMBCコンシューマーファイナンス株式会社の「10代の金銭感覚についての意識調査2020(http://www.smbc-cf.com/news/datas/chousa_200402.pdf) 」(2020年4月2日公表)によると、奨学金を利用中の学生のうち、2割強の人が内容をほとんど把握していないことが判明しています。「返済義務を負う人」について理解している大学生は約6割(59.5%)でしたが、返済方法(48.1%)や返済開始時期(40.5%)については5割を下回る結果となりました。

返済の繰り延べは家庭状況に合わせて

奨学金は借主が学生本人であり、基本的に卒業と同時に返済が始まります。先述の文部科学省の調査結果からも、「大学を卒業すれば安心」とはいえない状況が続いている点も頭に入れておきましょう。

卒業後の進路など、将来の見通しに不安がある場合は返済開始時期を慎重に検討しましょう。教育ローンは借入後から返済が始まる方式と、奨学金と同じように卒業後に返済が始まる方式も選択できます。繰り延べたくなる気もしますが、早めに返済を始めると総返済年数を短くすることもできます。ただし家庭内で進学が続く時期など、返済を後に繰り延べした方がよい場合もあります。他のきょうだいの年齢・進学予定も含めて返済を計画していきましょう。


さいごに

奨学金や教育ローンの利用を抑えるためにも、早期から教育資金の準備をしておくことをおすすめします。また、現在、COVID-19の影響による政府の支援策も打ち出されています。学生生活の継続に支障をきたすケースに対応する『学生支援緊急給付金(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/mext_00686.html)』制度や、奨学金返還中の人を対象にした減額返還(https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan_konnan/gengaku/index.html)・返還期限猶予(https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan_konnan/yuyo/index.html)などの救済措置も頭に入れておくとよいでしょう。

教育資金の準備や融資を受けるという経験、そして想定外の事態が起きた時に支援措置などの情報を集め、SOSを求めることは、大きな社会経験となります。正しい知識とお金に関する能力(金融リテラシー)にもつながりますので、家族で計画を共有していくことが大切だといえます。

【参考】
「令和元年度学校基本調査(確定値)(https://www.mext.go.jp/content/20191220-mxt_chousa01-000003400_1.pdf)」文部科学省
(※1)「奨学金事業への理解を深めていただくために(https://www.jasso.go.jp/about/jigyou_rikai/__icsFiles/afieldfile/2019/06/04/190604gorikai.pdf)」2019年2月公表 日本学生支援機構(JASSO)
「令和元年度『教育費負担の実態調査結果』(https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kyouikuhi_chousa_k_r01.pdf)」日本政策金融公庫
(※2)「令和2年度 貸与利率一覧」(https://www.jasso.go.jp/shogakukin/seido/riritsu/riritsu_19ikou.html#r02)(2020年度)日本学生支援機構(JASSO)
(※3)「みずほ銀行教育ローン」(https://www.mizuhobank.co.jp/retail/products/loan/education/index.html)みずほ銀行/「ローン金利」(https://www.smbc.co.jp/kojin/kinri/loan.html)三井住友銀行
「教育一般貸付(国の教育ローン(https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/ippan.html))」日本政策金融公庫
「10代の金銭感覚についての意識調査2020(http://www.smbc-cf.com/news/datas/chousa_200402.pdf)」(2020年4月2日公表)SMBCコンシューマーファイナンス株式会社

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