8050問題…子供部屋おじさん、子供部屋おばさんが誕生した背景とは
LIMO / 2020年6月13日 20時45分
8050問題…子供部屋おじさん、子供部屋おばさんが誕生した背景とは
今、問題視されている「8050問題」。『ひきこもり』といわれる人の高齢化が進み、親世代が80代、ひきこもりが50代という時代になってきています。厚生労働省が平成30年度に調査した内容を報告した『地域包括支援センターにおける「8050」事例への対応に関する調査(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000525388.pdf)』によると、40~50代で親と同居している単身者の低年収・非正規雇用率の高さなど厳しい現実が浮き彫りになっています。
50代になるまでひきこもりをしていた人たちは、どうして部屋から出られなくなってしまったのでしょうか。その原因をひも解くと、80代の親たちの葛藤も浮かび上がりました。
子供部屋おじさん(Aさんの場合)
現在51歳になるAさんのひきこもりは、中学2年生の不登校から始まったそうです。当時、クラスに馴染めなかったAさんは、学校の居心地の悪さから逃げたくてしかたなかったといいます。
教室の中は憂鬱で、保健室の中は退屈……最後に救いを求めたのが、自分の部屋でした。誰からも目をつけられず、干渉されず、心穏やかに過ごせるのは部屋の中だけだと感じたAさんは学校へ通うことをやめ、家族以外のやりとりを絶ちました。なんとか中学校は卒業したものの高校への進学はせず、就職もしたことがないまま、ここまできてしまったのだとか。
「私たちが甘やかしたのが悪かったのです」という80代前半の両親は、自身の年金で生計をたてているそうです。外部からの交流をシャットアウトしてしまったAさんには、両親の他に頼る人はいないといいます。Aさん自身も「もし両親がいなくなってしまったら……」と不安を感じているようですが、今さら外に出る勇気がなく、その危機感の中を生きているようでした。
子供部屋おばさん(Bさんの場合)
56歳になるBさんがひきこもりになったのは、40歳で経験した離婚が原因でした。それまではひきこもりとは無縁の生活で、離婚直前までパート勤務をしていたというBさん。人並みに世間とのつながりはあったのだとか。
元夫とは性格の不一致から離婚し、仕事を辞め、実家に帰ったそうです。はじめは「少しの間、実家で休もう」と軽い気持ちでひきこもっていたBさん。なかなか新しい仕事を探す気力が湧かず、気づけば3年の月日が過ぎていたそうです。
「これではダメだ」と両親の後押しで新しいパートを始めたものの、働き始めた直後に母親の認知症が発覚。母親の介護が必要になったBさんはまた仕事を辞め、介護に専念するようになりました。6年におよぶ介護ののち、母親が他界。心にポッカリと穴が空いてしまったBさんは、生きがいだった母を失った喪失感から、再度ひきこもりに戻ってしまいました。
「これではいけない」と頭ではわかっているものの、父親のサポートに甘えているのが現状だといいます。
子供部屋おじさん(Cさんの場合)
過度な期待をかけられていたCさんは、今では55歳。幼少のころから優秀だったCさんは、県下でもトップクラスの進学校に通っていたのだとか。両親共に教職者ということで両親からの期待も厚く、狙う大学も一流だったといいます。
そんなCさんがひきこもってしまった原因は、大学受験の失敗でした。今まで挫折を知らなかったCさんにとって、第一志望の不合格はプライドと自尊心を傷つけるもので、合格した友人に合わせる顔がないと、部屋に閉じこもってしまいました。
「立ち直る」という経験のなかったCさんは、ひとつの失敗が尾をひいてしまい、そのまま大学受験を諦め、就職どころか勉学にも興味を失ったそうです。両親の圧にも耐えられず、完全に孤立したCさんは自室から一切顔を出さなくなってしまいました。
両親は「どこで間違えてしまったのか…」と今もなお悩み続けています。深夜になると、暗いキッチンでゴソゴソと食べ物を漁るCさんの気配を、ただ見守ることしかできないようです。
『自立』を求める家族
どの親も「わが子をなんとかしたい」と思っています。しかし、親世代が年金生活となり生活も困窮するなか、無職の子どもをサポートし続けるには無理が生じるようです。また、「私たちが死んだあと、どう生きていくのか…」と気に病む親が多く、少しでも世間との接点をもってほしいと願っていました。
このことを内閣府でも問題視し、厚生労働省が「ひきこもり対策推進事業(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)」を発足しました。ひきこもっている本人、またはその家族の相談などを受け付ける「ひきこもり地域支援センター」を立ち上げ、各家庭にあった自立支援をおこなっています。中高年のひきこもりが増加傾向にあるなか、ひとつの光となっているようです。
今後、ひとりでも多くのひきこもりが悩まなくてもいいよう、地域全体で理解する必要があります。この支援の輪が広がり、幅広い世代の問題が解消されれば、未来の8050問題も好転するのではないでしょうか。
【参照】
厚生労働省「地域包括支援センターにおける「8050」事例への対応に関する調査(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000525388.pdf)」「ひきこもり対策推進事業(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html)」
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