中国人の爆買い消滅で苦戦の象印、減収減益から脱却なるか

LIMO / 2021年1月24日 19時5分

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中国人の爆買い消滅で苦戦の象印、減収減益から脱却なるか

新型コロナで世界的に人の往来がストップし、キャリーケースを引っぱりながら買い物をする中国人観光客の姿を街で見かけなくなってから、はや10カ月近くが経とうとしています。

中国人旅行者による高額商品の「爆買い」で百貨店や家電量販店が潤う状況は、2016年半ばには終わりましたが、その後も訪日期間中の買い物支出額トップは中国からの旅行者です。

その恩恵にあずかった企業の一つが象印マホービン(以下、象印)。しかし、いまやインバウンドは雲散霧消。象印マホービン(7965)の業績はどうなっているのでしょうか。

中国人旅行者の「爆買い」で特需に沸いた象印

象印の製品で爆買いの対象となったのは「炊飯器」と「ステンレス魔法瓶」でした。日本製の炊飯器は美味しく炊けると評判で、象印は人気ブランドの一つ。高級タイプがよく売れました。保温性能に優れたステンレス魔法瓶も、温かいお茶を携帯する習慣がある中国の人々には絶好のお土産で、親戚や友人の分まで大量に購入されました。

中国からの訪日旅行者は、2013年に131万人ほどだったのが、円安を背景に2014年には8割増の241万人に。「爆買い」が話題となった翌2015年には499万人へと激増しました。その後も増加は続いていますが、円安メリットがなくなったことなどもあり、1人当たりの消費額は減少傾向です。買い物支出額は2015年1-3月期の17万円台をピークに2020年初旬には10万円程度にまで減っています。

それと呼応するように、象印の業績も2015年に売上高が、2016年に営業利益がピークを迎えて以降、前期比マイナスが続いています。コロナ禍という重しも抱え、象印はどこに活路を見出そうとしているのでしょうか。

まず、象印の主要な事業内容と近年の業績を確認してみましょう。

象印の事業内容と近年の業績推移

象印の製品カテゴリーと売上高に占める割合は、2020年11月期の決算資料によると以下の通りです。

    調理家電…炊飯ジャー、電気ポット、電気調理器具など〈72.5%〉

    リビング…保温保冷ステンレスボトルなど〈20.5%〉

    生活家電…スチーム式加湿器、食器乾燥機など〈4.9%〉

    その他…配食保温容器など〈2.2%〉

また、海外売上比率は29.9%となっており、そのうちアジア向けが7割を占めます。

続いて、インバウンド需要が盛り上がる前後から直近までの業績推移を追って見ていきましょう。

2012年11月期の売上高は629.4億円でしたが、その後は徐々に業績を伸ばし、インバウンドに後押しされた2015年11月期は売上高898.0億円(前年比16.9%増)、営業利益101.7億円(73.0%増)、当期純利益63.1億円(67.9%増)と売上高のピークを迎えました。爆買いに加え、海外での販売も好調で増収増益となりましたが、翌2016年からは売上高が減少に転じています。

2017年11月期から2019年11月期までの3カ年の業績をみると、売上高が853.6億円⇒846.4億円⇒791.1億円と推移し、利益面では営業利益78.2億円⇒62.5億円⇒54.4億円、当期純利益が53.4億円⇒44.3億円⇒40.8億円と減収減益が続いています。

国内で爆買いがなくなったことに加え、米中貿易摩擦による経済の悪化で中国での売上げが減少したのをはじめ、海外全般で売上高が減少しました。宣伝広告費を積極的に投じた年もありましたが、販管費の上昇に見合った業績への貢献はなかったようです。

コロナ禍の中、健闘するも減収減益に

直近の2020年11月期は、当初、増収減益を見込んでいましたが、結果は売上高749.5億円(前年比5.3%減)、営業利益54.4億円(0.1%減)、当期純利益39.4億円(4.3%減)。コロナによる巣ごもり需要で「調理家電」「生活家電」カテゴリーの売上げは伸びましたが、外出控えによるステンレスボトル、保温保冷ジャーなどの大幅な売上げ減少が響きました。

次に、こうした業績を背景に株価がどう動いたかを見てみましょう。

2014年の年末に700円台だった株価は、爆買いにより“インバウンド銘柄”として注目を浴び、翌2015年4月には1600円を突破し倍以上の水準に。

その後は1000〜1500円台を上下し、2020年1月には大株主の中国企業の動きに関連して2400円台まで急騰しましたが、株主提案の否決によって期待が剥落し急落。3月にはコロナの影響で1300円台まで下げましたが、その後は回復基調となり、2021年1月下旬現在で1700円台を推移しています。

象印マホービンの過去10年の株価推移

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拡大する(/mwimgs/b/1/-/img_b142269b5fbf56fca01a4eb2c638c073122855.jpg)

業績回復のカギは海外強化?

2021年11月期は、世界経済の回復を期待して増収増益を予想しており、海外事業に関してはエリアとチャネルの拡大を図るようです。2019年11月期決算時には、欧州・インドにおける新規代理店開拓のほか、中国で遅れていたEC対応を進めるなど、具体的な海外戦略を公表しましたが、2020年はコロナにはばまれ、こうした取り組みが不十分だった可能性があります。今後は再び積極姿勢に転じたいところでしょう。

長期的には、国内市場は人口減少による市場縮小が避けられません。一定の認知度を持つ中国市場で売上げを伸ばしながら他の海外市場に挑戦し、海外売上比率を上げることで成長できるのではないでしょうか。

まとめ

「爆買い」の特需が消えたことで象印は成長が止まり、ブランド認知の高さも中国の景気減速で有利に活かせなかったようです。最大の主力製品である炊飯器は、国内ではすでに成熟市場。 “炊く技術”の進化だけで大きな成長は見込めなくなっています。

食の質的向上へのニーズが強いアジア諸国など、海外での新規チャネル開拓は必須と言えるでしょう。

また、象印は2018年に、新事業開発のための組織も立ち上げています。象印の新たな顔となるような商品・サービスが誕生する可能性に期待したいものです。

参考資料

「2020年 訪日外客数・出国日本人数(https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/pdf/201216_monthly.pdf)」日本政府観光局プレスリリース(2020.12.16付)

「訪日外国人消費動向調査(2014〜2020年1-3月期)(https://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/syouhityousa.html)」観光庁

象印マホービン株式会社 2020年11月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(https://www.zojirushi.co.jp/corp/ir/library/pdf/2020/2020.pdf)

象印マホービン株式会社 2020年11月期 決算補足説明会資料(https://www.zojirushi.co.jp/corp/ir/library/pdf/presentation/202004.pdf)

象印マホービン株式会社 2019年11月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(https://www.zojirushi.co.jp/corp/ir/library/pdf/2019/2019.pdf)

象印マホービン株式会社 2019年11月期 決算説明会資料(https://www.zojirushi.co.jp/corp/ir/library/pdf/presentation/201904.pdf)

象印マホービン株式会社 2018年11月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(https://www.zojirushi.co.jp/corp/ir/library/pdf/2018/2018_kimatu/all.pdf)

象印マホービン株式会社 2016年11月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(https://www.zojirushi.co.jp/corp/ir/library/pdf/2016/2016_kimatu/all.pdf)

象印マホービン株式会社 2015年11月期 決算短信〔日本基準〕(連結)(https://www.zojirushi.co.jp/corp/ir/library/pdf/2015/2015_kimatu/all.pdf)

「<東証>象印が7日続落 大株主の株主提案否決、経営改善の期待後退(https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL19HR4_Z10C20A2000000)」日本経済新聞(2020.219付)

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