実は老後資金をそれほど心配しなくていい理由。預貯金志向の日本人

LIMO / 2021年1月19日 8時35分

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実は老後資金をそれほど心配しなくていい理由。預貯金志向の日本人

日銀の資金循環(2020年第2四半期)によれば、個人金融資産(総額1883兆円)に占める現預金の比率は約55%と、ゼロ金利にもかかわらず高い比率を維持しています。株式は約9%、投資信託は4%弱でこの傾向は長年変わりません。金額ベースで見る限り、ほとんどの日本人は投資をしていないということになります(図表1)。

図表1:個人金融資産の内訳 〜現金・預金比率が漸増、株式・投資信託は漸減〜

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出所:日本銀行調査統計局・資金循環(2020年第2四半期)より抜粋


この傾向は、1980年代後半のバブル絶頂期でもほとんど変わらず、当時も一部の個人投資家が株式投資を行うのが主流だったにすぎません。投資信託はあくまでも株式投資を補完する位置付けの金融商品でした。

当時は中期国債ファンドが爆発的に売れましたが、それは預貯金以上の利回りと日次流動性があったからです。その後、国債利回りはほぼゼロ%まで低下しましたから、この人気ファンドも消え、国債に運用する投資信託のカテゴリー自体がなくなったと言っても過言ではありません。

投資は儲からないから老後資金は預貯金で備える?

加えて、1990年初頭のバブル崩壊から日本の株価は低迷してきました。足元では日経平均株価が3万円をうかがう展開になっていますが、それでもまだピーク時の7割程度の回復です。そのため、そもそも投資は儲からないものだと認識されているのです。

2019年6月に「老後資金2000万円不足問題」がクローズアップされた際は、それなりの問題意識を持った方も増えたと思います。ただし、統計上それが投資行動に結びついた形跡はありません。むしろ、老後資金が不足するなら消費を減らして、現預金を増やす貯蓄行動に結びついたのではないかと筆者は推察します。

今回のコロナ禍は消費を増やせない環境ですから、国民全体の預貯金は増えています。本来は一定の消費につながるか、株高であればある程度のリスクを取ってリターン狙いにいってもいい経済環境にもかかわらず、預貯金で十分と考えている人が多いということなのでしょう。

ちなみに米国でも、コロナショック以降は預金残高が激増しており、2020年9月末の米国の預金残高は2019年末の13兆2,200億ドル(約1,362兆円)から15兆6,700億ドル(約1,614兆円)と約250兆円も増えています(図表2)。足元では、こうした滞留資金の一部が株式を始めとするリスク資産に向かって、株価や仮想通貨が上昇しているのです。

図表2:米国国内銀行の預金残高推移(2000年〜2020年9月末)

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出所:米国FDIC(連邦預金保険公社)のデータより筆者作成


平均相続金額が2000万円を超えるという調査結果も

さて、ゼロ金利、読めない株価、実体経済不調といった状況で、私たちはどのように資産形成していくべきでしょうか。といっても、何の準備もせず無理やり投資しても失敗するのは自明です。ただ、必要な知識をつけた上で、何らかの意識改革も必要だと思います。

預貯金だけではお金が増えないということを理解するだけでも十分です。それが、すぐに株式や投資信託になるかどうかは別にして、現実的には選択肢は限られるわけです。もちろん、全体の資産の中で、安全第一で現預金比率を高めにしたいという運用方針であれば全く問題はありません。

筆者も金融資産に占めるリスク資産(株式・投資信託)は3割程度ですから、その部分のリターンが多少増えたとしても、さほど大きな収益になるわけではありません。

ただ、反省点があるとすれば、もう少し積極的にリスク資産に運用していてもよかったかなと思います。なぜなら、リターンを産まない資産を保有していても、使わないお金は結局意味のないお金になってしまうからです。預貯金で残るのはいいのですが、このゼロ金利化で現金を持っていても、あまり役に立っているとは思えないからです。

三菱UFJ信託銀行の調査(2018年12月)にると、相続者の平均相続金額は2,114万円。老後資金が2,000万円不足すると言われている状況下、実際は2,000万円以上の資産を残される方が多いのも現実です。

日本人全体の投資行動から鑑みると、リスクを取らずに預貯金を重視したとしても、結局財産はそれなりに残るということです。逆に考えれば、本当に老後資金に不安があるのであれば、なるべく早い時期から少額でも貯蓄や投資を始めておけば、そこそこの老後資産が築けるということを示唆しています。

過度にリスクを避けることは、資産形成の機会を逃すことでもあります。当たり前の話ですが、この記事を読んでくださった読者の皆さんが資産形成層であるならば、このことをぜひ理解してもらいたいのです。

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