イラクで続くイスラム国(IS)の不穏な動き〜日本経済へのリスクは?
LIMO / 2020年12月19日 21時0分
イラクで続くイスラム国(IS)の不穏な動き〜日本経済へのリスクは?
トランプ政権は、来年1月15日までにイラクに駐留する米軍の規模を2500人にまで削減する方針だ。これまでイラクには3000人が駐留してきたが、米軍の規模縮小によって現地の治安情勢が悪化する恐れもある。
これまでのイラク情勢を見てくると、米国の影響力が低下すると、その政治的空白をイランが埋めようとすることは想像に難くない。しかし、懸念事項はそれだけではない。
依然としてISのテロ・襲撃が続くイラク
イラク・シリアで最大英国領土に匹敵する広大な領域を支配した、あのイスラム国(IS)の姿はもうない。しかし、ISによるテロや襲撃は依然としてイラク国内で小規模ながらも続いている。
要は、メディアで報じられなくなると、人々はあたかもその脅威や時代は終わったかのような錯覚に陥ってしまうのだ。
たとえば、米国のシンクタンク「the Washington Institute」の専門家がまとめた最新の統計によると、ISがイラクとシリアで犯行声明を出したテロ事件は10月に101件に上った。
事件は、イラクではモスルやキルクークなど北部が多かったが、首都バグダッドの北部や西部でもかなり確認されている。
ちなみに今年に入っての推移は、1月に88件、2月に93件、3月に101件、4月に151件、5月に193件、6月に87件、7月に115件、8月に139件、9月に99件となっている。
また、ISが正式に犯行声明を出していない事件を含め、11月に入っても不穏な動きが続いている。たとえば、以下のような具体的事件が報告されている。
バグダッド南郊の国際空港近くにある軍施設で武装集団による襲撃事件が発生し、11人が殺害された。
北部キルクーク県で路上に停車していた軍用車両の近くで爆弾が突然爆発し、2人が死亡、6人が負傷した。
北部サラーフッディーン県では石油施設がロケット弾で攻撃され、現地の村人2人が斬首して殺害された。
首都バグダッドの国際空港ではIS幹部の男が逮捕され、北部モスルでもISと共に活動していた女が逮捕された。
中東に石油を依存する日本経済へのリスク
ISが以前のような姿に戻る可能性はゼロに近い。しかし、イラク軍の訓練や支援に当たってきた米軍のプレゼンスが縮小することで、対テロ作戦に従事する治安当局の能力面や技術面に影響が出てくる可能性もある。
また、何より新型コロナウイルスの感染拡大による社会混乱で、これまでISの掃討作戦に従事してきた警察や軍が感染対策に時間を割かれるようになり、それによってISが自由に活動できる空間が広がる恐れもある。
日本は石油の9割近くを中東に依存している。サウジアラビアやUAE、カタールほど多くはないが、イラクからも多くの石油を輸入している。幸いにもイラクでもテロ事件は減少傾向にあるが、引き続き注意すべき不穏が情勢が続いている。
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