通販「売上高ランキング」 アマゾン1強のなか大幅増収を達成した企業は?
LIMO / 2020年9月22日 18時0分
通販「売上高ランキング」 アマゾン1強のなか大幅増収を達成した企業は?
ネット通販やテレビショッピングなど通信販売の売上高は年々伸びていて、2019年度は物販だけで9兆円に迫ることがわかりました。同時期に発表されたランキングを見ると、長年独走を続けるトップのアマゾンを追ってさまざまな企業が躍進しています。
これら好調な増収企業に共通するのは、商品力だけに頼らずユーザーサービスを強化するという動きです。通販市場の現状やアマゾン1強の背景、プラスアルファの展開で業績アップにつなげている意外な企業などを紹介します。
21年間連続で成長する通販市場、規模は8.8兆円超え
日本通信販売協会が毎年8月に発表する「通販・EC市場売上高(物販)」によると、2019年~2020年にかけての市場規模は前年比8.2%増の8兆8,500億円まで拡大しました。
21年間の連続成長となっていますが小売市場に占めるシェアとしてはまだ6.1%にすぎず、今後大きな伸びしろと可能性を秘めているといえるでしょう。なお、この売上高には金融商品やダウンロード商材などは含まれず、基本的に物販だけの売り上げとなります。
同時期には業界専門紙が「売上高ランキング」を発表していて、今回もトップのアマゾンが2位以下を大きく引き離して独走状態を維持しました。ランキングは企業単位の通販・EC(ネット通販)売上高をまとめたもので、流通額でカウントする「楽天市場」や「Yahoo!ショッピング」などのショッピングモールは含まれていません。
アマゾンはモールだけでなく自社でもオンラインストアを展開しているため、その売上高がランキングに反映されます。幅広い品揃えに加え、配送料無料で最短翌日に届くプライム会員制度などがリピート購入を押し上げているとみられます。
アマゾンの売上高は前年比15.7%増の1兆7,610億円と伸び、同7.5%増で3,810億円の2位アスクルに大差をつけて独走状態です。よほどのことがない限り、この牙城は崩れそうもありません。
ビックカメラが前年比25%増の大幅増収
ネットに勢いがある通販市場ですが、紙媒体のカタログは不調なもののテレビショッピングは概ね好調です。
中でも自社で専門チャンネルを持ち、ライブ番組も放映する「ジャパネットたかた」を有するジャパネットホールディングスは伸びが続き、売上高は前年比2.1%増の2,070億円とランキング3位になっています。
単価が高い家電製品で消費増税前の駆け込み需要をつかんだことも要因の1つですが、エアコンの取り付け工事費無料や工事を担う協力店網を強化・整備するなど顧客視点に立った周辺サービスが奏功したといえます。
家電大手企業も売り上げを拡大しており、ヨドバシカメラ、ビックカメラ、上新電機、ヤマダ電機などが軒並み30位以内に名を連ねています。
中でも12位のビックカメラは配送サービスの強化などで、売上高が前年比25.0%増の1,080億円と大幅増収になりました。最近では最短45分でネット購入商品を届けるサービスにも着手しています。他の家電大手各社も即日配送や翌日配送に取り組んでいて、大型家電や住設機器の設置サービスなども強化しています。
家電ネット販売のストリームは、お試し需要も見込んで家電レンタル事業にも参入。高額な新製品を試してみたいというユーザーニーズに対応し、加湿器や除湿機などの季節製品や、購入にはハードルが高い大掃除用高圧洗浄機などのレンタル需要を見込んでいます。
順位は64位で売上高は230億円とまだ小規模なものの、前年比3.5%増と好調で、サブスクリプション(定額制課金)ブームに乗せてサービスの柱に育てたい考えです。
ユニクロなどの有店舗企業は店からネットへの誘導を強化
実店舗を持つ多くの企業でも、大幅な増収が目立ちます。19位のユニクロが前年比32.0%増の830億円と売り上げを伸ばしたのをはじめ、家具のニトリが35位で同14.6%増の440億円、無印良品の良品計画が68位で同11.2%増の220億円と2桁増を果たしました。
いずれも顧客が利用しやすいように、店舗とネットで在庫やサービスを一元化する「オムニチャネル」施策を推進しており、それが功を奏したといえそうです。
各社は今年に入ってからもさまざまなユーザーサービスを進めています。ユニクロは着こなし専用アプリ「スタイルヒント」の専用コーナーを持つ新店舗を今年6月に原宿にオープンし、壁一面に240台のディスプレイ画面を配置。来店客が画面のコーディネートを見て気に入った商品を選ぶと店内の陳列場所が表示され、そのままECサイトで購入できるように工夫を凝らしました。
ニトリも今年2月に刷新した公式アプリに画像検索や在庫情報の機能を搭載し、店内の商品配置状況を顧客が確認できるサービスを導入。店舗で扱いが少ない大型家具はネット限定で販売し、顧客ニーズに合わせて必要な情報を配信するワン・トゥ・ワン・サービスも強化しています。
家具のイケアも6月に初の都心型店舗を原宿にオープンし、展示のみの商品にはネット通販への誘導機能を盛り込みました。これら商品には専用タグを付け、スマホアプリでQRコードを読み込むと商品の詳細・購入ページに飛ぶ仕組みになっています。
自社サイトが好調な良品計画は、EC機能や会員証機能などを持つ専用アプリ「MUJI パスポート」や、新商品とお得情報を毎週配信する「週刊MUJI」を通じて店舗やサイトへの誘導を実施。さらに今年5月にはアマゾン、6月には楽天市場へと初出店し、販路拡大と顧客の利便性向上に力を入れています。
そのほかアパレルなどを扱うネット通販企業では、ライブコマースやチャット接客で顧客開拓やサービス拡充を目指すケースも増えています。LINEで事前予約すれば、販売スタッフが実店舗の売り場とネットをつないでマンツーマン接客を行ってくれるオンラインサービスも登場しました。
まとめ
新型コロナウィルスの影響もあり、小売り企業が通販やネット通販を強化する動きは日々加速しています。厳しい競争を勝ち抜くためには、商品力だけでなくプラスアルファの施策で勝負していくことが求められ、次々に新たなサービスが生まれているのです。
アマゾンに追い着くことは難しいものの、このような知恵を絞った取り組みや進化が企業を躍進させ、今後の業界規模拡大にもつながっていくと思われます。10兆円という大台市場も、そろそろ射程距離に入ってきたといえるでしょう。
【参考資料】
「通販市場、8.8兆円市場へ(https://www.jadma.or.jp/pdf/2020/20200820press2019marketsize.pdf)」(日本通信販売協会調査)
「通販・通教・EC 2019年度 売上高ランキング〈トップ500〉(https://www.bci.co.jp/nichiryu/article/7436)」(日本流通産業新聞)
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