あなたの預金は一体どうなる? 現役銀行員が教える「休眠預金」の行方

LIMO / 2020年7月24日 20時0分

写真

あなたの預金は一体どうなる? 現役銀行員が教える「休眠預金」の行方

最近、何かと耳にする機会が増えた「休眠預金」。たとえば、2020年5月20日付の朝日新聞※では「公益活動をするNPO法人などへの休眠預金を活用した助成金について、政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急対応として、臨時に数十億円規模を増やす方針を決めた」と報じています。

そもそも休眠預金とは、私たちの生活にどのように影響してくるのでしょうか。今回は、そういった「休眠預金」に関する疑問を、現役銀行員である著者がやさしく解説していきます。

※「休眠預金使ったNPOへの助成金、増額へ コロナ対応(https://www.asahi.com/articles/ASN5N6365N5NUTFL00H.html)」(朝日新聞デジタル)

「休眠預金」とは?

休眠預金とは、10年以上動きのない預金のことです。他にも様々な定義や、休眠預金になる条件などありますが、まずは「10年以上動きがない預金」とイメージしてください。

休眠預金を、預金の状態で示すなら「預金者等が名乗りを上げないまま、10年間放置された預金」とも言えます。休眠預金は毎年1,200億円程度発生し、500億円程度は払い戻しされるので、差引くと1年で700億円の休眠預金が生まれていることになります(平成26~28年度の水準)。毎年700億円とはちょっと信じがたい金額ですね。

では次に、休眠預金を4つの特徴にわけて説明していきましょう。

休眠預金の特徴1:異動「預金者が名乗りを上げない預金」

異動とは「預金者が、今後も預貯金を利用する意思を表示したと認められる取引」のことです。

具体的に言うと、以下のようなことが異動と呼ばれています。

入出金

通帳や証書の記帳、繰り越し

預金者による残高照会(残高を問い合わせること)

つまり、10年の間に上記のような何らかの動きがあれば、休眠預金にはならないというのが原則になります。逆に言えば、「10年間異動がなければ、預金者が名乗りを上げない放置された預金」として休眠預金になってしまうのです。

休眠預金の特徴2:移管「昔と今では休眠預金の取り扱いが違う」

昔と今とは、2018年1月に「休眠預金等活用法」が施行される前後の違いという意味です。休眠預金等活用法とは、毎年増え続けていく巨額な休眠預金を、社会に役立てようという趣旨で制定された法律です。

休眠預金自体は古くからあるもので、10年間異動がなければ休眠預金になることも、昔から変わっていません。

ただ以前は、休眠預金は銀行のものになっていました。これを「雑益(雑益預金、雑益口座)」と言います。

預金が休眠預金になると、一定の手続きを経て銀行の資産に組み入れられます。銀行から見れば、資産が増えて一時的な利益となることから「雑益」と呼んでいました。ただし、雑益になった後でも預金者から申し出があれば、休眠預金の払い戻しに応じる必要があるので、その場合は銀行の資産が減り「雑損」として処理されていました。

一方現在では、休眠預金が銀行から預金保険機構へと移され、やがては休眠預金等活用法により社会に役立てられることになっています。これが、いわゆる「移管」です。

休眠預金の特徴3:移管前の「公告」と「通知」

しかしながら、移されるといっても、いきなりそうなるわけではありません。休眠預金が移管される前には「公告」と「通知」という2つの手順が必要です。

休眠預金になる手順①~公告

最後の取引(異動)から9年以上経過すると、休眠預金の対象になる預金について金融機関により「公告」が行われます。要は、銀行から「そろそろ休眠預金になっちゃうのは、この期間に該当する預金ですよ」とお知らせ(公告)をするのです。公告の内容は、

預金の動きがなかった期間(対象となる預金)

移管される時期(預金保険機構への納期限)

などで、通常は金融機関のホームページに掲載されます。公告では個人に関する内容は公表されません。

休眠預金になる手順②~通知

残高が1万円以上あれば、銀行から「通知」が郵送または電子メールで送付されます。通知の内容は「公告」に記載されたことに加え、個別の預金残高などの個人情報です。ただし、残高が1万円未満の場合は通知を発送してくれません。

このような「公告」「通知」の手順を経て、銀行から預金保険機構に移管されるのですが、公告を見逃し、また銀行から通知もなければ、そもそも自分に預金があったことにも気づかないまま、移管されてしまうこともあり得るのです。

休眠預金の特徴4:払い戻し「あなたの預金が取上げられるわけではない!」

預金保険機構に移管された休眠預金は、社会に役立てられますが、預金者本人が請求すれば払い戻すことも可能です。このあたりは前出の「雑益」と同じで、休眠預金は取上げられて使われてしまうのではありません。

休眠預金は、「一時的に預金者から拝借して、社会に役立てる」といったほうがイメージしやすいでしょう。拝借しているだけですから、預金者本人が申し出れば当然払い戻してもらえます。

おわりに

ここまでをまとめると、「預金が休眠預金になると、社会に役立てるために使えるという法律ができたが、預金者本人が請求すれば、その人のもとに戻ってくる」、これが休眠預金です。

休眠預金等活用法の施行により、あなた名義で、あなたの知らない銀行預金が社会の役に立っているとしたら…?

もし、筆者の預金が休眠預金になりかけていて、残高1万円以上ならば銀行から通知が届くはずです。何とか時間を作って払い戻しにいきますので、休眠預金にはなりません。しかし、残高1万円未満ならそもそも通知もないので、自分に預金があったとは知らないうちに誰かの役に立つ…それはそれで良いのではないか?と筆者自身は考えます。

もちろん、考え方は人それぞれです。みなさんは「休眠預金」についてどう思いますか?

【参考】「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律 説明資料(https://www5.cao.go.jp/kyumin_yokin/setsumeisiryou/siryoshu.pdf)」(内閣府・金融庁 平成30年)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング