「老老介護」の問題点~共倒れの悲劇を防ぐためのヒントとは~
LIMO / 2020年12月23日 0時10分
「老老介護」の問題点~共倒れの悲劇を防ぐためのヒントとは~
日本は「超高齢社会」に突入しています。
総務省が公表した「統計からみた我が国の高齢者(https://www.stat.go.jp/data/topics/pdf/topics126.pdf)」によると、2020年9月15日の時点で、65歳以上の高齢者の人口は約3617万人、総人口に占める割合は28.7%。
高齢者を高齢者が介護する「老老介護」の問題は、そんな社会状況を映し出す鏡であるともいえます。
最近ではよく聞かれるようになった、この「老老介護」という言葉ですが、皆さんは、在宅介護をしている家庭のうち「老老介護」である割合がどれくらいか知っていますか?
厚生労働省が公表した、2019年(令和元年)の「国民生活基礎調査(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html)」よると、「介護される側」「介護する側」ともに65歳以上である家庭が、59.7%にも及ぶことがわかっているのです。
そこで、本記事では「老老介護」にフォーカスし、現状や問題点、対策などを解説していきます。
「65歳以上の人がいる世帯」は、全世帯のほぼ半数
先述の「国民生活基礎調査(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html)」の結果から、高齢者のいる世帯の構造についてみていきましょう。
65歳以上の者のいる世帯
2558万4000世帯(全世帯の49.4%)
世帯構造
「夫婦のみの世帯」:827万世帯
※65歳以上の者のいる世帯で最も多い32.3%
高齢者世帯の世帯構造
※65歳以上の者のみで構成または18歳未満の未婚の者が加わった世帯
「夫婦のみの世帯」:693万8000世帯(高齢者世帯の46.6%)
超高齢社会に突入したことで、65歳以上の者のいる世帯は全世帯の約半数にも及ぶ結果となりました。「夫婦のみの世帯」とともに、年々増加傾向にあり、今後も増えていくことが予想されます。
また、65歳以上で夫婦のみの世帯が約694万世帯存在することから、現在は介護を必要としていなくても、今後は介護が必要となる可能が高い、いわゆる「老老介護」予備軍ともいえる世帯が多いといえるでしょう。
「核家族化の進行」と「老老介護」
要介護者等のいる世帯の世帯構造をみてみると、「核家族世帯(※)」が40.3%と最も多いことがわかりました。
※「核家族世帯」…夫婦のみ、夫婦と子ども、男親と子ども、女親と子どものいずれかに該当
それでは、ここからは介護者などの詳細をみていきましょう。
主な介護者の状況
「要介護者と同居」:54.4%
「要介護者と別居の家族」:13.6%
「同居」の主な介護者の続柄
「配偶者」:23.8%(最も多い)
性別
「男」:35.0%
「女」:65.0%
介護者の年齢階級
※60歳~69歳が最も多い
「男」:28.5%
「女」:31.8%
主な介護者は、「要介護者と同居」をしている人が圧倒的に多い結果となっています。また、配偶者がお世話をしていることが多く、女性の割合が高いことも分かりました。
年齢をみると、60歳~69歳以上である高齢の介護者が最も多く、「老老介護」の現状を示しているといえるでしょう。
要介護者」年齢階級別ごとの組み合わせ
※要介護者等の年齢階級別にみた同居の主な介護者の年齢階級構成割合
「60歳以上同士」:74.2%
「65歳以上同士」:59.7%
「75歳以上同士」:33.1%
同世代どうしが多いですね。要介護者・介護者ともに高齢者という割合が高く、年々上昇傾向にあります。
とくに、60歳以上同士と65歳以上同士は50%を超え、割合がかなり高くなっています。
「老老介護」の問題点
ここからは「老老介護」が抱える問題点についてみていきましょう。
身体的・精神的負担が大きい
介護が必要になった理由をみてみると、要支援では「関節疾患」が18.9%、要介護では「認知症」が24.3%と最も多くなっています。
「関節疾患」などで体が不自由な要介護者の世話をするとなると、高齢な介護者には、かなりの身体的負担がかかるといえるでしょう。
また、「認知症」を患っている要介護者の世話は、介助だけでなく「言うことを聞いてくれない」「暴言・暴力・拒否がある」「徘徊がある」など、精神的な負担も大きいです。
共倒れの可能性
「老老介護」の場合、介護者も高齢であることから、体調を崩してしまう可能性が非常に高いです。
とくに、「夫婦のみ」の高齢者世帯の場合、介護者が体調を崩すなどして世話ができない状態になったとき、生活自体が回らなくなり、共倒れしてしまう場合もあります。
「介護疲れ」が悲劇を生むことも・・・。
近年、「介護疲れ」による暴力や、殺人などのニュースを目にする機会が多くなりました。「老老介護で限界だった」「一緒に死のうと思った」などの言葉もよく見聞きします。
介護による身体的・精神的負担から追い込まれ、最悪の選択をしてしまう場合もあるため、「老老介護」は社会的に大きな問題といえるでしょう。
「老老介護」を上手に乗り切るために
では、当事者や家族が、上手に老老介護を乗り切るためのヒントについてみていきましょう。
訪問介護などの利用
在宅で、高齢者が誰にも頼らず介護をおこなうのは、たやすいことではありません。
「老老介護」自体を防ぐ、共倒れを防ぐ、といった観点からも、施設などの利用を検討することをおすすめします。
介護老人保健施設や特別養護老人ホーム、グループホームなど、さまざまな種類の施設が存在するため、要介護者や家族との相性が良さそうな施設を探してみましょう。
「できるだけ在宅で面倒をみたい」ということであれば、訪問介護サービスやデイサービスなどを利用し、介護者の負担を軽減する方法をとると良いです。
子や親族と協力する
それでも「老老介護」をおこなうことになった場合、子どもや親族の協力は欠かせません。
高齢者にとって頼れる人や生きがい、支えとはいったいどんなものがあるのか、内閣府などの調査結果(※1,2)をみてみましょう。
<同居の家族以外に頼れる人>※最も多かった回答
「別居の家族・親族」:66.2%
<生きがいを感じる時>※最も多かった回答
「子どもや孫など家族との団らんの時」:46.9%
<心の支えとなっている人>
「配偶者あるいはパートナー」:65.3%
「子ども(養子を含む)」:57.4%
「孫」:17.9%
結果をみると、高齢者にとって、子どもや孫、親族の存在はとても大きな位置を占めていることがわかりました。
普段サポートするのが難しくても、定期的に家を訪れたり、いざというときに頼れたりするような環境を整えておくことは大切といえるでしょう。
さいごに
高齢者の増加に伴い、「夫婦のみの高齢者世帯」や「老老介護の当事者」は年々増えてきています。
介護にまつわるさまざまな問題のなかでも、共倒れなどの危険をはらむ「老老介護」は、とくにていねいなサポートが必要となります。
長引くコロナ禍で、高齢の親や祖父母になかなか会えていない人も多いのではないでしょうか。
子どや孫が心の支えとなっている高齢者も多いため、「直接」ではなくても、「電話やメール」などでコミュニケーションをとりながら、精神的なサポートをしてあげることをおすすめします。
【参考】
「統計からみた我が国の高齢者(https://www.stat.go.jp/data/topics/pdf/topics126.pdf)」総務省
「令和元年 国民生活基礎調査(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html)」厚生労働省
(※1)「第8回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果」(平成27年)内閣府
※「頼れる人(https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h27/zentai/pdf/kourei_h27_2-7.pdf)」 ※「生きがい(https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h27/zentai/pdf/kourei_h27_2-8.pdf)」
(※2)「第7回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果」(平成22年)内閣府
※「心の支え(https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h22/kiso/zentai/pdf/2-2.pdf)」
外部リンク
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