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くら寿司「鬼滅」コラボで売上急伸、好調続く。ただし業績には不安材料も…

LIMO / 2020年12月26日 17時0分

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くら寿司「鬼滅」コラボで売上急伸、好調続く。ただし業績には不安材料も…

今年世間を賑わせた大ヒットといえば、アニメ『鬼滅の刃』。漫画、映画のヒットだけでなく、商品開発やキャンペーンでコラボした企業の業績を力強く押し上げました。

苦戦する外食業界にあって、その「鬼滅」効果を最大限に活かしたのが、回転寿司チェーンのくら寿司(2695)です。コラボキャンペーン実施中の9月・10月の売上高は前年比大幅プラス、11月に入ってからも好調が続いています。この勢いは今後も続くのでしょうか。

いち早く最悪期を脱した「くら寿司」

外食産業全体の売上高は2000年以降、平均年102%程度の成長を続けていましたが、緊急事態宣言が発出された今年4月に過去最悪の前年同月比60%を記録しました(日本フードサービス協会調べ)。

くら寿司も、4月の既存店売上高は前年同月比52%と業界全体以下に沈みましたが、それ以降はテイクアウトの強化やコロナ感染症対策の実施・PRなどで回復を図り、コロナ“第2波”が到来した7〜8月には対前年同月比90%台まで戻しています。

コロナ禍にうまく対応しているように見えるくら寿司ですが、近年の経営状況はどうなのでしょうか。

積極的な出店で事業拡大するも、2019年10月期は伸び悩み

くら寿司は郊外の住宅街を中心に、国内に直営で470店舗を展開しています。海外進出もしており、米国に28店舗、台湾に32店舗があります。

では次に、新型コロナ流行以前の3カ年について業績を見ていきましょう。2017年10月期から2019年10月期までを順に追っていくと、売上高は1228億円⇒1325億円⇒1361億円と増収が継続。一方、営業利益は63.4億円⇒68.8億円⇒54.8億円、当期純利益は48.8億円⇒51.3億円⇒37.7億円と、2019年10月期に大幅減益となっています。

売上高の増加は店舗数の増加によるもので、2018年度は27店(うち国内18店)、2019年度は32店(同20店)の新規出店を行っています。

2019年10月期の急激な減益は、人手不足による人件費の増大が大きな要因です。また、2019年2月に発生したアルバイト従業員が不適切動画をインターネットに投稿した事件も客足に影響したと見られ、売上高の伸長率は2.7%。他方で販管費が店舗拡大によって652億円から690億円へ5.8%も増加したことが響きました。

コロナショックを吹き飛ばした「鬼滅」効果

一方、今月4日に発表された2020年10月期通期の業績では、売上高は前年とほぼ変わりませんでした。3月以降、約8カ月間を新型コロナの脅威にさらされていたにもかかわらず、です。

減収減益ではありますが、売上高1358億円(前年比▲0.2%)、営業利益3.5億円(同▲93.6%)、当期純利益▲2.6億円(前期より40.3億円マイナス)で踏みとどまりました。減益の最大の要因はコロナによる米国事業の不振です。国内だけで見れば、売上高は1231億円の過去最高、当期純利益も9.5億円です。

2020年度は、6月に『鬼滅の刃』とのコラボキャンペーンを実施したところ、平日の全店売上高が過去最高を記録するほどの大成功に。さらに劇場版公開にともない9〜10月に全5弾にわたるコラボキャンペーンやコラボメニューを展開した結果、既存店売上高は9月が前年同月比107.9%、10月は同126.1%となり、コロナ禍での落ち込みを十二分に補う形となりました。

また、「Go To イート」キャンペーンを活用した、いわゆる「無限くら寿司」も集客に寄与したと見られます。

株価、売上高とも今期は滑り出し好調

こうした業績を背景に、株価はどのように動いたのでしょう。

くら寿司の株価は、増収増益を受けて2018年5月にピークの8300円台を記録し、その後は下降を続け2019年春以降は4000円台を上下動していました。今年は4月に一時3400円を下回りましたが、その後は売上高の改善とともに回復し、12月4週時点では6000円台を推移しています。

くら寿司の過去10年の株価推移

>公開前日の過去10年もの株価チャートを入れる

2021年10月期の業績予想は未定としていますが、直近の業績は好調です。『鬼滅の刃』とのコラボは10月に終了しましたが、11月も既存店売上高は伸び続け、前年同月比134.4%に。スシロー(同94.7%)や、かっぱ寿司(同101.4%)と比べると、絶好調と言ってもいいでしょう。

出店は今期も25〜30店舗を計画しており、渋谷や新宿などの都心部へ出店し、顧客を従来のファミリー層から会社員層に広げる狙いのようです。未出店エリアであった北海道への進出や、“観光&食事”をコンセプトとしたグローバル旗艦店を大阪に出店するなど、コロナ後を見通した事業拡大を図っていく予定です。

また、くら寿司は2020年10月期に始めた「スマートくらプロジェクト」(コンタクトレス・タッチレスで店内飲食が可能なシステムの導入)を今期も拡充し、“Beyondコロナ時代のスタンダード”となる店づくりを推進する方針です。これは省人化による人件費の圧縮にもつながるかもしれません。

コロナの打撃を大きく受けた米国事業でも新規出店を継続しており、感染の緩和局面で売上を伸ばす下地はできています。通年では増収増益が期待できるのではないでしょうか。

まとめ

事業の拡大を目指してきたくら寿司は、2019年は不適切動画の投稿事件、2020年は新型コロナと悪材料が続きましたが、2020年10月期の通期業績は「鬼滅」効果の後押しでほぼ前年並みの売上高を確保、国内は増収増益となりました。

今後は未開拓エリアへの出店とターゲット層の拡大によって成長が期待できますが、月次単位ではコロナが重しとなるでしょう。

【参考資料】
「外食産業市場動向調査 2020(令和2)年10月度 結果報告(http://www.jfnet.or.jp/files/getujidata-2020-10.pdf)」一般社団法人日本フードサービス協会
くら寿司株式会社「月別推移(https://www.kurasushi.co.jp/upload/ir_20_12_17month.pdf)」(2020.12.17発表)
くら寿司株式会社 2020年10月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(https://www.kurasushi.co.jp/upload/kurair_201202.pdf)
くら寿司株式会社 2020年10月期 決算説明会プレゼンテーション(https://www.kurasushi.co.jp/upload/201204ir_release_C.pdf)
くら寿司株式会社 2019年10月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(https://www.kurasushi.co.jp/upload/kurair_191212.pdf)
株式会社くらコーポレーション 2018年10月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(https://www.kurasushi.co.jp/upload/kurair_181213.pdf)
「くら寿司×「鬼滅の刃」豪華コラボキャンペーン!期間限定メニューやオリジナル商品が9/4(金)から登場!(https://www.kurasushi.co.jp/author/000899.html)」プレスリリース(2020.8.31)
「くら寿司、人件費かさみ純利益27%減 19年10月期(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53277160S9A211C1DTA000)」日本経済新聞(2019.12.12)
スシロー「月次情報:2021年9月期(https://www.sushiroglobalholdings.com/financial/highlight/monthly/)」
かっぱ寿司「月次売上推移速報:2020年度(https://www.kappa-create.co.jp/monthly2020/)」

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