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共働き世帯の落とし穴~夫は遺族年金をもらえるの?~

LIMO / 2020年7月30日 11時55分

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共働き世帯の落とし穴~夫は遺族年金をもらえるの?~

万が一の保障を考えるとき、世帯主(多くの場合は夫)の保障を重視するイメージが強いと思います。しかし年々、女性の就業率は上昇し、25~44歳の女性の就業率は76.5%(2018年 ※1(http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r01/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-02-01.html))、共働きの家庭は1,188万世帯で、「男性雇用者と無業の妻からなる世帯(つまり妻が専業主婦の世帯)」の641万世帯の約1.9倍(2017年)となっています(※2(https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/18/backdata/02-01-01-03.html))。

夫婦2人分の収入を前提としている家庭も多いのではないでしょうか。妻にもしものことがあると、収入の面だけでなく、家事・育児の主な担い手を失うことになるケースが多いでしょう。共働き家庭ほど、「もしもの時の保障面」について再確認しておきたいですね。

(※1)「男女共同参画白書 令和元年版 就業者数及び就業率の推移(http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r01/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-02-01.html)」(2018年データ)男女共同参画局
(※2)「共働き等世帯数の年次推移(https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/18/backdata/02-01-01-03.html)」平成30年(2018年)版 厚生労働白書 厚生労働省


遺族年金の受給要件とは

妻にもしものことがあっても「死亡退職金や遺族年金もあるのでは?」と考える方もいるでしょう。ただし死亡退職金は定年退職者の満額支給とは異なりますし、定年時の退職金でさえ、支給額は年々低下傾向にあるのです(※3(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf))。

そして、遺族年金の受給要件については、子の有無や年齢条件など、加入している年金により要件が異なります。

まず、遺族基礎年金(国民年金)と遺族厚生年金、共通の要件として、年金加入者に生計を維持されていた遺族(受給対象者の年収は850万円未満)という条件があります。ここから国民年金、厚生年金それぞれの要件について見ていきましょう。

(1)妻が国民年金に加入の場合

妻が国民年金の場合、生計を維持されていた遺族の中で

子のある配偶者

のみが遺族基礎年金の受取対象者となります。「子」は18歳までの子ども(または、20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子ども)に限定され、夫婦間に子どもがいない場合は対象外です。

また、遺族基礎年金を受給できないときでも、代わりとして遺族基礎年金から「死亡一時金(※4(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/sonota-kyufu/1go-dokuji/20140422-01.html))」を受け取ることができますが、金額的には加入年数に応じて12万円から32万円の範囲となります。

(2)妻が厚生年金に加入の場合

遺族厚生年金については、子どもがいない夫婦でも受給可能な場合があります。受取り対象者は、

子、孫

55歳以上の夫・父母・祖父母(支給開始は60歳から)

となり、遺族が「妻」の場合と「夫」の場合により要件に大きな違いがあります。

妻の場合は被扶養者であれば受給対象(ただし、30歳未満で子どもがいない妻の場合は、5年間の有期年金)となりますが、遺族が夫の場合、以下のように年齢面などの要件があります。

妻によって生計を維持されていたこと

妻が亡くなった時に年齢55歳以上

夫が基礎年金を受給中の場合に限り、遺族厚生年金も合わせて受給できる

この要件に該当した場合、60歳から支給を受けられます。

また、さらなる相違点として、遺族が妻の場合の「中高年寡婦加算」があります。遺族の妻が年齢条件等の要件に該当した場合、遺族厚生年金に加算があるのです。

《中高年寡婦加算》

夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻

40歳当時遺族基礎年金を受け取っていた妻が、子どもが18歳((1級・2級の障害の子どもの場合は20歳)に到達したため、遺族基礎年金を受給できなくなった時

これらの条件を満たす場合、遺族厚生年金に年額58万6300円(遺族基礎年金の4分の3)の加算があります(2020年度※5(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/sonota/20150401-02.files/202004.pdf))
。遺族が夫の場合は、この制度は適用されません。

このように、公的保障の制度をもとに、家庭の状況に合わせて、万が一の事態を想定していくことが大切だといえるでしょう。

(※3)「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書『高齢社会における資産形成・管理』(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf)」金融庁
(※4)「死亡一時金(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/sonota-kyufu/1go-dokuji/20140422-01.html)」日本年金機構
(※5)「年金給付の経過措置一覧(令和2年度)(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/sonota/20150401-02.files/202004.pdf)」日本年金機構

「妻が働いている場合」どれくらいの保障が必要?

共働き世帯の場合、妻の収入ありきで住宅や教育、貯蓄の計画を立てているケースも多いのではないでしょうか。妻が倒れた場合、収入面の損失と同時に、家事・育児の主な担い手を失うことにもなります。

また、夫が遺された場合、遺族年金の要件の厳しさも見落としがちです。家族の年齢構成等を含めて、家庭により必要な額は異なってきます。ここから、働いている妻の保障について考えてみましょう。

[1]生命保険

死亡保障は遺された家族の生活に備える保障です。万が一、妻を失った場合の保障として

[収入] 遺族年金+配偶者の収入+死亡退職金+預貯金・・・

[支出] 葬儀・整理資金+教育費+家族の生活費+配偶者の老後生活費・・・

このような[収入]ー[支出]から保障額を検討していきましょう。

また、住宅ローンについてはローンを組む際の団体信用生命保険により、借主が死亡した場合はローンの残債がなくなるという保障が付いています。しかし、夫が主債務者で団信加入の場合、妻が連帯債務者として一緒に返済していても、妻の死亡により返済がなくなることはありません。また、夫婦両名を債務者とするペアローンを利用している場合でも、団信により返済を免除されるのは妻の債務部分のみとなります。死亡保障については、夫婦それぞれのケースで必要な保障を検討していきましょう。

[2]収入保障保険

「収入保障保険」は死亡または高度障害になった場合に備える保険で、生命保険の一種です。保険適用期間終了まで毎月、または一時金で保険金が支払われ、掛け捨て型の商品のため保険料も割安となっています。

よく似た名前の「所得補償保険(就業不能保険)」は、病気やケガで働けなくなった場合の収入減に備える保険です。病気やケガで一定期間働けなくなったときに、毎月一定額を受取ることができます。

これらのような保険を利用して万が一に備える方法も検討してみてはいかがでしょうか。

[3]健康保険組合の「傷病手当金」

健康保険の被保険者である場合は、ケガや病気で休職した際に「傷病手当金」が最長1年6ヵ月支給されます。ただし金額的には標準報酬日額(おおよその日給額)の3分の2となり、残業代などは含まれません。また、賞与の支給については企業ごとに規定があります。

さらに専業主婦や、国民健康保険に加入している自営業やフリーランス(※6(https://www.mhlw.go.jp/content/000607518.pdf))などの場合、傷病手当金の制度がないため注意が必要です。

ケガや病気に備える「医療保険」についても、「高額療養費制度もあるし、傷病手当金の支給もあるから不要」と考える方もいるでしょうが、治療に関わる自己負担の部分や収入減少の面も考慮に入れて検討してみてはいかがでしょうか。

(※6)ただし、期間限定の措置(令和2年1月1日~9月30日の間で療養のため労務に服することができない期間)として、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染するなどした場合は、国民健康保険の被保険者にも給付されます。
「新型コロナウイルス感染症の対応における傷病手当金の支給について(https://www.mhlw.go.jp/content/000607518.pdf)」厚生労働省

まとめにかえて

共働きであれば余裕を持って賄える家計でも、片方が倒れたとたん、両輪のバランスが崩れてしまうということは大いにあり得ます。家計を支え、家事・育児・教育面を主として担うことが多い妻の負担を考えると、もしものときへの備え方の見直しが必要、というケースも多いのではないでしょうか。

各家庭にフィットした保険についてしっかりと考えていきましょう。また、家事や子育てにどう対応していくべきか、しっかり情報を集めて夫婦間で共有しておくことも、必要な備えとなるはずです。

【参考】
(※1)「男女共同参画白書 令和元年版 就業者数及び就業率の推移(http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r01/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-02-01.html)」(2018年データ)男女共同参画局
(※2)「共働き等世帯数の年次推移(https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/18/backdata/02-01-01-03.html)」平成30版 厚生労働白書 厚生労働省
(※3)「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書『高齢社会における資産形成・管理』(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf)」金融庁
(※4)「死亡一時金(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/sonota-kyufu/1go-dokuji/20140422-01.html)」日本年金機構
(※5)「年金給付の経過措置一覧(令和2年度)(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/sonota/20150401-02.files/202004.pdf)」日本年金機構
(※6)「新型コロナウイルス感染症の対応における傷病手当金の支給について(https://www.mhlw.go.jp/content/000607518.pdf)」厚生労働省

 

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