保育現場を疲弊させるコロナ禍、保護者にもフラストレーション
LIMO / 2021年2月16日 18時35分

保育現場を疲弊させるコロナ禍、保護者にもフラストレーション
民間企業が支援策。行政は?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との戦いが長期化し、飲食店や医療機関、学校などでは引き続き大変な思いをしている人が数多くいます。
その中でも小さな子どもたちの命を預かる保育園や幼稚園では、2月から3月にかけて発表会や卒園式などの行事ラッシュ。感染症対策をしながら毎日子どもたちを見守り、イベントを成功させるべく保育士さんたちが奮闘しています。
コロナの問題が起きて1年が経つ今、保育園の現場では実際にどのような問題が生じ、保育活動が行われているのでしょうか。調査結果や保育士・保護者の声をもとに紹介します。
保育士が感じる業務負担増と精神的なもどかしさ
株式会社ニッソーネットが保育士派遣スタッフを対象に2020年11月に行った調査では、働いている職場における保育士の数について聞くと「大変不足している」(9.4%)、「やや不足している」(50.0%)と約6割が保育士不足を実感していました。
また、特にコロナの影響を大きく感じることについては「レクリエーションやイベントが延期・中止になった」(65.6%)が最も多く、「除菌・消毒作業などの感染対策に関する業務が増えた」(53.1%)、「マスク着用などにより、子どもとのコミュニケーションが取りにくくなった」(50.0%)といった回答が続きます。
かねてから慢性的な保育士不足が問題になっていますが、このコロナ禍でさらに保育士への負担が増している現場の実態が透けて見えます。
また、株式会社ベネッセコーポレーション(以下、ベネッセ)が2021年1月に幼稚園と保育園の先生964人を対象に行った調査では、「園児にしてあげたいけどできていないこと」として「保護者に成長を見てもらい、ほめてもらえるような機会を作ってあげること」(55.2%)が半数を超える結果に。
行事やイベントの中止は保護者の楽しみだけでなく、子どもの活力やモチベーションにも影響します。実際に保育士からも「行事を通して褒められる機会が減ることで、子ども自身のやる気が損なわれている気がしてもどかしい」という声がありました。
コロナ禍における保育現場では、除菌作業増加などによる業務負担だけでなく、子どもの成長に寄り添えないもどかしさを強く感じる状況であることがうかがえます。
感染症対策の中で保護者が抱くフラストレーション
長引くコロナ禍でさまざまな不安を感じているのは幼稚園や保育園の先生たちだけではありません。イベントや行事の中止が相次いだり、緊急事態宣言が出るたびに登園自粛の要請があることで「支払っている保育料は変わらないのに……」と不平等感を覚えている保護者もいました。
また、コロナ禍における幼稚園や保育園での生活が長引けば長引くほど、心配なことが出てきている様子。
「コロナ禍になってから保護者は園の中に入ることはできず、入口で子どもと荷物の受け渡しをし、混雑しないように保育士さんとの会話も最低限に。万全な感染症対策に安心する一方で、保育士さんとのコミュニケーションが減り、園の中での子どもの様子が一切わからなくなっていることには不安がある」という人も少なくないようです。
さらに、「感染症対策のために、ハグや話しかけなど子どもとの密なコミュニケーションを避けようとしている先生もいる。今は誰もがマスクで目以外が見えないため、人の感情や表情がよくわからないようになるのではないか。いろいろと仕方ないことだけれども、このままコロナ禍が続くと子どもの発育の面がとても心配」という声もあります。
中には「保育園の保育理念に賛同して子どもを入園させたけれども、この1年間の感染症対策が少し適当だと感じる部分があり、転園届けを出した」という人も。保育園では感染症対策と保育内容それぞれのバランスを保つ難しさがあるのでしょう。
民間企業で相次ぐ支援の動き
こうした現場の状況に危機感が増している中、最近では民間企業も続々と動きを見せています。
株式会社ベネッセコーポレーションでは、コロナ禍の1年で子どもの自己肯定感を育む機会に課題を感じている園や家庭を支援するため、2月19日までの申し込みで全国の園向けに「1日1ほめセット」の無償提供をすることを発表。
子どもたちの小さな「できた」をシールでほめられるしかけのポスターや保護者に配布する情報誌などをセットにし、園と家庭が連携して子どもの様子を伝え合える状況作りを目指しています。
またキッズシーズ株式会社は、2月20日から未就学児から小学生の子どもたちに向けた「冬のオンラインこどもフェス2021」を開催。原則無料で、「社会科見学」「職業体験」「各界の第一人者との双方向授業」「学習」「リフレッシュ」の5テーマを中心に、各スクールがオンライン特別授業を提供します。
保育園や幼稚園、子ども自身、保護者それぞれに多大な影響を与えているコロナ禍。今回、調査結果や現場の声から、長期化を迎えていることでそれぞれの体力も限界を迎えつつあることがうかがえました。
園側も保護者も、感染症対策と子どもの健全な成長を同時に考えながら、最善の方法を模索し続けています。民間企業がさまざまな支援をしてくれているように、行政も飲食業や観光業だけでなく保育業界にも支援の動きを見せてほしいところです。
参考資料
「<保育士アンケート> 新型コロナによる保育現場の影響について(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000048861.html)」(株式会社ニッソーネット)
「『1日1ほめセット』を無償提供(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000883.000000120.html)」(株式会社ベネッセコーポレーション)
「冬のオンラインこどもフェス2021(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000037.000048424.html)」(キッズシーズ株式会社)
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