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ZOZOが通販で難易度トップの「靴」に参入~ ZOZOマット無料配布での勝算は?

LIMO / 2020年8月5日 20時0分

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ZOZOが通販で難易度トップの「靴」に参入~ ZOZOマット無料配布での勝算は?

足のサイズを立体測定できる「ZOZOマット」を武器に、ネット通販では最もハードルが高いとされる「靴」の専門サイトをZOZOがオープンした。

返品・サイズ交換無料などの高品質サービスで先行する競合サイトもあるが、これらサイトにどこまで迫れるのか注目が集まる。成功が難しいとされる靴分野において、同社の勝算や可能性を予測・検証したい。

「靴」は返品も多くネット通販では成功しにくい商材

洋服と違い左右で微妙にサイズが違う「靴」は試し履きが必須ともいわれ、ネット通販では難易度がトップの商材だ。サイズが0.5ミリ単位のため幅広い品ぞろえが不可欠で、在庫も積み上がりやすい。返品率が高いのも大きな特徴で、必然的に利益率も薄いといえる。

これまでアマゾンなどが靴専門サイトに挑戦したものの、なかなか成功には結びつかなかったことが、そのハードルの高さを示している。ところが、「ZOZOマット」でサイズ問題の解消につなげるという施策を打ち出し、今年3月にZOZOが靴専門サイト「ZOZOシューズ」をオープンした。

3Dサイズ計測の「ZOZOマット」を無料配布し本格参入

ZOZOの事前調査によれば、ネットでの靴購入については「サイズが不安」との回答が8割を占めた。それでも踏み切った背景には、過去に開発したボディ採寸用「ZOZOスーツ」の失敗で培った知見をもとに開発した計測ツール「ZOZOマット」への信頼と期待がある。

「ZOZOマット」は足を乗せたマット上のドットマーカーをスマホカメラが読み取り、足の長さ・幅・周囲などを3Dで計測して最適サイズを表示する仕組みだ。着用や計測が面倒だった「ZOZOスーツ」に比べると、はるかに手軽に試せる。

体型別サイズを用意し失敗した「ZOZOスーツ」の轍を踏まないように、コスト削減や生産日数短縮にも配慮した。家族で使い回せる仕組みにして無駄な配布を省くとともに、基本レイアウトを用紙の印刷仕様とすることで低コスト・短期間での大量配布が可能となった。

昨年から無料配布の予約を開始し、初日だけで20万件以上の注文があったという。今年3月には約119万件に達し、6月時点での計測者数はおよそ100万人を突破している。

「相性度」をサイズ別に表示し年商1,000億円を目指す

「ZOZOマット」がある程度行き渡ったところで、今年3月に「ZOZOシューズ」を開設した。他のサイトと画期的に異なるのは、試着しなくても最適な靴のサイズを見つけられることに尽きる。

どのサイズが最適かということは、靴の形や締め付け感、ゆとりなどが人によって違う。そこで、ユーザーごとの計測データなどをもとに、履いた時のフィット感に満足できる確率を「相性度」として靴の各サイズ別に表示したのだ。

ZOZOの昨年1年間における靴分野の取扱高は、前年比2桁増の約400億円だった。「ZOZOマット」の話題が追い風になった可能性もあるが、今年はさらに増収を見込み、将来は1,000億円市場を目指すという。

「靴」に挑戦した先行企業の施策とハードル

靴のネット通販という難関に挑戦したZOZOだが、実はすでにこの難関に挑んだ複数の先行企業がある。2011年に靴専門サイト「ロコンド」を開設したロコンド(旧社名ジェイド)が代表的な1社で、“試着できる靴サイト”をコンセプトに掲げた。

同社最大の武器は、全商品を送料無料で即日発送し、商品到着後99 日以内は返品もサイズ交換も無料というサービスだった。サイズ別に複数の靴を無料で取り寄せて最適な商品を選び不要な靴は無料返送が可能というもので、開始後1年間で登録者数は10万人を超え、サイト訪問者数は月に100万人を上回った。

しかし、やはり靴だけでの収益確保は厳しかったようで、その後アパレルの扱いにも着手。無料期間は基本的に返品が21日間、サイズ交換が14日間に短縮され、サービスと収支のバランスの難しさが浮き彫りになった。

その後はF1層(20〜34歳の女性)に人気のアパレルサイトなどを次々に買収し、ファッションモールとしての規模拡大を狙った。ただ靴専門サイトとしての存在感は薄らぎ、買収によって取扱高は増えたものの、ここ2期は連続赤字となっている。

アマゾンも2008年、満を持して自社の靴専門サイト「ジャバリ」をオープンした。全商品を翌日に無料配送し30日以内なら無料で返品可能なもので、その後「ロコンド」に対抗して期間を365日へと大幅に延長した。

しかし、2014年には30日に短縮され、その後「ジャバリ」はなくなり、靴は現在「Amazon.co.jp」内の1つのカテゴリーとして扱われている。返品可能期間は30日のままだが、返送料はユーザー負担となる。

「ZOZOシューズ」を成功へ導くカギは?

このように靴のネット通販では、先駆者たちが試着サービスを充実させることでハードルを超えようとしたが、成功に結びついたとは言い難い。現在でもサイズ交換や返品期間にかなり余裕を持たせているものの、解消には至っていない。

「ZOZOシューズ」には専用ルールがなくアパレルに統一されていて、返品可能期間は一律7日以内となる。返品送料はユーザー負担でサイズ交換は受け付けておらず、交換は1度返品してから再注文する必要がある。ロコンドやアマゾンと比べると、返品・交換サービスでは勝ち目があるとは言い難い。

サービスの優位性を打ち出していないということは、やはり「ZOZOマット」頼みの面が強いということになる。ならばその強みを最大限発揮していくことが、成功へのカギといえるだろう。

そのためには、まずは計測の「相性度」をまだ表示していない靴についても対応を進め、できるだけ多くの商品に導入することが必要だ。さらに、ユーザーコメントなどを通じて計測精度をより高めていけば、サイズのハードルは下がり、取扱高が伸びる可能性もある。

利益面では、計測数が増えていくことでコスト低減が見込めそうだ。サイズの多さやフィット感の充実度に合わせて商品の仕入量や在庫量を調整し、返品抑制につなげるなど、靴通販特有の難題解消に反映させていくことを期待したい。

また、現状では靴のプライベートブランド展開予定はないそうだが、最近ではロコンドが著名ユーチューバーとのコラボで成功している例もある。独自では困難でも、DtoC※を活用した商品開発などは選択肢として検討すべきだろう。

ネット通販の覇者とされるZOZOがはたして困難な靴分野で成功できるかどうか、先行企業との攻防もウォッチしながら、取扱高1,000億円への挑戦を見守りたい。

※DtoC(Direct to Consumer):製造者が直接消費者と取引するビジネスモデル

【参考資料】
株式会社ZOZO 2020年6月11日付ニュースリリース(ZOZOMAT 計測者数)(https://corp.zozo.com/news/20200611-10522/)
株式会社ZOZO 2020年3月期 決算説明会資料(https://d31ex0fa3i203z.cloudfront.net/wp/ja/wp-content/uploads/2020/04/2003_4Q_web_J.pdf)
株式会社ロコンド 2020年2月期決算短信〔日本基準〕(連結)(https://www.locondo.co.jp/wp-content/uploads/2020/04/2020%E5%B9%B42%E6%9C%88%E6%9C%9F-%E6%B1%BA%E7%AE%97%E7%9F%AD%E4%BF%A1.pdf)

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