日本企業の課題は「経済安全保障」。リスクヘッジの選択肢は?
LIMO / 2021年5月9日 20時15分
日本企業の課題は「経済安全保障」。リスクヘッジの選択肢は?
日本・インドネシア関係の行方
筆者の周辺では、今後の米中対立が日中関係に与える影響を考え、対中依存度を下げるか検討する企業も決して少なくない。
ただ、日本経済の対中依存度を考えると完全なデカップリングは不可能であり、また、企業によって対中依存度や必要性は異なることから、統一的な答えは存在しない。
しかし、リスクを最小化し、安定的な経営を中長期的に考えることはどの企業にも重要なことであろう。
そのような中、日本とインドネシアは3月30日、東京で外交・防衛の閣僚協議2プラス2を開催した。両国の2プラス2が開催されるのは2015年12月以来約5年半ぶりだ。
同協議では、両国が防衛装備品の輸出時に必要となる防衛装備品・技術移転のための協定に署名。また、中国に依存するサプライチェーンの分散化への協力を強化していくことを確認し、日系企業によるインドネシアへの投資を拡大させていくことなどが議論された。
この会談からは、政治と経済は両輪であり、経済安全保障という領域が日本の各企業にとって今後さらに重要となっていくことがうかがえる。実際、5月3日、政府は主要企業に経済安全保障担当役員の設置要請を検討する調整に入ったと報じられた。
バイデン大統領は3月31日、ハイテクで中国に対抗するため、人工知能や電気自動車、脱炭素技術などハイテク分野に今後8年間で2兆ドル(約221兆円)を超える投資を実施していく方針を明らかにしている。
また、4月の日米会談でも、第5世代移動通信システム(5G)の推進や、半導体など重要品目のサプライチェーン構築を両国で協力・拡大していくことが合意された。
加速する世界経済の陣営固め
今後の世界経済の行方を予測することは簡単ではない。
しかし、米中対立が長期的に続くことが予想され、少なくともバイデン政権の4年間(8年かもしれない)で経済の陣営固めが加速化する中では、各企業は政治リスクによる影響をこれまで以上に考え、対策を取る必要がある。
その中の1つの選択肢がインドネシアであろう。
経済成長を遂げるインドネシアにもイスラム過激派などテロの脅威は依然としてあるが、南シナ海の問題など中国の覇権的な行動で、インドネシアと中国の関係も決して良好ではなくなってきている。
おそらく、米国やオーストラリアもインドネシアとの関係を、安全保障を軸に経済的な領域にまで拡大したい思惑があり、日本にとっても経済安全保障上重要なものになるであろう。
それが3月30日の2プラス2の結果でもあり、今後可能性として考えられる米中対立から生じる日中摩擦を事前に考え、インドネシアなどにリスクヘッジするということは中長期的な経営としては重要な選択肢の1つだろう。
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